T、エール団との共闘

来ない。

ダンデさんが来ません。
「数時間後」というテキストが表示されたので、二人はかなり待ちぼうけを喰らっているようです。
この間に二人でどんな話をしたのでしょう……などという妄想が捗りますがそれはさておき。

「遅い! おかしい! どんな約束も守るアニキだ。チャンピオンになったのもオレとの約束だったんだぞ!? メシの時間を守るくらい全然余裕だよな?」

信頼がすぅごい! と言いたかったのですがちょっと待ってください。ホップとの約束でダンデさん、チャンピオンにおなりになったのです?
ダンデさんがチャンピオンになったのは10歳の時。その当時にホップと約束をしていた……そうだったんですね。
当時のホップの年齢をどれだけ低く見積もっても3歳はあります。2歳の子が「チャンピオンなって!」とは流石に言わないんじゃないかな。
子供との触れ合いがなさすぎるので乳幼児の言語能力についてはよく、分からないのですけれども……まあ一般論として……。

現在のホップが10歳、ということはないでしょう。SM/USUMの主人公が11歳、彼等よりも随分と大人びた風貌をしていますからね。
12~14歳くらいが妥当なところだと思われますが、そう考えるとやはりダンデさん、10年くらいはチャンピオンの座に就いていることになります。
キバナさんのリーグカードに「ダンデに10連敗中」と書かれていたので、毎年のトーナメントでこの二人の対戦があったとすると、丁度10年目、という推測もできます。
「ダンデさんがチャンピオンである」というのは、ガラルに住む皆さんにとっては長らくの間、常識にも等しい事実として知られていたのでしょうね。

さて、そんなダンデさんが来ないということで騒いでいるホップの前に、な、なんとネズさんが姿を現します。
えええなんでや! なんで、うっわびっくりした!
ジムチャレンジの開会式にも登場しなかったのに、トーナメントは見に来ていたのですか!
……あっ、そうかマリィが出ていたものね、妹の試合は是が非でもこの目に焼き付けておきたいよね、そりゃそうだ! これは失敬!

「ノイジーな野郎ですね」と、丁寧なのか粗野なのかよく分からない口調と共にやってきたネズさんが、
ダンデさんより「ローズ委員長に呼ばれてローズタワーにいるから、遅れると二人に伝えてくれ」と言伝を頼まれた、と説明してくれます。
それにしても遅すぎる、と感じたのかは分かりませんが、ホップは兄を迎えに行くためにローズタワーへ向かおうとします。
ネズさんに案内を頼むのですが、その時のネズさんの表情が……これまた最高に面白い。

「ヤレヤレ……一言で言うと、人使いの荒い兄弟です」
(ネズにカメラが切り替わる。目を閉じて上を向くネズ)
「そうですね……。ファイナルトーナメントが始まらないとおれも困りますし、何よりおれに勝利した君達はキライじゃないですしね」
(ぐっと顔がアップになり、目が見開かれ、眉が挑発的に上がり、口が大きく笑みの形を取る)
「分かりました! エール団みんなで遊びに行くとしましょうか!」

「イエイ! ネズさんサイコー! 皆でガンガン行っちゃうぞ!」

……いやいやいや待って、待ってネズさん! それちょっと違うと思う!
確かにローズタワーに向かったダンデさんの帰りがあまりにも遅いのは気になるけれど、そんなエール団みんなで「突撃ー!」みたいにして向かわなくてもいいと思うの!
突然のノリの良さといきなりのコワイ満面の笑みにも笑ったし、ホップがそのノリに付いていっているのも面白いのですが、ね、ネズさん! それはいけない、いけないわ!
だってそんな風に「ローズタワーに乗り込みます宣言」したら、まるでローズタワーにいるローズさんが黒幕みたいじゃないですかー! やったー!(?)

ホテル前に再集合した3人に加え、エール団の下っ端さんとマリィも姿を現します。
「ナユとの激しい試合でいろいろくたびれとーのに……」と零しているところからして、マリィはネズさんに呼び出されたのでしょう。

「エール団はナユを応援すると決めたのですよ、一緒に手伝ってください」

と、此処であまりにも有難く畏れ多い発言がネズさんから飛び出しました。
マリィは「まだ誰を応援するか決めとらん」と試合終了後に発言していましたが、このネズさんの言葉を受けて、ナユを応援してくれることになったのでしょうか。
ネズさんの言葉に、マリィよりも先にモルペコが嬉しそうに笑って同意を示しました。
モルペコはナユのことをそれなりに気に入ってくださっている、という発言も以前にマリィからあったような気がします。ありがとう、かわいいね。……かわいいね!

