此処があの男のタワーね!
遠くに高層ビルが幾つも立ち並んでいる様子が、眩しい夜景として目を穿ちます。
シュートシティ、プレイヤーの操作で訪れることができる場所が少ないだけで、実際にはかなり広く、大勢の人の居住区、勤務区にもなっているのでしょうね。
蜂の巣を思わせる六角形が幾つも重なったような図が……ん? いや違う! これ薔薇か! 薔薇のマークか! そういうことかおいおいおいローズさん洒落ていますねぇ!
これが、これこそが、おそらくローズさんの率いる会社「マクロコスモス」のマークなのでしょう。
「プラズマ団」「フレア団」「エーテル財団」のような形ではなく、会社名がそのまま肩書きになっているパターンは初めてですね。
アニメのポケモンにおける「ロケットコンツェルン」のような感じでしょうか。
マリィ、およびライブを終えて追いかけてきてくれたネズさんのエールを受け取り、ナユとホップでローズタワーへ乗り込みます。
中には至る所に薔薇、薔薇、薔薇……。ガラス張りの床の下に植えられている、赤と青の薔薇がいっとう目を引きます。
ロビー横に活けられている花も赤い薔薇、手前にある2つの植木鉢の中で大きく花開いているのも赤い薔薇。
ようやく、ようやく赤い薔薇が登場しましたね。町や道路にて薔薇はよく見かけていたのですが、どれもピンクだったり紫だったりで、肝心の赤色をお見掛けしなかったのです。
もしかしてローズさん、赤い薔薇の栽培および購入ルートを占有していたりとかしませんよね? だ、大丈夫ですよね……?
などと思いながらホップと共に、100階建て、300mの高さを誇るタワーを上がります。
まずはエレベーター前の門番らしき「マクロコスモスのキョウジ」と戦い、勝利。
上昇するエレベーターは何度か停止し、妨害としてマクロコスモスの社員らしき人物がエレベーターに乗り込んではバトルを挑んできます。
ダブルバトルができる程度には広いエレベーターであることに驚愕しながらも、様々なマクロコスモス社員様を倒していきます。
どうやらローズタワーには様々な関連会社のオフィスが入っているらしく、確認できただけでも、
マクロコスモス・コンストラクション、マクロコスモス生命、マクロコスモスエアラインズ、等々がありました。
それらの社員様が一丸となって妨害してくるということは……やはりこのローズタワー、黒、なのでしょうね。
ただ今回の件に関しては、ダンデさんとローズさんがどのような会話をしているのか主人公側には全く知らされていないため、
ストーリーの流れをまっとうに考えるならば、この段階でローズさん、およびマクロコスモスを黒と断定するには弱すぎる、というのが正直なところなのですよね。
いやでも黒なんでしょう? 分かってる分かってる、私ちゃんと分かってる。
さて、最上部らしきところに辿り着きましたが、待っていたのはローズさんではなくオリーヴさん。成る程、貴方が前座という訳ですね。
いつものように冷たく涼やかな、それでいて依存の極まったどろどろの瞳を向けてくるのかと思ったのですが……。
(ナユ達に背中を向けたまま)
「ようこそ、地上300m、ローズ委員長のスペースへ!
わたくしのオーダーをこなす特別なスタッフ達をものともせずにやって来るなんて、流石はチャンピオン、ダンデが推薦したポケモントレーナーね」
(振り返る)
でもね! 此処でお帰りになってもらいます! だってぇ」
だってぇ、……だと?
(目が大きく見開かれ、瞳孔がきゅっと縮む。マニキュアを塗った爪を持つ指がまるで獲物を仕留めるように大きく開かれる)
「ローズ様のジャマなんて、わたくし絶対に許せません!
まずはナユさん! あなたをボコボコにすればチャンピオンもすっかり落ち込んで、委員長の話を聞きます!」
うわぁ。
そんなこんなでオリーヴ戦です。
BGMがいかにも「××団の幹部が勝負を仕掛けてきた!」という感じのハイテンポな様相ですが、肩書きは「マクロコスモスのオリーヴ」でしたね。
所謂「ガチ切れ」といった形相で、主人公を睨み付けています。ヒステリック、とも呼べるでしょうか。
……この豹変ぶりには皆さん驚かれたかと思います。私も勿論、度肝を抜かれました。
ただこういう美しい女性がもっと美しく狂っている様子をサンムーンにて拝見していたので、
彼女の変貌に関しては、この段階ではこう……二番煎じな雰囲気が否めず、イマイチ盛り上がれませんでした。
手持ちもユキメノコ、アマージョ、ミロカロス、エンニュートと、美しいポケモンばかりを揃えているあたりもなかなかルザミーネさんを彷彿とさせて釈然としな……って、ん?
▼マクロコスモスのオリーヴはダストダスを繰り出そうとしている
これまでのポケモンとは打って変わって、美しいとは言いにくい子をエースとしているらしいオリーヴさん。
そしてこのダストダス、なんとキョダイマックスします。キョダイマックスします!
