7/16、木田さん

 こんにちは、木田さん。遊びに来てくださりありがとうございます。
 ついったではいつもお世話になっております。ニンドリ9月号にあったセイボリーの記載「強い××心」は本当に、ええ、戦慄ものでしたね……!(今回は木田さん、とお呼びしておりますが、ついったのお名前に統一した方がよい場合はまた仰ってくださいね)

 あちら、1日1セイボリーを書き続けられている間だけの短期アカウントとはなりますが、少しでもセイボリーを好きな方に楽しんでいただけるよう、彼のエンターテイナーとしての気質をリスペクトしつつ励んでいこうと思っております。いつも拙作に目を通してくださり、本当にありがとうございます。
 セイボリーは本当に魅力的な人物であるにもかかわらず、SNSやpixivでほとんどその姿をお見掛けしないため「みなさーん! セイボリーって実はすごい人なんです! 本当なんです!」と声高に叫ぶために出てきた……というような裏事情がアカウント開設の折にはございました。なので今回のニンドリで彼が一世を風靡し、彼の二次創作がキバナさんばりの大流行を見せるようなことがあれば「よし、ファン末席たる私の役目は終わりだ」と勝手に満足して去るようなことまであるかも分かりませんが……。で、でも勇気を出して飛び出していった先でお繋がりいただけたセイボリーをこよなく愛する方々とのご縁は大事にしていきたい気持ちもあるので、さてどうしたものかなという心持ちではいます。
 あとSNSは、サイトとは全く異なる心遣いが求められるので、そちらへの緊張感も少なからずあり、まだ全てにおいて楽しむということは難しい状況でもあったりします。鍵アカウントでない場合、ひとつ呟くだけでも心臓が爆発しそうになりますね。恐怖と不安の連続です。でもそうした未熟な身でありながら、SNS界の先輩でいらっしゃる木田さんに近くで見守っていただけること、とても心強く感じているんですよ。

 そして/600のご感想、嬉しすぎて何度も読ませていただきました。あのような長いものをよくぞ最後まで……本当にありがとうございます!
 最終話には私の書きたいことを全部詰め込んだ感があり、場面がコロコロと転ずるので忙しかったかもしれないのですが、全て好意的に拾い上げていただき嬉しく思います。
 【ここの表現に力を入れた、とか、そういう裏話が聞けるととても楽しいです】と書いてくださったのでワタクシお言葉に甘えましてとても長く書き散らかしております。お時間のある折に、ざっと眺めて楽しんでいただければ幸いです。

 まず最終話序盤の「ワタクシ頑張りましたとも」のところですね。これまでの門下生さんの登場シーンと言えば「死角から刺客」にてセイボリーをユウリのところへ送り出すところ、あと「久遠かな、狂った針の隙間より」で時計が壊れたことにざわめくところ……くらいのものだったので、この二人が身を置く「家族」の温度について描写不足だったなという反省があり、此処で一気に詰め込んでいこうと考えるに至りました。
 それまで「本気になれなかった」と師匠より語られたセイボリーに全力を出させた相手であるユウリのことは、門下生の皆さん正当に評価しているんじゃないかと思っています。弟弟子であるセイボリーの懐きっぷりも見ていたことでしょうし……。二人が収まるところに収まった、ということを、おかみさんを含めた道場の皆さんは本当に純粋に喜んでくれそうだなあとは、思っていました。形にできてたいへん満足です。

 この「ユウリ」の実力についてはプレイヤーの解釈によってバラつきが生じるところだとは思うのですが、私の場合は「マスタード師匠にさえ無敗を貫き続けるトレーナー」として書いています。実力としては無敵に近い。そんな彼女に必要な「修行」とは何だったのか。この師匠は何を思って、道場の定員の最後の一枠に、勘違いで入って来たこの子を置いたのか。そう考えたときに、師匠の慧眼が彼女に「心の修行」を必要だと判断せしめた可能性を思い付きました。「森のヨウカン」なんて、本当は手に入っても入らなくてもどちらでもよかったんですよね、師匠にとっては。
 門下生さんとおかみさんはただ純粋に、二人がひとつの形を取ったことを喜んでいますが、師匠はその慧眼から、こうした「全力で、真剣な心持ちで向き合う相手」として二人の関係に名前が付いたことを喜んでいる……ということになります。勿論、恋人などというものになってしまっては「浮つく」ことは避けられないだろうということは、若いおかみさんを妻に持つ彼なら容易に察しもついたでしょうが、そこは二人の「強さへの追及心」を信じて任せたのでしょう。そしてユウリは実際に、その無言の信頼に応えてみせました。ただその代わりに「随分と大きなもの(永遠に化けた1分)を手に入れていった」ことに関しては、流石の師匠も想定外だったかもしれませんね。

