(あらすじ:たった1万字の物語の展開を一ミリの狂いもなく言い当てられてしまった痴れ者は、一夜明けた本日も相変わらず狂っていた)
うっあああああちょっと! ちょっと昨日の衝撃がまだ冷めやらぬから吐き出しておこうと思うのだけれどね! やっぱ悔しいわどちゃめちゃに悔しいわ! なんだよなんでそんなピンポイントで言い当ててくる!? なんで!? いやほんまに悔しくて悔しくてアズール・未来予知・クヤシスギングロットになるんやけれども! しかも思考回路がそのまんまなんや! 最後に取り上げてもらうとしたら「何が一番辛いかなあ」って! 「何が一番辛いかなあ」!? 「何が一番辛いかなあ」!? そうだよ私もそうやって! そうやって考えたんだよなあ! その発想を序盤で引き出してしまう段階であの展開は平々凡々、欠陥があると言わざるを得ないし、それによくよく考えたらそれを失うパターンって私一度書いていたんですよね、しかもよりにもよってあいつで。駄目じゃん二番煎じじゃん! やっちまった! ほらぁそういう詰めの甘さが露呈していくからほらぁ! だから違うんだってばオクタヴィネル寮の廊下はマリンチューブではないしアズール・アーシェングロットはゲーチスさんではないんだってば! ちゃうねんちゃうねん!
だからそういう! そういうの全部含めて読まれたんだ! あの物語は負かされている、読み負けているんだ! そりゃあたかだか1万字のシロモノだけどさ、でも序盤でそこまでの予測が立ってしまったらさ、後半に目を通したときの「なーんだやっぱりか」っていう感覚をさ、抱かせてしまう訳でさ! それって損失じゃん……こんなん「はいはい予定調和」みたいな感じでがっかりさせてしまうじゃん……要するにジェイド・リーチじゃん! 奴の嫌いな予定調和じゃん! それじゃあいけないんだよ! 申し訳が立たないだろうが! 結局クヤシスギングロットじゃなくてフガイナサスギングロットなんだよなあ! あー! もうやだー!!
……いやもう落ち着けって。
いやでも名前も顔も知らない赤の他人から「はいはい予定調和、どうせあれでしょ知ってるから」みたいに言われただけだったらきっとこんな風に盛り上がったりしなかったろうな。ツマラナイ作品であなた様のお時間を奪ってしまい申し訳ありませんでしたと謝罪すればいいだけだもんな。ごめんなさいで線を引けばいいだけだもんな。そうして静かに自己内省を行った後に静かに淡々と改善していけばいいもんな。
でも違う、違うんだ。そんな穏やかなもんじゃなかったんだ昨日のは。このサイトに何年もかけて散りばめてきた何もかもをもしかしたら私以上に熟知してくだすっているかもしれない、そんな相手にそっと差し出した新ジャンル一本目の1万字、その展開を、嫌味でも何でもなく本当に楽しそうに「何が一番辛いかなあ」って考えてくれて、完璧な回答が間を空けることなくすっと飛び出してこられてしまった……だからこそこんなにもクヤシスギングロットなんだよなあ。でもそれと同時に「流石、分かってる。私のこと、私の物語のこと、貴方はみんなみんな分かってる」という「事実」に私はこの上なく救われてしまっているからめっぽう面白いんだよなあ。
この物語、編み手としては大失敗で、欠陥品で、失格の烙印を押されるべきシロモノなのかもしれないけれど、でもそんな失格の烙印に編み手ではないただの人間としての私はとても許された気分になってしまったんだよ。こいつを書いてしまったことによって私がずっとずっと味わってきたはずの幸福な被理解が暴力的な鮮やかさで透けて見えてしまって、ああこれだからきっと私はこれからも書こうとするし生きようとするのだなあと分かってしまったんだよ、昨日。
だって次こそ「そう来たか」って思ってもらいたいじゃん! CCCみたいに思ってもらいたいじゃん! 勿論これは昨日に限ったことではないけれどさ! 誰が読んでくださる場合もそうだけど「はいはい予定調和」と思わせるような代物にはしたくないじゃないのであってさ! でもそういう代物にはしたくないっていう思いを「匿名の不特定多数」にだけ抱くとそれはただのプレッシャーだけれど、いや勿論プレッシャーだってすこぶる大事だけれど、でも特定の人物の顔と名前と具体的な敗北例がぱっと浮かんでくるだけで「ウオォッ見てろよ次こそ驚かせてやるんだ!」ってこう、前向きな気概になるじゃないですか。プレッシャーは背筋を正してくれるけど、前向きな気概に化けたやつってのはそんなもんじゃ収まらないよ。その熱量ってのが私の背中を押して手を引いてくれるんだ。できるまで待っていてくれるんだ。そうだと信じられる相手によりにもよって「読み負かされた」からこそこんなにも悔しくて楽しいんだ。そういうのをフランクル大先生の言葉では「生きる意味」っていうんですよ知ってる?