L、6番道路~ラテラルタウン

ナックルシティから東へ向かうと、エール団がいつものように道を塞いでいました。
実はこのエール団、随所で主人公の進路を塞いでいたのですが、それはある種の道しるべのようなところがあり、
「まだ別のルートでやるべきことがあるからそちらを先に済ませなさい」というようなことを示唆しつつ、
彼等のストーリーにおける立場もはっきりさせるという、非常に効率的なポジションにおり、成る程よく考えられているなあと思っていたのですが、
今回はキバナさん、ダンデさんなどの導きによりしっかりと正当な順路で進んできた上での妨害なので、おそらくバトルで追い払うことになるのでしょう。

などと思っているとそこへホップが登場! ほ、ホップ! 君大丈夫か、ビートに酷い負かされ方をしたのだろう。
どうせ彼の事だ、けちょんけちょんに君のことを貶していったのだろう。だがそんなのは気にすることではない。君は君のままで十分に……って、あ。

あああダブルバトルにならない!
第二鉱山でエール団を追い払うときにはタッグバトルで協力してくださったというのに、今回の駆逐は全てナユに任せきりじゃないか!
これはホップ、かなり自信を失っています。あの天真爛漫でやる気に満ち溢れた彼の心を此処まで折るとは……ビートの奴、只者ではないな。
などと思いながら駆逐を済ませ、ホップから話を聞くことにしましょう。大丈夫、ホップは主人公を信頼して話してくれます。

「オレ……ビートにボロ負けして……。いや、負けたのはいいんだ。勝負ってそんなもんだろ?」
(ホップの後ろ姿がアップで映る、俯く彼の様子がよく分かる)
「ただ、アイツに、アニキの名前に泥を塗っていますねって……。そんなことを言わせた自分が悔しくてイヤなんだ!」
(顔を上げ、ナユの方を見て)
「オレが弱いと、アニキまで弱いと思われる……。そんなのイヤだぞ! アニキは無敵のチャンピオンだ!
これでいいのかちょっと考える。じゃあな、ナユ……」

(ホップが立ち去り、エール団が守っていたスナヘビもゆっくりと草むらへ戻っていく。それらを見送るナユに後ろから声がかかる)
「あんた、ダンデが選んだジムチャレンジャーだね」

とまあ、ここでポプラさんが登場し、自身のリーグカードを渡して同じ方向へと去って行かれるのですが……。

うん、ビートが辛辣な言葉でホップを貶めようとするという未来は用意に想像が付きました。でもこのホップの言葉は予想外が過ぎて混乱を起こしそうになりましたね。
端的に言えば、いい子が過ぎる。
自身が相手にボロ負けし、悔しい気持ちになっているところへ追い打ちのようにかけられた言葉を受けて、
自身の矜持とか実力とかが及ばないことに対して苛立つのではなく、自身が尊敬しているダンデさんの名声が脅かされることを案じて悔しがる、なんて……。
このように考えられる子供が果たしてどれ程いるのでしょう。
自身の悔しさではなく他者への申し訳なさを感情の処理において優先することなど、大人でさえもなかなかできるものではありません。
けれども、ホップはそれができる子でした。ビートが彼をボロボロに負かしてくれたおかげで、私は皮肉にもホップの魅力というか、真の精神的な強さに気付くことができました。

ホップはこの後、しばらくは「アニキがバカにされないために」戦うことになります。
また、ビートは長らく「ローズ委員長に認めてもらうために」戦ってきたことが、リーグカードからも明らかになっています。
そして、ソニアさんも「おばあさまに認めてもらうために」研究に取り掛かったのだと、ワイルドエリアの駅前で発言していましたね。