「美しい兄弟愛! ですが必要はありませんッ」

オリーヴさん! ようやく、ようやくお出ましですか。待っていましたよ貴方がこうして立ちはだかるのを!

「ローズ委員長はチャンピオンと大事な大事な打ち合わせの最中……。誰にも邪魔をさせる訳にはいきませんッ!」

そう告げて、ローズタワーに向かうエレベーターには鍵が掛かっていること、その鍵はリーグスタッフの一人に渡したことをご丁寧に説明してくださいます。
なんでや! なんでポケモンの世界の悪役側の人間ってのはこうやって、子供にも足取りが掴みやすいように自ら手掛かりをポイポイと渡していってしまうんや! 有難い!
「だってローズ委員長、ちょっとした遊びが好きですもの」との発言があったことから、
こうやって手掛かりを渡してしばらく主人公達を泳がせるのは、彼等なりの「遊び」であるということが分かります。
……ローズ委員長、少し我々を舐め過ぎじゃないかな?

鍵を持たされたリーグスタッフのサングラスは黒色。一般のリーグスタッフはこう……もう少し明るい色味のサングラスだったような気がしますね。
「見分けが付くかしら?」と挑発的に言い残して、オリーヴさんとリーグスタッフは去って行かれました。

彼を追いかけてシュートシティの広場に向かい、ネズさんのアドバイスを受けてあらゆる場所を探し、見つかってはバトルを仕掛けてくるリーグスタッフと3回ほど戦います。
このリーグスタッフ、どのタイミングで手持ちを入れ替えたのか分かりませんが、バトルの度に繰り出すポケモンが変わっていますね。
鋼タイプを中心にパーティを構成しているところからして、ローズ委員長の手持ちもきっと鋼タイプ中心であることが推測できます。
え? ローズ委員長が黒幕であることを前提に話を進めている? HAHAHAもう此処まで来れば確定でしょう。やはり貴様かぁ! 叩きのめしてやるぜ!

駅に逃げ込んだリーグスタッフですが、増援を呼んだらしく、複数人でエレベーターに続く通路を封鎖しにかかりました。
やれやれ、面倒だけれど4連戦くらいどうってことありませんね。
……などと思っていたのですが、いきなりネズさんがナユの肩をぽん、と叩きます。

「ナユ、悪いリーグスタッフを追い詰めるとは、よくやりましたよ。ご機嫌な君を称えて、とびっきりの歌をプレゼントです。
しがないシンガーにできることは、ささやかな歌を歌うことだけ」

(いきなり何処からともなくマイクを取り出し、歌い始める)

歌で誰かにエールをなんて ほんとはウソだよ ムリだよ
歌で誰かを幸せになんて おれにはムリだよ できないよ
だけどそれでも歌うよ ささやかな歌を 歌うだけだよ

えっ……。
此処、私、物凄くびっくりしたのですが、ネズさんってそういう歌を歌われる方なんですね!
私はてっきりそのビジュアルから、もっとパンクでロックは「ぶっ壊してやるぜ」みたいな感じの(それグズマさんや)歌を繰り出すのかと思っていたのですが……。
でもこの認識自体、ネズさんの「見た目で人を判断するようでは」というヤツなのでしょうね。
いや、彼のビジュアルおよび口調という装甲に見事にしてやられました。最高に素敵です。

彼はシンガーソングライターとしても名を馳せているため、シュートシティの駅にも数多くのファンがいらっしゃったようです。
ネズさんだ! ステーションライブだ! ということで、ドタバタとあちこちから人が押し寄せてきて、その波に飲まれる形でリーグスタッフのバリケードも破れます。
「ネズさーん! キーは奪いました! ローズタワーまでモノレールで行けますぜ!」と、おそらく下っ端の一人が宣言します。
スタンドマイクを強く掴み、歌い続けるネズさんはその様子を確認した後に、力強く呼びかけました。

「ナユ! ホップ! 今だ、行け、行きやがれこのヤロー」

此処まで手助けしてもらっては行かない訳にはいくまい。では向かいましょう、ローズタワーへ!

2019.12.10

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