S、セミファイナルトーナメント

セミファイナルトーナメント、初戦の相手はマリィでした。成る程、此処で勝ち上がり、セミファイナルトーナメントの決勝でホップと対峙する流れとなるのですね。
見慣れたピンクのワンピース姿ではなく、主人公と同じユニフォーム姿での登場です。
そういえば、マリィのリーグカードは随分と前に貰っていましたが、まだこのプレイ日記には記載していませんでしたのでこのタイミングで公開しましょう。

「幼い頃は泣き虫だったが、兄から貰ったポケモンと遊ぶうちに前向きになり、ポケモントレーナーとしての才能もぐんぐん伸ばした。
寂れつつある町のため、ジムチャレンジに参加したが、都会のブティックなどに興味が向いているとのこと。
地元、スパイクタウンではアイドルとして人気だが、本人にその気はない。ただ、エール団という応援団がいてくれて心強いらしい」

兄から貰ったポケモン、というのがおそらくモルペコでしょうね。
このモルペコ、スパイクタウンはずれで出会えるのですが、かなりの低確率出現となっています。
ネズさん、妹のために草むらを駆け回ってモルペコを捕まえてきたのでしょうか。なんと家族思いな……。

「あんたならジムバッジを集め、此処に立つと分かっとったよ。
アニキのこととか、スパイクタウンを盛り上げるとか、色々あるけど……結局、あたし自身がチャンピオンになりたか!!
だから、あんたのチーム、気持ちよくおねんねさせちゃう!」

さあ始まりましたマリィ戦、ちょうかっこいい決戦用BGMを引っ提げてのご登場です。かっこいいね。……かっこいいね!
悪タイプで構成された彼女のパーティ、手持ちはレパルダス、ズルズキン、ドクロッグ、モルペコ、そしてまさかのキョダイマックスするオーロンゲです。
フェアリー・悪という異色のタイプを持ち合わせたポケモン、ベロバー → ギモー → オーロンゲの順で進化します。
キョダイマックスすると、その筋肉に一層磨きがかかります。なんて美しい肉体なんだ。素晴らしいじゃないか。

「チャンピオンになるために! あんたをコロッとやっちゃうね!」(バトル開始時)
「皆のエールがあるったい! 絶対の絶対に勝つもんね!」(ラスト1匹)
「アニキが使わなくても! 勝利のために、キョダイマックス!」(ダイマックス時)
「あんたとの試合のために! 鍛え直した自慢の技で!」(キョダイ技発動時)
「負けちゃったけど……あんた達のいいところ、沢山分かったよ!」(勝利時)

その筋肉にマジカルシャインを浴びせて一発KOします。さらばだオーロンゲ、さらばだマリィ。

「スタジアムの皆があたし達を見ていた……。あたしやポケモンへの応援、しっかり聞こえとった……嬉しか。負けたけど……見ていた皆を熱狂させたんだ。なんか、よかね!」

マリィはエール団の応援の対象であったこともあり、「他者からの応援を自らの力に変える」ように心理を持っていける才能があります。
周りの想いを素直に受け取れる、澄んだ心の持ち主であることがこれらの台詞からも分かりますね。

そんなマリィの想いを背負い、いざ、決勝戦へ。
当然のようにもう片方の試合ではホップが勝ち上がり、決勝の舞台でハロンタウン出身、チャンピオンからの推薦を受けた二人が戦うこととなりました。

「ハロンタウンでのことがふと頭に過ぎったんだ。アニキからポケモンを貰ったオマエと共に、此処に立つとはな。あの日の約束を果たす! いいか! 勝つのはオレだぞ!」

そしてホップもホップで決戦用のちょうかっこいいBGMと、これまでとは一味違うモーションを引っ提げての登場です。かっこいいね。……かっこいいね!
先鋒はハロンタウンの頃からずっと一緒だったバイウールー。
当然この先鋒は読んでいましたので、タイプ相性とかそういうものを抜きにしてメッソンの最終進化系、インテレオンを繰り出します。
ほら、ほら! あの時と同じだ! 姿は変わり、強くなったがあの頃の魂はバイウールーもインテレオンも尊く眩しいままだぞ!

