2/18、優風光さん

こんにちは、優風光さん。
前回の私の、無遠慮なお願いを聞き届けてくださり、本当にありがとうございます。
私の平穏と不穏は誰しも持ち得るものであるというお言葉に、ああそうだった。それが生きているということなのだと改めて認識いたしました。
私は生きています。書いています。貴方のおかげでこれからも、そう在れそうです。

Methinks、早速お読みくださったのですね。
あの、あまりにも短く淡々と進んでいった10話分、けれども本編中の時の流れを正しく見るならば100年弱。
その「呆気なさ」をどのように表したものかと、当初は随分と悩みました。

「貴方なんか! 私が眠ればすぐに死んでしまうような存在のくせに!」

そのために、時を流すふりをしていたフラダリさんではなく、時を流すことを忘れたシェリーにこそ、この呆気なさを自覚・描写させる必要がありました。
その呆気なさを【一連の流れが、軽い。あまりにも軽すぎて、それに薄すぎる】と表現してくださったこと、嬉しく思います。
本来なら決して喜んではいけないはずの、自らが執筆した物語に対する「軽い」「薄い」というお言葉ですが、私は今最高にハッピーです。
何故ならその軽さと薄さこそが「一瞬」であるということを端的に表しているのですから。
貴方がお気付きになられたその呆気なさこそが、私の最も表現したかった「永遠が一瞬になる話」であるということなのですから。

ちなみにシェリーがこの台詞を紡ぐことが叶った要因をいくつかこれ以前に散りばめているのですが、その最たるところが9話の、

『誰なの。誰がシアをこんな風にしたの』

であり、問いかけるような文になってこそいますが、その「誰」をシェリーはちゃんと分かっています。
シェリーです。彼女が、シェリーこそがシアをあのようにしました。
シェリーが眠ることで何年・何十年という単位で時が流れ、その結果、死は平等に彼女を知る人間を飲み込みました。

そうした【時の流れが残酷】であるさまを、11話からしばらくは、シェリーもフラダリさんも「祝福」として楽しみます。
けれどもいずれシェリーは「世界の、皆の時はこんなにも進んでしまっているのに、私の時はあの日からずっと止まっている」ということに気付きます。
そのことにどうしようもない虚しさを覚えた彼女は、300年後程度のあたりに開発されたちょうすごい機械(SF知識の不足が悔やまれます)を借りて、
失われた時、彼女自身が殺してしまった時を取り戻そうとするのですが……。

というのが、第二章の流れです。
素数に拘ってしまった以上、どうあっても41話で完結に持っていかなければいけないため、プロットは既に最終話まで組んでいるのです。
【3分の1の永遠を渡り歩いた先】にあるものについては、本当に、本当にささやかなものです。
これも既に設定してあるのですが、流石に、まだ書くべきではないことでしたね。

それから、していただいたご質問を受けて、ちょっとだけ、シア関連の家系を説明いたします。

まず、木犀でも樹海でも躑躅でもMethinksでも、シアはアクロマさんと結婚し、子供を一人育てます。
この子供が「やさしくありませんように」に登場する「お姉ちゃん(シーダ)」であり、Methinks6話にてセキタイタウンに花を手向けに来た女性です。
木犀ルートではあれ程までにシェリーを憎んでいた彼女が、和やかにシェリーと会話をする様子、とても楽しく書かせていただきました。

さて、その「お姉ちゃん」が結婚するのが、クリスさんとアポロさんの子供です。
「躑躅」にて妊娠していたクリス、その子供は両親の色をそのまま受け継いで生まれてきます。
この段階で「お姉ちゃん」は金色の髪に海色の瞳、クリスさんの子供は空色の髪に空色の目。
その二人が結婚して生まれた子供が、9話にて「貴方がシェリーさんですね?」と尋ねた男性です。
この男性、海の目をした男性としか描写していませんが、髪は空色です。
3世代を経てようやく、空の色と海の色が一つになることが叶った……とかいう、裏設定を楽しく書かせていただきました。

9話にてそんな彼の更に子供が「この前亡くなったのは、未来が見える方のおばあちゃん」と口にしていますが、これがクリスさんのことです。
彼にとってはクリスさんもシアも等しく「おばあちゃん」であり、この女の子にとっては等しく「ひいおばあちゃん」です。

そして【この世界線でのシーダお姉ちゃんは果たして「あたし」と出会っているのか、親友であるのか】という趣旨の疑問についてですが……。
まず、シアはMethinksで「死んだ」と思われたカロスの英雄、彼女の親友のことを本には書いていません。
そんなことをせずとも、カロスの人々は彼女の栄光をいつまでも覚えていたからです。
ただ、シアが本を書いたか否かは、アルミナとズミさんとの出会いには何の影響も与えません。
故に二人の間に「あたし」は確実に生まれていますし、シアとアクロマさんの間にもシーダがいます。

そしてシーダは木犀ルートでのようにシェリーを憎んでカロスに移住するのではなく、シェリーの栄光に焦がれる形でカロスへ移住します。
シーダにカロスへの鬱屈した感情がない分、シーダと「あたし」が心を許し合える関係になるまでの期間は、おそらく木犀ルートよりもずっと短いでしょう。
二人は「頼りない母親を持つ」という点においてとてもよく似ているので、気が合うことは間違いありません。
いつ出会うのか、どのような馴れ初めなのか、といった設定はしていませんが、同じ町にいれば確実に出会います。仲良くなれます。

……ただ、これは個人的な想いですが、二人が最も強く、互いをかけがえがないと思うようになるのは木犀ルートだろうなあ、と思っています。
鬱屈した感情がある方がいい、というのもおかしな話ですが、あの祈りを基盤に構築された友情こそが、二人にとっては最上のものでした。

最後に、翌日に寄せてくださった追記へ。
優風光さん、素数の世界へYO・U・KO・SO(はぁと)
それから「こころがむりです」も使いこなしてくださりありがとうございます。
私としては、優風光さんという素晴らしい素数仲間が出来たことで興奮が冷めならぬことになっていてこころがむりです、と、使わせていただきたいですね。

では、ありがとうございました。
またお話、しましょうね。

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