このように、人の繋がりがかなり色濃く描かれており、その繋がりのために此処まで懸命になれる子供や若い人達が揃っている中で、
ローズ委員長の、ビートの顔を見てもすぐに名前を思い出せなかったという不誠実はかなり目立つものがあります。
同じ「大人」枠であるダンデさんは、主人公の「瞳の色」を見ただけで、彼女こそが弟の話に出てきたナユであるとすぐに勘付いていることからも、
ローズさんの「個を蔑ろにしがちな傾向」というのが汲み取れてしまう……ような、気がしています。
立派なお人だとは思いますし、そのようなマクロな視野がなければガラルは此処まで発展しなかったとは思うのですが、
けれどもその代償として失われた個人への思いやりという致命的欠陥によって、
彼を慕うビートや彼を補佐するオリーヴさんが密やかに傷付けられてはいないだろうか、などと、考えてしまいますね。

6番道路ではデスマス(ガラルのすがた)に出会って「うわあああ」と発狂しながら捕獲したり、
更に奥のところでカセキ復元所を発見して「研究所も持たずに何をやっているんですかお姉さん」と少し悲しい気持ちになったり、
それからダグドリオ(もしくは、3匹のディグダ)の大きな遺跡を見つけて「くそう……可愛いじゃねえか」と謎の悪態を吐いたり、
そういったことをしつつ、砂煙が立つ砂漠を思わせる町、ラテラルタウンに到着しました。
此処だ! 此処に! サイトウさんがいる!

この町の市場では1日1個、特別な道具を3000円で購入できます。
通信交換進化に必要なれいかいのぬのやメタルコート、とあるポケモンの進化に必要な割れたポット、技強化のためのプレート類、など、色々とありましたね。
隣のおじさんは、バッグの中の分類「おたから」の中から、ランダムに1つだけ、お店で売るよりも高い価格で買い取ってくれます。ストーリー中の金策として非常に有難いですね。

ラテラルスタジアムへと続く道でホップと再会し、バトルをしたのですが……此処で驚くべきことが。

▼ポケモントレーナーのホップはウッウを繰り出した!

あ、え、えええちょっと待ってくれホップ! ウールーは? しろワカメは!? お仕事をずっと一緒に手伝ってきたという貴方の相棒は何処へ行ってしまわれたの!
いやもしかしたら先鋒として繰り出すのを辞めただけで、ちゃんとパーティにはいるのかもしれない、と思ったのですが、
結局最後まで出てくることはなく、手持ちはラビフット以外一新され、ウッウとエレズンとスナヘビと御三家という組み合わせでした。
曰く「チームのメンバーも入れ替えてオレの可能性を探った」とのことです。強くならなければいけないという焦りが彼の発言から読み取れますね……。

「オレはアニキのこと、かっこいいトレーナーとして憧れている! 弱いオレのせいでアニキがバカにされるのはイヤだ!」

そう告げて去っていくホップと入れ替わるように、再びポプラさんが登場です。

「ジムチャレンジャーは自分のため、ポケモンのために戦いな。今更チャンピオンの強さを証明しても意味ないさ」

これまで「誰かのため」に戦ったり研究を進めたりしようとしていた子供や若者が多かった中で、その在り方を直接的に否定しにきたポプラさん。
確かに「誰か」を拠り所とするというのはこの現実のままならない世界においてもリスクの高い行為であり、諸刃の剣となってしまうことが往々にしてあるのですよね。
もう成人し、大人と呼ばれる年になってしまった私にはそれが分かりますが、まだホップやビートの年ではなかなか思い至れないだろうなあ、とも思います。
だからこそ子供というのは懸命で、一途で、それ故にとても危ういのですけれども。

此処でポプラさんのリーグカードと、このタイミングでポプラさんから頂戴したサイトウさんのリーグカードを確認しましょう。

ポプラさん
「ガラル地方で最年長のジムリーダー。母の後を継いで70年、ジムリーダーの座を守る。
ただ本人は自分だけの価値観では限界があると現状を憂いて、後継者を探している。
ピンチで人の本性は丸わかりになると考えて、意地悪なクイズを出すと説明しているが、あれは根っから意地悪だからと指摘する人もいる」

サイトウさん
「親の英才教育で、パートナーのポケモンと共に厳しく鍛えられて育つ。判断力に優れ、どんなピンチでも冷静で、感情が乏しいと言われがちだが、
本人は相手に隙を見せないように振る舞っているだけらしく、試合中、パートナーには、割と本音を見せてしまう。
隠れスイーツマニアだが、ファンにばれた最近では食べるのに苦労している」

