セイボリーの「らしさ」の捨て方はアクロマさんのそれに似ている

 原作のアクロマさんもちょっと変であることで知られていますが(もう少しマシな言い方なかったのか)、SMおよびUSUMにて彼とバトルツリーで戦う際の発言と、BW2での4番道路での発言、こちらをまあご覧になってくださいよ。

・バトルツリーにて「うれしい!」
・4番道路にて「くやしい!」

 これだよ。これなんだよ。彼の理知性をもってすればそうした自身の情動なんてもっと流麗な言葉でつらつらと表現したってよさそうなものなのに、あるいは表現力に乏しくとも科学的なワードとか散りばめてもっと彼らしくその心情を吐露することだってできるはずなのに、それでも彼はよりにもよってこんな、たった一言の叫びを選んでいるんだ。理知性とか無機質性とか科学性とかそうした「らしさ」を悉く捨てて主人公にこうして思いの丈を吐き出してくるんだ。しかも平仮名で! どうなってんだよもう貴方という人は! 好きだ!(?)

 あと彼はこういう興奮状態のときにも「らしさ」を捨てる傾向にありますが、BW2のED後などではそうしたハイテンションを削がれた状態での彼とも会話ができます。「わたくしもこれから何をすべきか決めかねている」「世の中には答えなどない問題の方が多い」など、知的好奇心の荒波がすっかり凪いでしまった彼との会話というのは、とても穏やかで淡々と、進むんですよね。このシーンを当時(BW2発売当初)の私は「研究ではない部分の話題であれば、この人はとても穏やかだ」などと都合よく解釈してしまい……それ故に、基本的に、当サイトのアクロマさんは原作よりもかなり穏やかで、冷静で、紳士的です。
 有機質性と無機質性の間にピンと糸を張り、そこを綱渡りして楽しんでいるところのあるような人。これが現在のアクロマさんにおける印象です。基本的に彼は「楽しんで」いる、というのが原作の彼に見られる傾向ですね。
 ただそんな彼を「書く」となってくると、彼にどなたかを想っていただく必要性が出てくる。かけがえの誰かをこよなく想うという行為は基本的にあまり「楽しめない」ものです。そのためこの場合、彼は自らの性質を綱渡りする余裕などない。つまり性質は「有機質極振り」となります。逆に「無機質極振り」となっている彼の短編も書いたような気がしますが……上手くいかなくて悔しい思いをしたのだっけか。

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