行ってきました、人形浄瑠璃の工房跡

 以下、興奮した私の乱雑なメモです。ポケモン一切関係ありません。関係ないです、ええ、今のところは。

・淡路島で発生した「文楽」が2つに分かれ、コガネシティ方面では都会に生きる少女たちの繊細な感情を、タンバシティ方面では漁村や農村で生きる女性たちの激しい感情を、あらわす。
・主使いやらせてもらった、仕掛けをくいっと押すと女性の頭からはツノが生え、口からは牙が見え、目は血走り鬼になる。女性の激情の象徴として「鬼」が表現されるという発想はこの頃ドメジャーだった。
・足をやれるまで8年、手とかやれるまで8~10年、そこまで修行してやっと主使いさせてもらえるらしい。そんな顔の部分を、人形遣いとしての誉れとも呼べるところを私は「持ってみて、どうぞ」「わー! いいんですか!」などという軽い気持ちでだな……これ当時のお弟子さんが聞いたら泣いちゃうんじゃないか
・藍の染料、ドイツから(おのれドイツ)安い化学製品が入って来たので一気に廃れてその影響で人形も人気を失う、県外に出ていったり山奥へ演じに行ったりした。岐阜県に向かうことが多かったらしい
・人形を3~4体、木の箱に入れて2~3人で全国を回っていた。これを「箱回し」という。……「箱回し」という!! これだ!(何が)
・全国で演じた先で、口減らしのために観客の家族、子供を「是非に」ってこの一座に送り付けることもあったらしい。ただ10人くらい入ってきて、ちゃんとその仕事ができるのは一人か二人。あとは別の仕事を別の場所で見つけて、出ていってしまうのだとか。
・短い映画も見せてもらった。職人さんの言葉が忘れられない。人形を作り操る側の人間が「人形に操られているような気がいたします」と仰る。
・桐の木を10年くらい乾燥させて顔、目や眉や口のからくりにはくじらのヒゲでバネとする、眼球は木のものもあるけれど、ガラスのものもあった、綺麗だった。本当に人を作っていた。
・丸太、私が見せてもらったのは直径17cm、高さ20㎝程度のもの。これを彫って人の顔にする。人の顔にしてから耳の部分で二つに割って、中をくり抜き、からくりを入れる。眼球の構造が一番目立っていたけれど、くじらのヒゲの存在感もなかなか。
・顔の表面には削ってからサメの皮で「32回」やすりをかけ(何故この数なのかは分からないが決まっているという)、それから和紙を何十にも重ねていく。顔のあの綺麗な白はカキの貝殻を潰したもの、子供たちにうすでパリパリさせて、お小遣いをあげていたりもしたのだとか。
・からくりを入れてから、二つに割った頭をくっつける際にはにかわが活躍する。綺麗な白いヤツを塗ってお化粧した後のツヤ出しにもにかわ大活躍。
・肩はヘチマで作っている。重量軽減のためらしい。着物とかとても重かった。一体の人形は「主」と「手」と「足」で三人協力で動かす。
・この職人さんの工房では菊人形も作っていたと聞き大歓喜。お写真撮らせていただいた。菊の花も職人さん、育てていたらしいけれどこちらは完全なる趣味のもよう、人形に使うものではなかったらしい。ひしゃくで水をやる様子が映画の中にあった。

・「昔の人形は綺麗。今の人形はほとんど合成・化学製品ばっかりでね」とスタッフのマダムが仰っていた。まあこれは浄瑠璃文化を支える方の側からの贔屓目が入っていると思うのですが概ね賛同できる。この時代の人形って、まあなかったから当然なのですが全てが有機物で出来ている、ネジの一本でさえもくじらから頂いてくる。現在の人形は無機物で出来ている。プラスチック、つまりDBH風に言うなら「貴方が望むものになる」ための素材だ。現在の人形は己の意思を持たない、当然だけれどそう。如何様にもなろうとする、そこに抵抗の入る余地は決してない。一方、有機物で作る人形にはどんなに綺麗に作ろうともデザインの限界がある。命の枠から外れ切らないその有様は、くじらやサメから部品を切り離されても尚、個々のものが「生きようとしている」ように見える。そういった差を、確かに私は「綺麗だ」と感じる。

 はー素晴らしい時間だった。小一時間はいたかな? 小部屋が2つあるだけの狭い場所だったけれど、解説のマダムを独り占めさせていただいたので充実度がとんでもないことになっている。ありがとうございました。タンバシティの文化、いいじゃん!
 この感動をこの一日だけのものにしたくないなあ。そういえば私はピッピ人形から着想を得て何かを書こうとしていて、その調べものの過程でこのタンバシティの人形浄瑠璃について知ったのだったな。それで、その資料館が家から車で5分のところにあるなんて言うものだから、その……。
 いやこのご縁腐らせちゃ駄目でしょう。どうにかしなければいけない。こいつは忙しくなってきやがった!

 でも今日は更新ないです、午前中に2時間もサボったので午後からのお仕事ノルマがとんでもないことにフフフラダリ

© 2025 雨袱紗