No.1:桜よ、返せ
ヴェルヴェーヌの貝殻番外。バーベナさんは落ち着いた理想の淑女ですが、たまには美しすぎるものを見て幼子のようにはしゃぐととても可愛らしいとおもう。
そしてダークさんは相変わらず桜を恐れます。
この「いけない、追いかけなければ。盗られてしまう」と焦る心地、実はジュペッタのダークさんに特有のものではなく、
アブソルのダークさんにも通ずる性質……であったりします。
No.2:花染の綱に足を乗せ焦がれた人へと渡りゆく
サイコロを振らないからだいぶ時が経った頃を想定していますが果たして。
トウコとNは互いの距離が近すぎて、互いのことで互いが知らないことなど出会って数年もすればもう何もないというレベルにまでなっていると思うけれど、
シアとアクロマさんは何十年という時を流そうとも、何かしらの秘密を互いに抱えたまま想い合うことを選ぶ人種であるように感じます。
けれどもその秘密はたった一人で抱えこむものではなく、今回のこれのようにその秘密を打ち明けられる相手が「相手とは別に」存在します。
狡い生き方だと思います。臆病な時の回し方だとも思います。けれどもその秘密を持ちながらも互いの愛が本物であるのなら、それはとてもとても素敵なことだと思ってしまいます。
No.3:夕刻に溶ける枝
ミルクパズルから1年以内くらいを想定しています。
コトネとシルバーもまた互いの距離が近すぎるけれど、シアとアクロマさん程ではないにせよ、何かしらの秘密を腹の中に買いながら愛し合っている関係です。
そしてコトネとシルバーの関係は「契約式」みたいなところがあるので、共に暮らし始めるようになった際、指輪をその指に嵌めた頃にちゃんと、
「君にどんな昔があったって構わない」「君の中にいる悪魔のことを懺悔してくれなくていい」「君がどんな風であったとしても、私はその枝を抱き込んで伸ばすって決めたの」
……と明言し、相手もそれを承諾した……という流れをしっかりと経ているため、彼等の秘密は何も後ろめたさを生じさせない、ある意味清廉潔白なものです。
そうした「清廉潔白」な、真っ直ぐな想い合いを表現できればよかったのですが、うーん、ちょっと重みが足りない!
No.4:葉桜と魔法
サイコロを振らないから2~3年後くらいを想定しています。
No.2に書いた「何かしらの秘密を互いに抱えたまま想い合うことを選ぶ人種」の究極系がクリスさんとアポロさんなのですが、
その「究極の秘密」の中身を仄めかせる「別の相手」が、クリスさんにとってはこのゲーチスさんであった、ということなのだと思います。
クリスさんの超人性、異常性、存在の不実性、それらをゲーチスさんは「おぼろげに察している」状態であり、察したところで彼はクリスさんへの態度を変えません。
そもそもゲーチスさんはクリスさんのこと、元々そこまで好きじゃないから、そうした秘密を明かされたところで痛くも痒くもないのでした。
その「痛くも痒くもない調子」を喜ぶように、クリスさんは彼の前で自らの超人性、異常性、不実性を仄めかし、笑うことが叶っているという有様なのでした。
だって、ねえ、なんでこのクリスさん、ゲーチスさんのことを「葉桜さん」なんて言うことができたのでしょうね?
なんで彼女、シアがゲーチスさんの髪に付いた桜を見て「ああ、きっと葉桜の目とは彼のような色をしているのだ」と過去に思ったことを知っているんでしょうね?
No.5:褪せた色よ、褪せない私をどうか見ないで
こういう話をおそらくMethinksのどこかに入れることになるのだろう、などと思いながら書いてしまいました。
シェリーはシアに向かって暴言を吐いていますが、これは夢の中ですから、シェリーは本当はシアにではなくシェリー自身に暴言を吐いているのです。
「あの子の一瞬は永遠になると信じて疑わなかった当時の私」を叱責し、罵倒し、駄々を捏ねているのです。
どうしてそんなものを信じてしまったのか。どうして彼女の永遠を望んでしまったのか。300年後の今に何も残せなかった彼女に、どうして会いたいと思ってしまうのか。
そんな風に想いながら叫んでいるのだと思います。
余談ですが、「どうして私の永遠に貴方がいないの!」と彼女が叫ぶ相手は、シアだけです。
他の大勢、たとえば博士やお隣さんやお友達や両親といった人物のことを、おそらくこの300年あたりの彼女が思い出すことはないでしょう。
思い出せなければ「いない」ことにも気が付けないのですから、気が付けなければ「どうして」と問うこともできないのですから、当然のことですね。
No.6:いのちの舞
いのちの色、いのちの音、いのちの舞……さて次は何にしようかな。
しかしトウコとNで桜SSを書こうとしたのは失敗だったかもしれない。だってこの二人、既に桜SSとして書いた記憶があるんですもの!
