7/7、木田さん

(1通目の分)
 こんにちは、木田さん! またお会いできて本当に嬉しく思います。お返事、今回は少しお待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。

 サイトでの出会いは一期一会であると覚悟していただけに、同じ名前をメール欄に見つけることが叶ったときの喜びというのはもう、筆舌に尽くしがたいものがあってですね……。前回の長々としたものにも最後まで目を通していただけたとのこと、光栄に思います。
 嬉しみが深くなっていただいたとのことで思わずニヤニヤしてしまいました。いいですねいいですね、セイボリッシュワードはきっとこうして世界を少しずつ嬉しみで満たしていくのですね、素晴らしい。

 魂の清さと超能力の描写について、本編でもご確認くださり嬉しく思います。
 どうしても「水」を浮かせたがる人間ですが、どんなものを浮かせても彼の場合は様になるし、また様になるような神秘性を文章で再現していければいいなと思っているので、これからもどんどん書いていこうと思います。

 ウオォッ「久遠かな、狂った針の隙間より」の時計描写にご言及くださるとは! ワタクシ嬉しみが(略)
 「子供になる」のがとても上手、というのはセイボリー短編第一弾「ウールー、敗北を喫す」で書かせていただきました。普通、子供になるというと我が儘を発揮するとかそういう、我欲のために退行が手段として取られがちなのですが、セイボリーはそうした自らの望みを叶えるためだけでなく、純朴な心意気とか素直すぎる感情とか、そうしたところまで「子供」の再現が上手であり、そういう意味で「本当に子供のようだ」と言うことができそうです。なのでセイボリーに「子供のようだった」「子供みたいで」などと表現を入れるときには、ユウリは彼の何処にそういう面を見て、どういう風に微笑ましく思ったが故の「子供」か? というのを考えるようにしています。

 いえいえ! 木田さんのご言及はとても丁寧なので、「あの内容の事を言っているな!?」というのがすぐにわかるため、はっきりしないというのとはありませんでしたよ。じっくり読んでいただけているということが伺える、真心溢れる文章をいつもありがとうございます。

「分かった。約束するよ。いつだって真剣な心持ちで君と対峙しよう。全力で君と向き合おう。君のためだけではなく私のためにも、これからずっと、そうしよう」(1-3:そんなこんなに誓う夜)

 この時点では「私のため」がどういう意味なのか、語り手であるはずのユウリの側がぼかしている状態であり、少し不自然にも取られかねない発言だったと思うのですが、好意的に見ていただき嬉しく思います。この約束が二人の関係の基盤となり、以降の話はこの約束、およびこの喧嘩を大前提として進んでいきます。【誰かと真剣に向き合う】ことがどれ程のものであるかを知った二人がそれまでとは異なる強さを得ていくのは最早自然の摂理に等しかったと言えるでしょう。
 勿論それは、セイボリーとユウリ二人ともに、約束を守るだけの誠実さ、また相手に対して誠実でありたいと望めるだけの「想い」があったからにほかなりません。【おにあいだなあ】と言っていただけて、きっとこの二人、めちゃめちゃ喜んでいますよ。まあ私はそんな二人の2億倍喜んでいるのですけれども、ね!

 あっはは! 【「セイボリーお前無理すんなよ!!」】には声を出して笑ってしまいました。そこまであの物語の中の彼に心を寄せてお読みいただけていること、本当に嬉しい! ありがとうございます!
 そんで「無理すんなよ」はあれでしょう、あのカフェでいきなりセイボリーが語り始めたところでしょう! そうですよねちょっと頑張っていましたよねセイボリー! あの場面、流石に人の数を多く描写しすぎていて、それはいけないと思いまして本日ちょっとばかし訂正を加えたのですが、それでも夜の清涼湿原や雨の降りしきる集中の森などではなく、多くの視線を集める場所において口火を切るというのは並々ならぬ勇気を要するはずですよね。
 ただ、それだけの「勇気」を奮える程にセイボリ-がなったのだということと、あとセイボリーはそうした「全力でユウリと向き合いたい」とかいう「希望」を抱いた折には「なるべく早く行動を起こしたがる」という傾向にあるようで、それ故に、きっと帰りの電車まで待てなかったのだろうな……というような想定をこちらではしていました。この「行動を起こさなければならない、今すぐに!」という心地は……実は木田さんが2通目のメールで言及してくださっていた「4-2:Jの鎧、Qの冠」に書かれていたりするんですよ。勢い余って告白する、直前のところです。

(以下、2通目の分)
 さてさて2通目の分に関して、お返事不要とあったのですが1通目のご感想に対するお返事と重なるところがありましたので、ひとまとめにさせていただきました。独断をお許しください。

・(ユウリの目がこちらに向くのをじっと待ってからの)ほら、捕らえた。
・「あなたにそこまで言わしめたのがこのワタクシであるかもしれないという可能性を、光栄にさえ思います」(4-1:3本の矢を穿つ指)

 いやもう此処にご言及頂けたというだけでも嬉しいのに【二人が心のうちを伝える前では考えられないような言葉だと感じたんです】でもう私の心もキョダイマックスでございました。ありがとうございます……!

