Afterword

「さあ、貴方にFを」の修正から4か月程経ってしまいましたが、無事に続編「ほら、祝福は此処に」も加筆修正を終えることができました。
やはり加筆修正すると文字数が修正前の倍に膨れ上がりますね……合計で32000字ほどでした。
ただ、増えたといっても全8話ですので、気軽に読める長さの連載に仕上がっているのではないかな……と思います。

新しくなった二人の1日にお付き合いくださった皆さん、本当にありがとうございました。
5月から8月後半まで、殆ど更新ができなかった寂しい当サイトに足繁く通ってくださった、大好きなお姉さんに感謝と尊敬の気持ちを込めて、贈ります。

あとがきで語るべきことは次の一点のみ……である筈だったのですが、相変わらず蛇足を連ねております。大したことはありませんがネタバレにご注意ください。


1、もどかしい
この連載を修正しながら、とある合唱曲を聞いておりました。「春に」という曲です。(実はこれも尊敬するお姉さんに紹介して頂いたものです。)
タイトルをご存知なくとも、そのメロディを聞けばすぐに「ああ!あの曲か」と分かる方も多いのではないでしょうか。
この「春に」の中に登場する一つの単語、これを今回、修正版を書くにあたり重要なキーワードとして設定させて頂きました。

私はこの「もどかしい」をよく、感情に言葉が追い付かない時に用います。
こんなにも私の中には激情が吹き荒れているのに、この嵐を収めるための言葉が見つからない。この大きく重たい感情を詰め込めるだけの言葉を編み出せない。
何か、何かもっと相応しい言葉がある筈なのに、出て来ない。くやしい、もどかしい。

私にとって「もどかしい」は、自分の理性を超えて暴走する感情へ向ける言葉です。
私が思考できる容量には限界がありますが、その容量に背き悖る、すなわち「もどく」感情の大きさや強さを示す言葉です。
その激情を落とし込むための言葉が見つかった瞬間(3話:『私は楽しい!貴方と一緒だとこんなにも楽しい!』)、
ああそういうことだったのかと視界が開けるたった一瞬(7話:『「もどかしい」は謀反を表す言葉だったのですよ、シアさん』)
世界の彩度が上がった、その先(2話:『ではお前が鮮やかなのは、私がお前を見つけたいと強く思っているからなのか?』)。
ここに「祝福」があるように、私は思います。


2、未来の示唆
とにかく文字を覚えた彼に祝福を!そして「もどかしい」という新たな課題を!というコンセプトで加筆修正をさせて頂きました。
その結果、以前からずっと文字を知っていたシアちゃんにまで祝福らしきものが訪れたのは、全くの偶然……と言えばそれまでなのですが、
その偶然を意味のあるものとしてもらうために、また「もどかしい」二人の未来が明るいものであることを示唆するために、またしてもアクロマさんに登場して頂きました。
アクロマさんは科学者ですが、きっと国語もできると信じています。原作での言葉遣い、とても綺麗でしたものね。

Fと祝福におけるアクロマさんは、何だかんだと随所で口を出しつつも、二人の行方を近くで見守っていたい、そんな純粋に優しい「理解者」の位置で書かせて頂いております。
なのでこれからも二人の間で「もどかしい」ことが起これば、はいはいと笑いながら出てきてくれるでしょう。
「一人や二人では紐解けない言葉も、三人で考えればそこに意味を見ることだってできるかも」しれませんから。


3、追加・修正エピソード
修正前でも全8話という形を取ってはいましたが、今回の修正にあたり、「セイガイハシティへ泳ぎに出掛ける」というイベントの中に、多くのエピソードを盛り込みました。
それに伴い、既存のエピソードを変更したり、削除したりさせて頂いております。
ただ、突然イッシュの海辺に登場したミズゴロウですが、この子は修正前の段階からいました。「春に」を紹介してくださった大好きなお姉さんからのアイデアです。
他の細かな変更点や、追加エピソードの一言メモのようなものを以下にまとめて、あとがきの締め括りとさせて頂きたいと思います。

・2話、何故海が青いのかを探るために海へ潜る(修正前はただ海の神秘的な雰囲気に魅入られてひたすらに潜る、という描写でしたが、祝福、を強調させるために変更しました)
・3話、「私が格別おかしな存在である、という訳ではなかったようだ」(「ダークさん」と「ダークトリニティの代表者」を明確に区分するための台詞)
・3話、「貴方と一緒だとこんなにも楽しい!」(感情を言葉にすることの喜びを描写するための、彼女の心からの叫び)
・4話、夕日の見方について(7話の「もどかしい」に対する伏線)
・5話、「私をどう見る?私を滑稽だと思うか?」(夕日の「あれはどう見ればいいんだ」という疑問を受けた発言であり、そこからの「言葉が欲しくなった」に続く)
・5話、ミズゴロウの「ひっかく」こうげき(私に痛みはない、からの盛大なフラグ回収。彼はもう痛みを感じるようになったのです、痛い、と言えるようになったのです)
・6話、ヤングコーンを刺したフォークをシアが手で受け取る(修正前ではそのまま口にくわえていました)
・7話、もどかしい(この連載のテーマであり、彼等の自由に課せられた新たな課題)
・7話、「貴方が隣にいると永遠が一瞬になるのに、その永遠さえも私達は手に入れられない」(もどかしさ、の彼女なりの精一杯の言語化であると同時に、8話への布石)
・8話、「永い時を経なければ得られないと思っていた共有」(永遠は彼等の手の中に在り、それはきっと「祝福」と同じ形をしている)


長くなりましたが、二人の祝福にお付き合い頂き、本当にありがとうございました!


2016.8.29

I’m looking forward to seeing you in the next world !

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