この姿がまた……船や飛行機や車のおもちゃ、ピッピ人形などが体にくっついている、ないし刺さっているようなビジュアルをしているんですよね。
攻略本の図鑑説明によると「キョダイマックスのパワーによって濃くなった毒ガスが、捨てられたおもちゃの形に固まった」ということらしいのですが、
この「子供時代の夢の象徴であったおもちゃの数々がゴミの山と化した姿」を背後に据えて、腕を組みこちらを睨み付けている大人のオリーヴさん、という構図、とても素晴らしい。
そして勝利後の台詞ですが、
「はあああぁ。勝てないなんて……。オリーヴ……ほんとにダメな子」
というように、自らのことを「わたくし」としていたバトル前と比べて、もっと幼く危うい子供の部分が言葉として表出しています。
彼女には「完璧主義」「ローズ委員長への依存」「狡猾」など様々な要素を推測することができますが、
どれを語るにしても、その美しい装甲に隠された激情、およびこの幼い心地というものは付いて回ることになりそうですね。
ルザミーネさんの二番煎じかと思われましたが、オリーヴさんは彼女とは全く別のベクトルで美しく、そして幼い人物でした。
*
さて、敗北したオリーヴさんは大人しく二人をローズさんのところへ通してくれます。
突然、ムービーではなく静止画での映像に切り替わり、二人の会話の様子が映し出されますのでこちらもメモとして記載しておきましょう。
(ローズさんとダンデさん、二人の背中が映る)
「ダンデくん、もう100回は話しただろう。それでも分かってくれないのか……チャンピオンともあろうものが」
「理解しているつもりですけどね。ただ、1000年先の問題を今すぐ解決するために、明日のトーナメントを中止するのは理解できない! たった一日ですよ?
チャンピオンの責任においても絶対に試合をする! ガラルに暮らす皆の! そしてオレの楽しみなんですよ」
「分かっていない……。全然分かっていないよ!」
(ローズタワーの最上階から見える景色、高層ビルの窓から明々と光が漏れ出ている、都会の夜景)
「ごらんよダンデくん、眼下に広がるガラル地方を。これだけの輝きを保つためのエネルギーも、1000年先にはなくなる! ガラルの皆はその時、生きていないのだよ!」
(ローズさんが顎を押さえているシーン)
「だったらたった一日と言わず一刻も早く! 問題解決のために動く! より良い未来にするために!」
「1000年先……!? 成る程、委員長の懸念は何となく分かりましたよ。明日の決勝が終われば委員長を手伝いますから」
このような流れで話を進めているところに二人が駆けつけます。
ローズさんはあまりにも素直に、ダンデさんを引き留めて長く話を続け、ホップを不安にさせたことについて謝罪しました。
「大人はね、プライドが邪魔してね、正直に話し合えないんだよ」と続けて口にしましたが、
正直なところ、此処でのローズさんのプライドが何を指しているのか、そのプライドによってローズさんが「何を」正直に話せなかったのか、という点が未だに理解できていません。
この会話だけを切り取って見る限りでは、ローズさんもダンデさんも本音で語り合っているようですし、
プライドが彼等の言葉にブレーキをかけているようには見えなかったのですが…。
もしピンと来る方がいらっしゃいましたらお教えいただけないでしょうか……考察の至らない人間でたいへん申し訳ありません。
「ローズ委員長、明日の試合をご覧ください! ガラルの歴史に残りますから」
こう告げて、二人と一緒に約束の夕食の場へと向かうダンデさんを見送ってから、ローズさんは再びローズタワーの大きな窓から眼下の街並みを見下ろしつつ、
「ガラルの歴史に残る……。 甘いね、チャンピオン。ガラルの未来を変えるんだよ! このわたくしがね!」
などと口にして、最早自身が黒幕であることを全く隠そうとしていません。
しかし……ダンデさんとの会話から見る限りでは、ローズさんは自らの利己的な野望のため、ガラルを支配するため、とかそういったことではなく、
あくまでもガラルを想って、ガラルの未来のために、といった理由で動こうとしているようでしたね。
彼が何を起こそうとしているのかさっぱり分かりませんが、オリーヴさんが「ねがいぼしは十分に集まった」という発言をしていたこと、
また以前にナックルシティで「ねがいぼしだけでなく、チャンピオンのように強いポケモントレーナーも必要」だとローズさん自身が口にしていたことから、
彼が為そうとしている「ガラルの未来を守るための行動」には「ねがいぼし」と「ダンデさん」が必要であることは間違いなさそうです。
ただ、何故「1日」を待つことさえ渋っていたのかという点に関しては、ED後のイベントまで全て終えた今になっても疑問が残っています。
というのも、今作のストーリー上では「1日を待てなかった」という環境面での理由が明らかにされていなかったのですよね。
となると考えられるのは人物の心理や性質、人間関係における都合です。可能性としては以下の2つくらいでしょうか。
1、ローズさんの「やるべきことをすぐになさらないと気が済まない」(オリーヴ談)という性質が災いし、「一刻も早く動く」ことに拘ってしまった
2、目的達成のためにはローズさんが「強いトレーナー」を説得し、協力を試みなければならなかったが、そのための人物に最も適していたのがダンデさんだと考えた
→ 明日の試合でチャンピオンが変わってしまえば、ダンデさんに全てを任せることができなくなってしまうから、焦っていたのかも?
強い人物、というだけであるならば明日に決まるかもしれない新しいチャンピオンに全てを委ねたところで大差ない。
けれどもダンデさんでなければならないと、ローズさんは考えていたようだ。
10年近くガラルを盛り上げてきたダンデさんに対し、同じく長らくガラルの発展に尽くしてきたローズさんは、並々ならぬ思い入れを持っていたのではないか?
長年、共にガラルを背負ってきた同胞、もしくは後輩のような視線で彼を見ており、彼でなければこの計画は成功しないという確信があったのかもしれない。
……ぼんやりとした考察しかできず心苦しいのですが、これが現時点での私の限界かなと思います。
いや、折角ですのでこのまま書いていきましょう。最後まで物語を振り返ることで、何か分かることもあるかもしれませんから。
明日はいよいよ、ファイナルトーナメントです。
2019.12.10
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