3/9、イチさん

こんにちは、イチさん。
遊びに来てくださり、ありがとうございます。

さて、第8世代の発売がとうとう決定してしまいましたね。いや、喜ばしいことですよ、本当に!
イチさんのお言葉を受けて「HAHAHA少女が酒を飲むなんてそんなまさかフフフラダリ」とか思いながら検索してみたのですが、ものの見事に飲んでいらっしゃいましたね。
全国的に親しみやすい(?)キャラクターとして認識されているようで何よりです。
これはやりすぎだろうと思う一方で、いいぞその調子で皆さんもっと女性主人公に注目して、とも願ってしまいます。
私はあの可愛らしい帽子(スコティッシュ帽と言うのですね)を見て「こんなん芸術家か探偵路線で行けって言っているようなものじゃないですか」などと思ってしまい、
11時のニンテンドーダイレクトが終わってから30分と経たずに「探偵かぶれの哲学少女」を脳内で作り上げてしまう始末でした。
「ふむ、私という存在を追求するのは難しそうだね……この霧の町ロンドンでは……」とか、どやぁしながら言っていただきたい所存です。はてさて、どうなることやら。

全般的に第8世代は楽しみで楽しみで仕方ないのですが、やはり「ドイツじゃなんだ……かなしい」という気持ちは残ったままでしたね。
ドイツに関して博識であるという訳ではないのですが、あのお国の「合理性」にはとても惹かれるものがあります。
綺麗に整えられた民家、ビール1杯のmLを規定して店ごとに差が出ないようにするという徹底ぶり。
日本に次ぐ高齢化が起きているにもかかわらず、福祉によってなるべく不便をかけさせないようにしようとする計らい……。
そうした「人間的」な営み、情動的で恣意的で破滅的なはずの人の生活が、「合理性」という数学的で科学的な仕組みによって、日本よりもずっと上手に支えられています。
まずその点に、私は憧れを抱きました。科学的であり人間的であるという点において、アクロマさんへの憧れにも共通する部分と言えるかもしれません。

ただ、そのようなドイツにも残忍な歴史があります。ヒトラーを筆頭としたナチスドイツによる、大量虐殺の歴史です。
ヒトラーの思想に共感するつもりはありませんが、彼のあの残忍性は、ドイツのお国柄である「合理性」のたかが外れてしまったもの……と、捉えられるような気がします。
私が憧れ、私を魅了したあの合理性は、人間的な営みを支えも殺しもするのだと、知りました。
私はあの歴史を思い出す度に、生きるということ、人間的に生きるということがどれほど奇跡的で致命的なことであるのかを、感じさせられます。

ドイツにある、アイシュヴィッツをはじめとする強制収容所から生還した、かの精神科医、フランクル大先生。
彼はドイツ人ではなくオーストリア人ですが、ドイツと聞くとやはり彼のことを思い出さずにはいられません。
「夜と霧」「それでも人生にイエスと言う」「死と愛」「意味への意思」等々、彼の著書を6冊ほど漁って読んでしまう程度には、私は彼を崇敬しています。
彼が本の上で為してくれた授業は、とても正しく、ただただ正しく、人間的で、誠実です。
その誠実性に、たまに裁かれているような心地を抱くこともありますが、それでも彼の授業、彼の文字、彼の言葉は何度でも私を呼びます。
諳んじることのできる程に感銘を受け、何度も何度も読み返した彼の言葉が、幾つかあります。
ここで紹介することは控えますが(文字数の関係で)、どれも私、そして雨袱紗に生きる彼女達を時に支え、時に裁いてきた、大切な言葉達です。

他にも、大学での第二外国語としてドイツを選択し、その発音に惚れ惚れしたとか、
ゲーチスさんの名前の由来がドイツ語の「ソ」と「ド#」であるとか、ドイツへの思い入れは本当に色々とあります。
……どうしましょう。知りたいですと書いていただけたことで益々調子に乗って、あまりにも長々と書いてしまいました。うんざりされていないといいのですが……。
何はともあれ、ドイツの芸術は勿論のこと、生活観や歴史に私は心惹かれています。
良くも悪くも人間的で科学的であるドイツに、行けることがあるならいつか行ってみたいですね。

さて。
イチさんのこと、お聞かせくださりありがとうございます。
何度も、読み返しました。
どのような言葉を差し出すのが適切なのだろう。他の誰でもない私だけに言える言葉が何か、あるのだろうか。
そんなことを考えつつ、けれども結論が出ないまま、こうしてキーを叩いています。
けれどもまずは、ご自身のことを開示するという選択をなさった貴方の勇気に、その相手に私を選んでくださったことに、心から感謝いたします。
ありがとうございます。

このやさしくない、ままならない世界、私達がどう足掻いても一生逃げることのできない世界。
その世界に対する「恐れ」はもっともなことであり、私もまた少なからずそれを抱いている人間です。

