綺麗な文章の形にできそうにないので、箇条書き

・たった3か月でなんで髪染めるのやめてしまってるの? たった3か月でなんで買い物に行けなくなってるの? うそやん3か月前は一緒に買い物に行ってマシュマロ買ってたじゃん。買い物カート押して広いスーパーちゃんと回れてたじゃん。なんで? たった3か月だよ、こちとらあの(不適正)みたいな治療まだ2サイクルしかやってないんだよ、まだ4サイクルあるんだよ。だのになんでこんなに変わってしまっているの、なんでそんな疲れ果てた顔で(不適正)のこと尋ねてくるの。親不孝みたいじゃん。私のせいじゃないんだ。(不適正)は私のせいじゃない(不適正)の異常のせいでこうなっているだけなんだ。でも3か月音沙汰なくしたのはほかならぬ私だ。人に会えなくなったのは私の心理のせいだ。誰だ、誰が祖母をこんな風にした。いや分かってる、分かってる。祖母をこうしたのは3か月という時間であり、その時間を「不在」という不誠実で濁したのはこの私だ。私がこんな風にした。

・根掘り葉掘り聞いてきたのは祖母の方ではなく実母の方だったんだけどさ、医療に理解がある人であるだけまだよかったという感じ、繰り返し説明する手間が省けるからね。それ以外はほんまに最悪。血栓症を誘発するような白い魔弾AKの話から始まってさ、長々とさ、何が楽しくて3か月の地獄を再生しなきゃいかんのだ? 馬鹿か? あなた方の懸念や不安や恐怖や絶望なんてのは私が3か月前になんとかやり過ごしてきたものばかりだ。それを慈愛のまなざしで掘り起こされちゃたまったもんじゃない。

・そっかこの方々には私が今やっている治療が「いやなこと」「不適切なこと」であるという認識がないんだった。そこからか。……そこからかー! 治療に携わっている医師の方が発言した「神様」の話からしなきゃいけなかったかー! いやー失敗失敗。でも懇切丁寧にその神様の話を説明したところで「それは違うよ」と飛んでくるだけだった。そういう意味でお医者さん言ったんじゃないと思うよと、まあ丁寧に解説付きで反論ショーダウンしてきやがった。やられた! 完敗! なんで打ちのめされなきゃいかんのだこのやろう。でも「それは違うよ」が飛んでくるだけまだいいのかもしれない。家族に話しても断罪されるだけだから。あのお方は正しいか正しくないかの木槌を下ろすばかりで、正しい認識へと考え直すための心の落としどころみたいなのを何にも示してくださらないから。「そうとしか考えられない君が悪い」としか、仄めかしてくださらないから。いやそんなこと言ったら「いや貴方の(不適正)が正しくないから今こんなことになっているんですけれども?」ってさ、ド正論投げつけることはまあできなくはないんだけれど、ただそれを口にする気はない。今の私に木槌はちょっと重たすぎる。振り上げられない。

・注射の回数、手術の内容、薬の種類と回数と頻度と副作用、ひとつ話す度にぎょっとするのちょっと面白かったな。特にあの白い魔弾AKのカードを見たときの反応よ。医療従事者があの顔するってよっぽどだったんだね。そりゃあそうか毒飲んでいたようなもんだったもんなあれな。処置が遅れたら最悪死ぬこともあるみたいなものを21回分もほいほい渡しちゃいかんよな、たかが(不適正)のためにさ。

・腫れ物に触るように目線合わせてくるじゃん。どうしたの、そんな、まるで怪物が現れたみたいなさ。見おぼえない? 貴方の娘ですよ。

・今年の夏食べられなかったブドウ、凍らせた状態のものを一粒だけ貰った。美味しかった。
・弟が帰り際にひょこっと現れて、つい先日購入したとかいう香水を手の甲に吹きかけてきやがった。やめろ、生と死と命の話をしているときにその香りはいちばんよくない。なんでよりにもよって金木犀なんだやめろ、今年その香りは特に私に効くんだよ。

 まあ不快感とか苛立ちとか悲しみとかは想定の範囲内だったからよかった。それはまあよかった。でもたった3か月の不在、たった3か月蔑ろにした身内の縁がこんな事態を招くとは思っていなくて、特に祖母の変貌ぶりに私は愕然としてしまった。2週間に1回、買い物の介助のために顔を出すだけだったのだけれど、足が不自由になりつつあった祖母にとってあの時間ってかなり大事だったのだな、と気付かされてしまって……。いやでも気付いたからといって7月から9月にかけて車40分かけて介助に行けたかと言われればあの魔弾・注射地獄のボロボロの体でそんなことできたはずがなくて……。でも、なんて馬鹿なことをしていたんだろうって本気で思った。現れ出るかどうかも分からん命に躍起になってさ、子供の頃ずっとお世話になってきた人の命を蔑ろにしてさ、その結果がこれだよ。ほんと馬鹿みたいだ。何をやっているんだろう私は。嫌なことを言われても、傷付いても、自尊心を大きく損なうようなことがあっても、情緒をぐちゃぐちゃにされて相手を憎いとさえ思うようになったとしても、それでも、会いに行くべきだった。今まで生きてきた人達の縁を取りこぼすべきじゃなかった。そんな人達を蔑ろにしてまで薬を浴びるべきじゃなかった。新しい何かを望むべきじゃなかった。馬鹿だ。本当に、どうしようもないことだ。

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