7/10、雪村さん

こんにちは、雪村さん。遊びに来てくださりありがとうございます。
こちら、連日の曇天がすっかり晴れて、最高気温がついに32度とかいう暴力的な数値を表示しています。
明日からはまた曇天に戻ってしまうようですが、そろそろ本格的な夏の暑さを覚悟しておかなければいけないようですね……こわぁい。

あ、えっとですね、【私は葉月さんと違って自分が大事】ということでしたが、わ、私も我が身が一番可愛いのですよ……!
妥協できないことは沢山ありますし、今の暮らしの中でも私の我が儘を通させてもらっていることはいくつもあります。
朝9時30分くらいに起きてこられても一緒に食事はできないとか(私は朝食を6時に済ませる)、夏場でも蚊の猛攻を防ぐために長袖長ズボンで生活するとか……。
本当に些末なことばかりですが、今まで暮らしてきたところが違うと、ちょっとしたところでも認識の齟齬を感じてしまい、
「さて、これは同調すべきか、すり合わせるべきか、それとも我を通すべきか」と考え込んでしまう日々です。
そして、圧倒的に「我が身を通す」ことを選んでしまうのが私という人間です。

私も、周囲からは当然のように「赤の先」を期待されます。
そして私は流されやすいところがあるので、皆さんが口を揃えて「いいものだよ」「そうするべきだよ」と囁いてくると、
そういうものなのかと、ならば多少の苦痛には目を瞑るべきなのだろうなと、それが正常とみなされるのならきっとそれが一番いいのだろうなと考えてしまっています。
正常なことを異常な心地で行う私はきっと異常です。
今はやはり、この異常性が取り払われる予感は全くありません。私は私のことが大事なので、苦しいことに「うれしい!」と嘘を吐くことができないのです。
けれども「苦しい」を隠すことはできます。今はそうしているような状態です。
この「赤」に関しては、「我が身を通す」のではなく「同調する」ことを結果的に選んでしまっています。これがいいことなのか、まだ私には分かりません。

けれども、先日の断薬の件と、回数を重ねてきたこと、会話を増やすようになったこと、などのおかげで、少しずつ、その隠し事が和らいできているような気がします。
このまま、この苦しみが何か別のものに作り替えられたらいいのにな、と思います。それがきっと一番いいのだろうと思います。
けれどもそれと同じくらい、自分が自分でないものに化かされてしまうような心地がして、その点は少し、不安ですね。

雪村さんは【彼に甘えて】とのことだったのですが、そうして相手と話をした上で、相手の同意のもとで「我が身を通す」ことを選び、
自分にも相手にも嘘を吐くことなく今の関係を続けておられるというその状態は、私の目にはとても素晴らしく、また羨ましいもののように映ります。
お相手様も当然、周囲が「赤の先」を期待しておられることは知っているでしょう。
それでもそうした周囲の囁きに惑わされず、貴方の思いを一番大事にすることを選んでくださった、その優しさはかけがえのないものです。
受け入れて、喜んでいいことであると思いますし、「大事にしてくれているのだ」と驕ったっていいと考えます。その驕りは紛れもない、真実な訳ですからね。

雪村さんの【臆病】は雪村さんご自身を守るための武器であり、美徳であると思っています。
素直に信じることができない、愛されていることを喜べない、というお気持ちは、私にもある程度分かるつもりでいます。
(何せ私はこの結婚を「贖罪」とまで言ってのけた奴ですからね)
けれども、ドッキリや悪戯で過ごせるほど、【5年】は短くありません。大切でもなんでもない人と共にする時間として、その年月はあまりにも長すぎます。
そして、雪村さんが信じられるようになるまで、いや信じられるようになってからもずっと、お相手様はその時間をもっとずっと増やしていくおつもりなのだと思います。

……私も立派な恋愛観を持っている訳ではないので、この程度のお話しかできないのが心苦しいのですが、
ただ最後に一言「雪村さんは人に好かれる人間です」と、申し上げさせてください。
雪村さんの傍にいる人、雪村さんと話がしたいと思っている人は、みんな、貴方のことが大好きです。お相手様も、そして僭越ながら、私も。

では今回はこの辺で。ありがとうございました。
また、お会いしましょうね。

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