ご知人の方が「海外に出たほうがいい」と仰ったのはきっと、イチさんにとっての「ままならない」原因が、
日本に、お住まいの地域に、そしてイチさんの……ご家庭に、あると推測なさったからなのだと思います。
日本や地域や家族の干渉を受けさせない場所として、海外は理想の場所であると私も考えます。
そうはいっても、イチさんのこれまでは決して、嫌なことばかりではなかったはずです。
楽しかったこと、嬉しかったこと、それらの思い出がたっぷり詰まった故郷を離れるという行為にはきっと、得も言われぬ喪失感が伴うことでしょう。
きっとそのようなこと、ご知人の方も承知していると思います。承知の上で、それでもご知人にとっては、イチさんのことが他の何よりも大事であった。
……だからこそ、海外に出た方がいいとも、一緒に暮らそうとも、告げることができたのでしょう。
並みの想いで告げられる言葉ではありません。素敵な方に、出会えましたね。

「まっとうな家族」とは難しいものです。
誰しも「夫」「妻」「父親」「母親」になるのは初めてのことであり、教科書にも自己啓発本にも、そのマニュアルは記載されていないからです。
厚生労働省・文部科学省・農林水産省が合同で「食生活指針」を大きく改定したのは2016年のことですが、このような「指針」が家族という関係にはありません。
国も、県も、市も、誰もきっとその答えを知りません。
知らないから、父や母という人種は手探りで進むしかないのだと思います。
間違っているかもしれない、いけないことなのかもしれない。そう思いながら、その不安を抱えながら、子育てをしてきたのだと考えます。

母になったことのない私が、家族を作ったことのない私が、イチさんの家族を査定することはできません。
けれどもイチさんが苦しんでいることは分かります。お辛い思いをしてきたのだということも、分かります。
幼い頃に常習化してしまった「諦念」が、どれほど人の心を殺ぐのかということも、分かっているつもりです。
そして、親御さんが作り上げた家族の形から解き放たれてしまった今、その家族の形しか経験していないイチさんが混乱するのはもっともなことだと、思っています。

……けれど、ごめんなさい。正直に書きます。
私は混乱しているイチさんを正しく導くことができそうにありません。
どう導くのが正しいのか、どのような道を提案するのがいいのか、どのような言葉であればイチさんの憂いが軽くなるのか。
カウンセラーの資格も持たず、親になったことのない私には、……いえ、きっと親になってからも分からないままでしょう。
貴方の最善を、導き出すことがどうしてもできません。本当に、申し訳ありません。

けれども、その「カウンセリング」でイチさんが耐えられない思いをされているのであれば、私はそのカウンセラーさんにできないことを、します。
【人間社会が好む他者との結びつき】を、無理からに作る必要は全くありません。
【人間社会で確立された己】を【強要】されることを、受け入れる必要だってきっとありません。
社会が大好きな飲み会や食べ会に勤しんでいる中、真っ先に帰宅して一人でジュースないしお酒を飲んだっていいじゃないですか。
折角のアフターなのですから、自分の最もリラックスできる手段を取ったっていいじゃないですか。
人間社会が貴方をどう言おうともどんな非難を受けようともどのように貴方を導こうとしたとしても、それに縛られることを受け入れなくたっていいじゃないですか。
非難に傷付くことはきっと避けられないけれど、でもその非難に従順になる必要なんて、きっと、ないんです。

私はこうしてパソコンに向かっている時間が一番好きです。キーを叩きながら画面を見て、自分の編んだ言葉を読んで、その言葉が誰かに届くことを祈る時間が大好きです。
勿論、それだけでは生きていかれないから、ある程度世間に馴染んだ「ふり」をする必要があります。「ふり」をしていれば、ある程度良識のある大人に見えるのです。
けれどもその「ふり」の内側にある心は誰にも縛れません。
たとえ強要された飲み会に出て、楽しんでいる「ふり」をして愛想よく振舞ったとしても、
心の内にある「楽しくない」「早く帰りたい」という思いは誰にもコントロールできず、その思いを非難する権利は誰にもありません。

だから【己を強要されたくない】【他者との結びつきにもいい思い出がない】という思考を、私は非難しません。否定しません。尊重します。大切にします。
似た思いを持つ人間として、貴方の思いに共感します。貴方からのメッセージを楽しみにする一人の人間として、貴方のことを大切に想います。

イチさんのお気持ちを楽にすることはできなかったかもしれません。余計に想い悩ませてしまうような、至らない言葉が混ざっていたかもしれません。
けれど万が一、私を信用してくださり、これからもこうしたお話を続けていきたいと思ってくださった場合のために、一つ、提案させていただきます。

こうしたプライベートな会話を、万人が見ることのできるお返事ページに記載されてしまうことが少し嫌だ、と思われたことがあるかもしれません。
今回、そうしたプライベートな会話を第三者に見られない場所で行いたいという方のために、また何より私のために、鍵付きの交流場所を作成いたしました。
もしご希望があれば、イチさん専用のページ(電子交換ノート、と名付けています)を作成することができます。
どのような仕組みでセキュリティの強化を行っているか、という点については、そのページを置いてある隔離サイトに詳しく記載してあります。
当サイトのメニュー欄から「Search」にある不思議なリンク先に入り「wis1031」(3/13現在のパスワードであり、随時変更する予定です)を入力してください。
かなり赤文字の目立つ煩いサイトですが、交換ノートだけ使用してくださる分には他の項目は読み飛ばしていただいて大丈夫です。
メニューの「Sharebook」に説明があります。もしご希望がある場合は、そっと覗いてみてください。

長くなりましたが、今日はこれにて。
またお話、できることを願っています。

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