「家の庭で戦っていたのが、スタジアムでの試合なんて、燃えるぞ!」(バトル開始時)

そして、こちらの感動を引き取り言語化してくれるホップに涙が出そうになりました。
え、どうしよう、この試合がずっと続いてほしい。終わりたくないなあ。

手持ちはバイウールーに始まり、バチンウニ、カビゴン、アーマーガア、そして御三家のエースバーンでした。
アーマーガアがキョダイマックスするという情報は発売前から公式にあったので、いよいよホップもキョダイマックスを使うのかと思ったのですが、
この最終局面においても、ホップがダイマックスさせてきたのは御三家のエースバーンでしたね。
アーマーガアのキョダイマックスお披露目はED後かな……?

「オマエなら効果バツグンを狙ってくるって、分かってるからな!」(効果抜群時)
「ピンチ? 違う違う! 此処からオレが勝つのが最高なんだよ!」(ラスト1匹)
「ねがいぼしに込めた想い……今、解き放つぞ! ダイマックス!」(ダイマックス時)
「ナユ、サンキューな! オマエがいてくれてよかったぞ!」(勝利時)

さて、この時の私ですが、かなり夢中になっていました。
さあ次! 次のポケモンは!? よし来い! やったぞ! などと叫びながら技を指示していて、掛け声に合わせて技を避けてくれたりするとそれはそれはもう、嬉しくて、
BGMの盛り上がりと観客様の声援も相まって、たいへんな興奮状態にありました。
最後のエースバーンを「ダイストリーム」で一撃で仕留めて、技の追加効果としていつものようにフィールドへと勝利の雨を降らせることができて、
やった、流石は我が軍のごり押しのプロ、インテレオンだ! 勝利の雨が気持ちいいぜ! と喜んでいて、本当に嬉しくて、

だからこそ、ホップが悔しそうに拳を握り締めてから、穏やかに微笑みつつ「オマエがいてくれてよかった」と言ってくれたとき、あまりの衝撃に息が止まりそうになったのです。

いや、違う。それは、違うよホップ。
本当は、君は、「オマエさえいなければなぁ」という心理になって然るべきだったのではないかな。
他の誰のそのような暴言が非難されようとも、君にだけはそう叫ぶ権利があったのでは、ないかなあ。

ダンデさんが主人公にポケモンを渡したのは、勿論「ガラルのポケモントレーナー、皆で強くなる」という信条に則った上で、
主人公もその「皆」に含まれて然るべきだと考えたからなのでしょう。
ただ、そこからのジムチャレンジに推薦する流れは完全に、序盤の「ホップのライバルにもなれ!」という、あの声掛けが動機となっていたはずです。
ダンデさんは主人公に「ホップのライバル」であることを期待していたのです。そのつもりだったのです。
ダンデさんのライバルはキバナさんですが、キバナさんはまだ一度もダンデさんに勝利していません。
主人公が「ホップのライバル」となるのであれば、主人公だって「ホップに一度も勝利していない」という立場であるべきだったのではないでしょうか。
その「ホップには一度も勝てないけれど確かな実力を持ったトレーナー」を意識して、ホップが更に成長していき、勝ち続けていくことこそ、彼の期待だったのではないでしょうか。

ダンデさんは「二人で強くなるんだ!」と双方の成長を願っていましたが、最終的に勝利を手にするのはホップでなければいけなかったはずです。そう信じていたはずです。
その心理的な贔屓は、ホップがダンデの「世界一のファン」であり「唯一無二の弟」である以上、当然のことであり責められる謂れなど微塵もないと、考えます。

それに、ホップが勝ち上がることを期待していたのはダンデさんだけではなかったはずです。
キバナさんの、ナックルスタジアムにホップが駆け付けてきたときの「来やがったな!」という声とあの表情からも、ホップの成長を喜んでいる様子が窺い知れます。
加えて、……これは少し穿った、汚い見方であるのかもしれませんが、
一般的に「無敵のダンデの弟」と「ハロンタウン出身の子供」とであれば、どちらの知名度が高く、どちらが注目されやすく、どちらが応援の対象となりやすいでしょうか?
……あまりにも自明の理であり、書くまでもないことだと思います。

