Afterword

「名前を呼んでほしい話」完結しました。
お付き合いくださった皆さん、本当にありがとうございました。

この連載の構想は、ORASをクリアして直ぐに思い至っていました。当時「リコリスを手折る手」というタイトルで予告していたものです。
しかし、なかなかキーとなる台詞を思い付くことができないまま、そして他の連載にかまけたまま、ズルズルと延期し続けてしまいました。

特筆すべきはやはり、16歳と設定してある主人公のお相手を、10歳の少年とした点でしょうか。
年下のお相手を書いたのは、ミツル君が初めてです。
はっきり言って、難しいですね。「10代の少女と一回り以上年の離れた大人とのやり取り」をずっと書いて来た私には、最難関とも呼べる設定でした。
構想自体は昨年の11月からあったにもかかわらず、なかなか執筆に至れなかったのは、この「16歳の少女と10歳の少年」のやり取りに苦戦していたからでもあります。
とまあ、様々な理由で執筆に踏み切るまでに紆余曲折がありましたが、こうして書き上げることができて、ほっとしています。

この連載、その殆どが捏造で出来ているため、そんなにヘビーな話ではないにもかかわらず、冒頭で注意喚起をいつもより多く行いました。(「捏造」は2回繰り返しました。)
更にミツル君の回想部分で発生した謎の解明を、連載にて行わず、雑な投げ方で終わらせるという暴挙にまで出ています。
釈然としない終わり方だったかもしれませんが、人間の視点で語ることのできる物語としてはこれが限界かなと思い、敢えて明確な答えは示していません。
真実はポケモンしか知ることができない筈ですからね。
(イッシュからNさんを呼べばいいよという声が聞こえてきそうですが、流石にそこまでする勇気はありませんでした。真相の究明よりも未解明のロマンに懸けました。)

ポケモン達にとっての「真実」は何だったのか、何故ミツルにはポケモンの声が聞こえていたのか、そして何故聞こえなくなったのか、皆さんで想像して頂けると嬉しいです。

今回の連載には特に解説するような場面も裏話もないので、タイトルについて少しだけ言及したいと思います。
「Call me, dear.」直訳すれば「ねえ、僕を呼んで」となります。ただ、これは何もミツルだけの思いではなかったのだというところに注目して頂けると嬉しいです。
主人公であるトキも、ミツルを慕ったロズレイドも、彼が心からの笑顔で自分の名前を呼ぶ日を待っていたのでしょうね。
寧ろ、ミツルの「Call me.」は叶いませんでしたが、主人公とロズレイドの「Call me.」の方が叶ってしまったあたりからして、
このタイトルの語り手は実はミツルではなかったのかもしれないね、……という、これまた雑な丸投げをして締め括りたいと思います。

ミツルという少年が辿る一つの可能性として、この連載を楽しんで頂けることを願っています。
では、此処まで読んでくださりありがとうございました!


2015.7.6

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