 ユウリの装甲は、実はSWSH発売のずっと前から決まっていました。「探偵かぶれの哲学少女」これが彼女の最初期のコンセプトです。セイボリーのあれが「装甲」であるという可能性に思い至ってから、さてこれを何と表現したものかな、というのは随分と悩みました。彼のあれは「道化」には違いない。でもピエロは仮面に涙があるから使いたくない、もう少し気品が欲しい……と色々調べていたところに出てきたのが「宮廷道化師」の単語です。エレガントを信条とする彼が、わざとおどけてみせることさえ自らの気品の中へ組み込んでいったとして、それはとても自然なことなのではないか、と考えました。そうしなければ石を投げられつまはじきに遭うばかり、な境遇の中では、尚の事、その鎧を手に取らざるを得なかったのだとも思います。
 トランプのジョーカーも「宮廷道化師」の意味で使われています。王様や女王の札があるので、王宮の手札として揃えたかった……との意向があったようですね。場合によっては王様や女王に「物申す」ことさえ許された宮廷道化師が、トランプという娯楽において「決定的な札」の位置に置かれたという歴史にロマンを感じ、この度お借りするに至りました。
 ユウリの運命をひっくり返していったセイボリーという切り札。「私に道を拓かせた唯一の色」を有する彼。彼の「ジョーカー気取り」はセイボリーにとって生きるために纏った「鎧」に外なりませんでしたが、その鎧があったことでセイボリーだけでなくユウリも文字通り救われた、という真理を最後にユウリ自身の口から饒舌に語らせることができたのも、またこの二人らしくてよかったんじゃないかな、と思っています。
 スピードで遊んでいて、最初優勢だったにもかかわらずユウリがジョーカーの札を置いた時点で大逆転を許してしまい絶句するセイボリーに、「ほらぁジョーカーってこういうカードなんだよセイボリーほらぁ!」と高笑いするユウリの話……の予定は特にないのですが、道場の皆で仲良く遊んでくれるといいですよね。

 怪我をして歩けなくなったセイボリーがくずおれた状態で、ぐずるように乞うた「1分」でしたが、それからも冗談めいたものとして幾度も使われつつ、最後には二人の間だけで通じる「永遠」に化けた点についても、注目してくださりとても嬉しく思います。
 「鎧と冠のカーテンコール」でユウリが「私は君に永遠を貰った」と宣言していましたが、此処でセイボリーが「ええっ!? そんなつもりでは!」と素っ頓狂な声を上げることなく即座に受け入れて「ああ、こうしてはいられない」と思い直した点ですが、此処で「そんなつもりでは!」とならず彼女の認識とすぐさま揃えることが叶ったのは、大論判三部作での「約束」があったからだと考えています。「1分」の要素が唯一ない大論判三部作ですが、此処で交わした「約束」がなければそもそも二人は「配慮」の壁で隔てられ、互いに身を守り合うばかりでした。元々は連載の形にするつもりのなかったお話ではありますが、こうしてひとまとめにしても尚、各三部作ないし四部作がその後の物語に何らかの働きかけを行えているという状況は、書き手として非常に喜ばしく「ふっふふやったぜ」となれる点ですね。

 この「/600のアクアティック・メヌエット」に集約される全ての連作や番外編は「セイボリーを支える話」として書き始めたものでした。故に読了後の想いとして何よりも、セイボリーが【大事にされていてとっても幸せになれるお話】【皆に愛されててよかったな…!!!】というのを一番に抱いていただけたのは、彼のことを考えて書き続けてきた身として本当に喜ばしく光栄に思われるところです。
 長らくポケモンのお話を書いてきた身ではありますが、どうしても私の傾向として重たく暗いものばかりが生まれていきました。そんな中で、サイト開設10年目(空白の期間も多々ありましたが)の節目に書いた「/600のアクアティック・メヌエット」を【幸せな物語】とまで言っていただける形で終えられたのは、ひとえにセイボリーのおかげであると言っても過言ではないでしょう。少し驕ることが許されるのならば、彼の意地の悪さや過去の暗さ、闇の深さではなく、あくまで「魂の清さ」に焦点を置いて書き続けられたことが、当連載の温度を此処まで上げることに一役買ったのかな……などとも考えていますが、それは本当に微々たる要素です。セイボリーが素晴らしい人であったから、これに尽きます!
 10万字を超える長編となってしまいましたが、彼等の1分にお付き合いくださったことについて、改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。木田さんに読んでいただけて、本当によかった!

 さて、今後の予定、もといセイボリーに関する夢物語についてまたしても妄想させていただくのですが……。
 このユウリがセイボリーに出会うタイミングが、彼等の関係を決めるにあたってはとても重要なものになると考えています。今回の/600では「ED後」であり、既にチャンピオンになった無敗の姿として訪れたユウリを書きましたが、もしこれが「ED前」だったら随分と話が違ってきます。たとえばジムバッジ2個や3個の段階であの島を訪れ、セイボリーや道場の皆と楽しい時間をしばらく過ごし、これ以上ないくらいの自由な時間を覚えてしまった後で本土に戻ろうものなら……もしかしたらその後の世界救済イベントやチャンピオンの肩書きというのは、/600でユウリが感じていた「ちょっとうんざりしている」程度では済まないような、それこそ、立てなくなってしまうレベルのものになり得るかもしれません。この場合、「セイボリーを支える話」ではなく「セイボリーが支える話」になるんですよね。昨日、短編の形にしたばかりですが、連載になるかどうかは……うーん、悩ましいところです。
 また、このようなルートは原作上在り得ないのですが、ムゲンダイナを捕獲してからチャンピオンマッチが行われるまでの間に3日間の空白がありましたよね? あの間にユウリがホテルを抜け出してヨロイ島へ向かい、ハイスピードで修業を終えたら……というルートも現在進行形で妄想中です。実は一番初めに思い付いたのがこのルートだったのですが……大論判三部作を書くのが楽しすぎてこちらに夢中になってしまいました。
 全てを形にできるかどうかは分かりませんが、時間と体調の許す限り、セイボリーの魂の清さを信じて書き続けていきたいなと考えています。他の人物を書くこともあるかと思いますが、また木田さんの好んでくださるセイボリーを偶然にも書くことが叶った折には、機会があれば、木田さんの読み方、感じ方をお聞かせいただけると嬉しく思います。

 宣言通り随分と長くなってしまいましたが、此処まで読んでくださりありがとうございました。

「この二人に心をお寄せくださった貴方にこの場所で出会えたことを、光栄に思います」

 ではまた、お会いしましょう! 拙作たちと共にいつでもお待ちしております。

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