 「鎧」「冠」「ジョーカー」「探偵」この辺りの捏造と誇大解釈を受け入れてくださったことについても心からの感謝を……。彼はユウリと「揃い」になりたくてその装甲を「捨ててください」などと口にしましたが、その装甲の本質は彼と彼女で大きく異なるものであり、ユウリにとってのそれは、彼のように「安心したときや必死になったときに容易に外れるようなものではなかった」のですよね。ということを示してからの「それでも、彼のために外そうと思った」そしてその結果「嬉しいことが起こった」という流れをどうにかして書きたかったんです。……ええ、書きたくて……。
 ともすれば自己満足に終わってしまうのではないかとさえ覚悟していたのですが、真剣に読み込んでいただいた木田さんに、この形での彼等を祝福していただけると、本当に、並々ならぬ自信になりますし、嬉しさもひとしおです。二人の幸せを祈ってくださり本当にありがとうございます。

 ユウリとの「揃い」を望み続けた彼。欲しいものを欲しいと言える勇気を貫いた彼。その魂の清さでがむしゃらに進み、最後にたった一人を救ってみせた彼の「切り札」としての有様を、4-3と4-4にて、見届けていただけると嬉しく思います。

 本日をもちまして、これまで書いてきた1日1セイボリーを「/600のアクアティック・メヌエット」の形に変え、連載として当サイトに並べることにいたしました。
 これに入れられなかった短編やSSも含めてですが、DLC発売からずっと書き続けてきたこれらは、ただ単にセイボリーが好きで、彼の生き様、魂の清さに惚れこんだ人間として、彼に心を寄せてくれる人が一人でも増えてくださると嬉しいな、と、そうした心地で書き進めていたものでした。
 ずっと単発作品、多くても三部作程度で楽しんでいただくつもりだったのですが、彼とユウリの「1分」への、私個人の愛着が、彼等の物語を一続きのものにしたいという欲を生み、結局はこのようなことになってしまいました。唐突な方向転換に戸惑われたかもしれませんが、それでも終盤まで丁寧にお読みくださったことについて、心から感謝の意を表させてください。木田さんに頂いた感想は間違いなく、/600を書き続けるためのエネルギー源でした。本当に、ありがとうございました。

 あとこれも! これも申し上げたい!
 【こんなお天気の中ですがこのお話を読んで、とても晴れ晴れとした気持ちになりました】と2通目の結びにご記載くださったでしょう! 傲慢なことですが私、この一瞬だけセイボリーになれたような気がしてめちゃめちゃ嬉しかったのです。

昼を夜にするような、雨を晴れにするような、種を花にするような、魔法めいた神秘性で、彼は先程までの幼さを完全に排していく。(1-3:そんなこんなに誓う夜)

 雨を晴れにするような。私の書く物語なぞにそのような力がほんの一部でもあったこと、木田さんにそのように思っていただけたことを、心から光栄に思います。
 ごめんなさい更に長くなってしまいましたがこれだけはどうしてもお伝えしたかった!

 長くなってしまいましたが今度こそ最後に。
 返信不要との「ご配慮」はとても嬉しく喜ばしく、有難いことですが、こと木田さんを始めとする、セイボリーを好きなあらゆる方とお喋りをして楽しみたい身としては、……ふふ、もしかしたらそれは「とんだ的外れ」かもしれませんよ?
 (この「とんだ的外れ」発言も、セイボリーとユウリの間で繰り返し使ってきました。第一章ではあれほど憎んでいた「配慮」の「的外れ」も、最終話でのキレ芸では彼等の個性を認める「愛嬌の承認」の合図のようになっていれば、という期待を込めて、あの激情を再現しました。楽しんでいただけると嬉しく思います)

 では、ありがとうございました! もしよければ是非また、お話させていただけると嬉しく思います。いつでも、お待ちしていますね。

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