12/12、リイさん

こんにちは、リイさん。またこうしてお声を掛けてくださりありがとうございます。

連続的なメッセージについては、こちらとしても「お返事のお返事」を求める意図はありませんし、
そうした繋がりをこちらから意識的に作ろうと働きかけることは努めてしないようにしているので、
むしろリイさんのようにご自身のペースで、私からのお返事に囚われず遊びに来ていただけること、とても有難く嬉しく思っています。
折角、こうして同じポケモンという趣味を基盤として知り合うことが叶い、楽しいお話を何度かさせていただいた、好ましい関係(と、私は思っています)になれたのに、
その場所である雨袱紗への訪問、およびコメントが義務のようになってしまっては元も子もありませんからね。

そして、前回コメントを頂いたのが8か月前だったという事実に、私自身も驚いています。あれからもうそんなに経ってしまったのですね……もうすぐ1年か……。
けれどもその8か月の間にも、リイさんの頭の中から「雨袱紗」が薄れて消えてしまうことがなかったということ、とても嬉しいです。
思い出してくださり、またこうして話し掛けてくださり、ありがとうございます。

片翼とサイコロ、ようやくの更新となりました。本当に、お待たせしました!
こちらの引越を渋っていたのは、片翼1話2話の加筆修正分に少し問題があるのではないかと懸念していたからです。
何度かこの2ページ分を是正しようと試みたのですが、結局はあまり変更できないままに持ってくることとなってしまいました。
けれども持ってきてから全体を通して眺めると、シアの狡い精神やダークさん達の個性の強調などを最序盤できつく描き表しておくことには意義があったように思われました。
そういう訳で、私なりにようやく納得することのできたBW2三部作を、こちらの雨袱紗にも揃えることができてよかったな、という気持ちでいっぱいでした。
そこにリイさんからのご感想まで頂戴してしまっては……こんな幸せでええんやろか、とさえ思ってしまうのも無理からぬことですね。ありがとうございます!

原作では全く会うことの叶わなかった「その後」のゲーチスさんの姿として、片翼の彼は私の考察と理想が半々くらいの形で混ざった状態であると言えると思います。
彼の指示を受けて動いてきたダークさん達が「何もできない」と口にしたということは、
もう彼の中から支配とか征服とかいった野望めいたものは完全に失われてしまっていたのだろうということ。
彼をそうしたのはシアとのバトルやNとの会話により植え付けられた「屈辱」であり、キュレムによる「断罪」であったのだろうということ。
自らが支配することのできなくなった世界など、彼なら「不要だ」と考え、命を絶ちさえするのではないかということ。
けれどもその自殺だって、彼ならば絶望にどっぷり浸かった悲劇的な終わり方ではなく、
むしろ「世界が私を見限ったのではなく私が今からこの世界を見限るのだ」といった、尊大で高慢で気丈な態度で死地に向かおうとするのではなかろうか、ということ。
それらの心理変遷の後にシアによって命を取り上げられたことによって、彼が少なからず「自由に飛べる」ようになってくれればいいのに、……ということ。

こういったことを他にも沢山考えながら、望みながら、祈りながら、書いていたような気がします。
そして今もこのように思い続けているからこそ、私はこの片翼とサイコロを、2度に渡って加筆修正してでも留め置きたいと思ってしまったのでしょう。
そんな、想いだけは一人前に詰まった物語の中に生きるゲーチスさんに気持ちを寄せてくださり、本当にありがとうございます。

ゲーチスさんの「馬鹿な子だ」は、降参と敬愛の表現型でもあります。
此処まで深く彼のことを考えてくださったリイさんの、その心の誠意と熱意に彼は白旗を上げ、
更にはその対象に己を選んだことへの少々の驚きと多大な感謝を込めて、もしかしたら「馬鹿な子だ」と口にする……かもしれませんね。

リイさんご自身のお話も、聞かせてくださり嬉しく思います。
心理学を勉強しておられるのですね。大学で本格的に人の心を紐解く作業に打ち込めるというのは、本当に羨ましい限りです。
私の進学先は理系で、心理学や哲学や法律学などは一般教養で申し訳程度に触れたり、図書館でそれっぽいものを読み漁ったりするくらいしかできなかったものですから……。
いや、それはそれで自由に好きなものを好きなだけ学べて、とても楽しかったのですけれども、やはり専門性という意味では進学先にそれを選んでしまうのが一番ですよね。

臨床心理士の受験資格を得るには大学院への進学が必要なのですね。
4年間、学部で頑張られてきたリイさんにとって、更に2年を加えて難しい資格取得に挑戦するという選択は、用意にできるものではなかったのではないかと推測します。
リイさんも仰っていたように【適当な気持ちで望むものではない】というのはその通りだと思います。
けれども同時に、リイさんが適当な気持ちで臨床心理士への道を望んでいる訳ではないはずだ、とも思っています。