濃い! どちらも濃い人間性をしていらっしゃる! 所謂「キャラが立っている」というやつですね。
ポプラさんのクイズはまたその折に紹介するとして、サイトウさんが厳しい家庭で育ってきたこと、スイーツがお好きであることなどを情報として頭に叩き込みつつ、
さあ、折角スタジアムが目の前にあるのですから挑戦しない訳にはいかないでしょう、いざ行かん、サイトウさんの元へ!

実はこのサイトウさん、発売前の情報では一番「かっこいい!」とときめいた人物でもありましたので、お会いできる日を楽しみにしていたのですよ。
ソードとシールドでラテラルタウンのジムリーダーは異なるため、ストーリーの本筋に関わる人物ではないことは察しがついていましたが、
それでも一人のジムリーダーとしてこうして相対することができるというのは、本当に、光栄の極みであります。

中では、謎の手動式コーヒーカップのようなアトラクションに乗り、くるくると回りながら奥(画面では手前)を目指していくというジムミッションが待ち受けていました。
アクションゲームが苦手な身としては苦しいところではありましたが、なんとか突破し、ジムトレーナーの皆さんともバトルし終えて、スタジアム入りを果たします。
このスタジアム、畳なんですよね。その畳を素足で歩いてくるサイトウさんの「ぺた、ぺた」という音がまた素敵でしたね。

「ようこそ、ジムチャレンジャー。わたしはサイトウです。あなた達の心、どんな攻撃にも騒がないのか、わたしが試すとしましょう」

丁寧にお辞儀をしてくださるサイトウさん。敬語口調なんですね、なんて素敵なんだ!
先鋒はPVにも登場していたカポエラーです。こちらはストリンダーを繰り出したのですが、此処から何の指示も出さずに5分ほど、カメラワークを楽しんでいました。
サイトウさんの待機モーションと、時折繰り出されるあの手の「くいっ」という動作が本当にかっこよくて、いつまでも見ていたい気分にさせられてしまいます。
ついでに主人公であるナユの動作も見ていたのですが、両手をぐっと握り締めて「やるぞ!」と気合を入れているようなポーズを取りますね。強気だ……どちらもかっこいい!

「踏ん張りどころです。わたしも一緒に頑張ります!」(ラスト1匹)
「もう! 全部壊しましょう。尊敬を込めて、キョダイマックス!」(ダイマックス前)
「あなたが率いるポケモンから、武芸の魂を感じました」(勝利時)

手持ちはカポエラー、ゴロンダ、ネギガナイト、そしてキョダイマックスするカポエラーでした。
格闘タイプに有効打を放てるミブリム改めテブリムはまだレベルが足りなさそうであることから今回は観戦に徹して、他の皆さんで勝利することができました。
ネギガナイトを繰り出そうとしていたところで、「よし、ネギガナイト対決と参ろうか」などと調子に乗ってこちらもネギガナイトのタブラ姉貴を繰り出したのですが、
まさかの「リベンジ」によるアタックにより惨敗と相成ってしまったので姉貴には申し訳なさ過ぎて頭が上がりません、ごめんよ……。

「ありがとうございました」
「ふう……手合わせして分かりました。あなた達との立ち合いで、わたし……思わず心が躍っていたようです。
騒がないのも勝負であれば、楽しむのも勝負ですね。ありがとうございました。格闘バッジをお受け取りください」

(握手、ふわっと微笑む)
「これからも様々な出会いと試合があるでしょう。それら全てがあなた達の心の糧となりますように」

どこか自身を律するような厳しく静かで凪いだ目をしていたサイトウさんですが、試合終了時にはキラキラとした美しい目で微笑みかけてくださいました。
ありがとうございます。いい勝負でした。サイトウさんのネギガナイトとはまた再戦したいですね。今度こそそのネギを美味しく頂いてやらぁ!

2019.12.8

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