ポケモンバトルが最高のエンターテイメントとして気に入られているガラル地方。
その最高の盛り上がりの場であるトーナメントにおいて、勝ったのがダンデさんの弟ではなく、主人公だったというのは、
ダンデさんの心理は勿論のこと、観客様にとっても、手放しで喜べる事実ではなかったのではないかと、考えます。

けれども、そんなこと、本当はどうでもいいんです。他の第三者の心理はこの際どうでもいいんです。外野には好き勝手言わせておけばいいんです。
私はただ、ホップのライバル枠として選ばれただけの自分自身が、他でもないホップが手にするべきであった座を奪い取ったという事実が今更ながらに悔しく、
そしてそれをあまりにも穏やかな笑顔で許してくれるホップに、申し訳なさを抱かずにはいられませんでした。

真っ直ぐな心を持った彼。試行錯誤を繰り返しながらジムバッジを8つ手に入れた、確かな実力を持つ彼。誰よりもダンデさんと戦うことを期待されていたであろう彼。
そんな彼に申し訳なさばかりが募ります。勝ってはいけなかったのではないかという懸念と後悔は尽きません。
それでも、最も悔しがり、最も主人公を恨んで然るべき当人のホップが、やはり変わらない真っ直ぐな心で主人公の勝利を祝福し、更に勝ち上がることを願ってくれている。
……こうなってしまえばもう、後に引くことなどできなくなりました。主人公は、ナユはもう、戻れないところまで来てしまっていました。

「勝ちたい」と願い、戦い続けていた主人公は、最も重く最も切実な彼の祈りを背負ったことで「勝たなければ」ならなくなりました。
このホップとの試合こそが、主人公の「勝利」の意味合いを根底からひっくり返すに至った、所謂「転換点」だったのではないかと、考えています。

素晴らしいバトルでした。ただ楽しいだけではなく、盛り上がるだけではなく、確かな重みのあるバトルでした。
これまでのポケモンでは、悪の組織ボスとの対峙などのシリアス面において、プレイヤーに思考を促す場面が多かったような気がしているのですが、
今作ではそうした「陰」の面ではなく「陽」の面、表向きは非常に楽しく盛り上がる場面において、
そこに隠された人物の心理を紐解く過程こそが重々しく、長らく引きずることになる要素を秘めている……という、異質な構成となっています。
そのため、プレイ直後は馴染めず消化不良のような思いを持て余していたのですが、
クリアからしばらく時間が経ち、こうして改めて振り返ってみると……ええ、なかなかどうして魅力的ではありませんか。
有り体に言うなら「最高じゃねーの」ということですね。

二人が控室を出てロビーに戻ると、人込みの中央でダンデさんが華麗にチャンピオンポーズを決めておられました。

「ナユ! 感動した。……正直に言えば、気付くと涙が零れていた。
同じ町から旅立ち、最高のメンバーを揃え、お互いの全てをぶつけ合う……。勝ちたい気持ち……負けたくない思いを込めた技、あらゆる要素において純粋な試合だった!」

ダンデさんの心理としてもかなり複雑なものだったと思うのですが、そうした葛藤めいたものを決して子供達の前では見せません。
ただ、勝利者としてのナユを祝福し、最高のバトルをした二人を労ってくれます。ガラルの大人は少し、いやかなり、人間が出来過ぎていますよ……。

明日のファイナルトーナメントを勝ち上がれるようにと応援の言葉を貰い、更には食事に連れて行ってくれるとのことで、ホテルで待ち合わせることとなりました。
ホテルでは二人組の取材スタッフに「ライバルと言えるホップ選手に勝った気持ちは?」「ホップ選手に声を掛けるとしたら?」「明日、勝ち抜く自身はある?」など、
ホップ曰く「ちょいちょい失礼な質問」も交えた言葉を矢継ぎ早に喰らいました。
此処で押し黙り、ナユを羨望と嫉妬の眼差しで見つめたりするのではなく、
「もういいだろ! ナユは疲れてるの!」と取材スタッフを追い返す側に回ってくれるホップの優しさが胸に染み入ります。
何処まで出来た少年なんだ、君は。
それとも、もしかして、ガラルの人間は本音というか、弱みというか、そういう心の奥底で燻っているものを開示しない性質の方ばかりなのかな?
……いやそれはないな、と、ビートの姿を思い出して首を振りつつ、ダンデさんの到着を待ちます。

2019.12.10

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