【心から他人のことを想うことのできない私】というご記載について、お節介かもしれませんが言及させていただきますね。
私自身、いろんな方を精神的な意味で「支える」側に立つことに挑戦した経験が少なからずあります。
その過程で気が付いたことが一つあって、まあ簡潔にまとめてしまうと「相手の回復を願う気持ちが強まると、それは双方の致命傷となる」ということです。

心に触れ、心を紐解き、心の在り方について共に考えるのが臨床心理士であると私は認識しています。
その心を持つ対象者のことを、好きになるのも、大事に想えるのも、それは臨床心理士の大事な資質だと思っています。
けれども「支えよう」とする側、「癒そう」とする側に立つ人間は、そうした温かい思いを持ちながらも、
冷静に、悪く言えば「事務的に」心に触れるようにしていなければならないのだと思います。

「傷付いたいきものの心を癒すのは、とても、とても骨の折れる作業である。
その過程で、むしろ癒す側が心に深い傷を負い、大きなトラウマを残してしまうことだって確かにある」

これはド素人である私が書いた短編の一節です。
むき出しの心で傷付いたいきものに向かっていくと、自身の側が思わぬ傷を負うことがあります(弊所ではトウコとNの関係がこれに相当します)。
それだけならまだしも、傷付いているいきものと共に傷を深めていってしまう可能性さえあります(弊所ではシアとシェリーの関係がこれに相当します)。
勿論、悪い事ばかりではなく、そうした「心の底から相手を想う気持ち」に強く思いを揺さぶられ、大きな変革や回復を相手に提供できる場合だってあるのですが、
(弊所ではシアとゲーチスさんの関係が(略))
……長々とくだらない例を挙げてしまいましたが、その、要するに「人の心に生身で、全身全霊の想いで触れようとする」のは、諸刃の剣であるということです。
私は、そう考えています。

さて、リイさんのお言葉に戻りましょう。
私は【心から他人を想うことができない】というリイさん自身の分析は、全く悪いことではなく、
むしろ臨床心理士としてご活躍なさるにおいては、大きな武器になるのではないかと考えています。

心が、人が嫌いで臨床心理士になる人などいないでしょう。リイさんも含めて、皆さん、相応の熱意と砕ける程の誠意をもって相手に接しようとするはずです。
大好きな心に、大好きな人に、誠心誠意寄り添おうと考えるのでしょう。
立派なことであると思います。それが心に触れるための最低条件であるとも考えています。
けれどもそれを「仕事」とするならば、そうした気持ちと同じくらいの「冷静さ」「事務的な心地」というものを、いつもいつでも持っていなければいけないように思われるのです。
そうしなければ、リイさんの大事なものが守られなくなってしまうような気がするのです。
リイさんの「心から~」というご自身の分析は、臨床心理士になってからのリイさんが長く仕事を続けるためにきっと必要となる部分です。
ですから【向いていない】などということはあり得ません。むしろそういう風にご自身を分析できるリイさんにこそ、私は長く、人の心に触れていただきたいと考えます。

以下は、間違っているかもしれないド素人なアドバイスであり、貴方と長くお話をさせていただいている私の個人的な祈りです。

どうか、相手に全てを捧げようとしないでください。相手の回復が芳しくないことで自身を責めようとしないでください。
「心から他人を想うことのできない私」を、無理に変えようとはしないでください。
相手のためではなく、リイさんご自身のために仕事をしてください。
リイさんがおっしゃっていたような「知的探求心」のままに沢山、沢山学んでください。その知識と経験で固めた地盤の上を、慎重に、けれども勢いよく、歩いてください。

情動的に、恣意的に、破滅的に「生き続けられる」ことが何よりも大事です。
私は貴方が、貴方自身のために学び、貴方自身のために働けることを願っています。
そして遅ればせながら、素敵な道を進まれようとするリイさんのこと、心から応援しております!

た、たいへんだ。すごい長くなっちまった……なんてこんないつも長い……申し訳ありません。

ソードシールドもクリアされたのですね。今作、楽しかったですね。
プレイ日記の執筆も終わったので、そろそろ物語に手を付けたいところです。
しかし今作はゲーム内であまりにも綺麗に終わってしまっているので、原作の書きごたえがあまりないかな、とも考えていたり……まだどうなるかは分かりません。
けれども何かしらは面白おかしく書き続けていくことと思いますので、ご勉学の合間の休息に、また利用していただければ幸いです。

では、長くなりましたがこれにて。此処まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
またお会いできる日を楽しみにしております。よいお年を、お過ごしくださいね。

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