「あの花弁はどうして等加速度的に落下しないのだろう?」「そんなのひらひらと落ちた方が綺麗だからでしょう」と言い合う過去の記憶ばかり浮かんでくるんですもの!
(このSSはまだ旧サイトで凍らせたままです、早く解凍しなきゃ……)
No.7:土色の桜を共に愛でよう
違うんです、私は夜桜を見ながら泡盛を飲むザオボーさんを書きたかったのです。本当なんです信じてください(???)
けれどもこれはこれでミヅキとザオボーさんらしいかなあとも思っています。
「土色の桜でいいから持ってきなさい」ではなく「その土色の桜を持ってきてほしいんですよ」と告げられるのはきっとどこを探してもザオボーさんしかいない。きっと。
No.8:やさしい死体は樹の下へ
やさしくありませんように、を久しぶりに書いたのですが正直めちゃめちゃ楽しかったのですよフフフラダリ
花の死骸を両手いっぱいに掬い上げて、その死臭を鼻腔いっぱいに吸い込んでふわっと笑うアルミナを書きたかったんですよ。
本当に「わたしもこんな風に」なれたなら、その優しく易しい死体はきっと桜の樹の下へ埋められるのだろうなあ、そしてそれを知ったアルミナはものすごく喜ぶだろうなあ。
……などという妄想をむくむくと膨らませながら書きました。でもズミさんの「最も辛い時」はこの時(マリーと出会ってしばらく経った頃)には既に過ぎ去っています。
彼の「最も辛い時」はおそらく、パキラさんにマリーを紹介されるまでの数年間ですよね。
26話の『私にとって祝福ですよ、と、最早自慢なのか宣誓なのか洗脳なのか、自分でも分からなくなるような言葉を紡ぎながら……』が、彼の苦痛のピークであるような気がします。
No.9:花結び
「星結び」とタイトル名はお揃いですがあちらの人物とは何の関係もありません。星を結んで星座とする行為と、花を結んで絵に見立てる行為を重ねただけの話なのです。
サターンさんを語り手に据えたのは、アカギさんを語り手に据える方式の書きにくさは「天を読む藍」で十分すぎる程に分かっていたから、というのと、
やはり彼が、彼こそが、なんだかんだと言いながらもアカギさんに全幅の信頼を置く幹部なのだろうな、と思ってしまったからなのでした。
マーズさんもジュピターさんもサターンさん自身も分からない「絵」を、けれどもアカギ様なら分かると確信している。
その強すぎる信頼の強固性が故に、サターンさんは呑気な心地で悠然と彼等を見守ることができる……。
ギンガ団、リメイクで復活したらこういう、こういう団員たちの繋がりをちょっとでもいいから描写してほしいな……プラチナのギンガ団、本当に冷たくて、悲しかったもの……。
No.10:摂氏五千に桜は咲かぬ
まだ物騒な言い回しを身に着けていない頃のダイゴさんなので、トキ嬢の「火口に飛び込んで灰になりたい」発言にちょっと青ざめています。
物騒な言い回しを選べないダイゴさんは「優しい」。だからこそトキ嬢にとっては悉く「つまらない」。
ここから彼は徐々に、物騒な言い回しを楽しく使えるようになっていくのですが、
それは彼女を楽しませたいという純朴な想いで為されたものである……と同時に、彼女の自由を肯定し送り出すという強い決意から紡がれる音でもある、のだと思います。
「首を落としたらボクが持ち帰って育てることにするよ」「足を切れば君はボクから逃げられなくなってしまうよ」「君を手折るよ」等々の文句をトキ嬢がひどく気に入っているのは、
そうした彼の純朴で一途な想いと決意をなんとなく察していて、その「今まで見たこともない愛の形」に、どうしようもなく嬉しくなってしまうからなのかもしれません。
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お粗末様でした。いっぱい桜を書くことができてとても、とても楽しかった!