11/18、皐月さん

こんにちは、皐月さん。遊びに来てくださりありがとうございます。

復帰から半年以上を経て、ようやくBW2三部作がこちらにも揃いました。
出来はともかく思い入れのある連載だったもので、私の感慨は当然のようにMAXだったのですが、
当時から楽しんでいただけていた皐月さんにも同じように喜んでいただけるなんて感激です……!
あと皐月さんが「ウオォッ!」を使いこなしていらっしゃることも嬉しくてニヤニヤしてしまいました。
わぁいみんなもっとフラダリさんのこと好きになーれ!(この台詞、久々だなあ)

片翼、サイコロについては、加筆修正と一応銘打っているものの、加筆した心理描写や情景などはごく一部です。
特にサイコロについてはほとんど変更を加えていません。
大きな変更点としてはやはり目次ページと、あとは片翼の1話2話ですね。
修正前において1話にまとまっていたところを、ダークトリニティの描写などを追加することで大幅に中身を変えております。

目次ページの英文、および1話2話で強調させたかったのは「シアの歪み」ですね。
万能感溢れる存在として物語の中枢を担っていただいた彼女ですが、彼女がそう在れたのはあくまでも周りからの
(その「周り」にはトウコやアクロマさんだけでなく、ダークトリニティやゲーチスさんやクリスさんやトキ嬢など本当に沢山の方の存在があったのですが)
慈愛であったり庇護であったりサポートであったり叱責であったり……そうしたもの全てが悉くよい形で働いたからに他なりません。

もし彼女がそれらを受け取ることを拒んでいたら、「愛されることを受け入れるだけの心持ちがなかったら」、
彼女は片翼とサイコロの流れを踏まずして、呆気なくダークトリニティに(正確には、ジュペッタのダークさんに)殺されていたかもしれない。

……彼女は努力家で、懸命で、傲慢で強欲ですが、その本質は絶妙に狡いところにあり、破滅的な自己犠牲を美徳とする歪んだ価値観を持っています。
ただ彼女はその歪みをあらゆる人との縁の中で修正せざるを得なくなっており(此処での明記は控えますが)
サイコロ後半にもなると、彼女が差し出す供物は「命」ではなく「髪」程度のものにまで変化していましたよね。
彼女の意識の破滅性を和らげたのは、その周りで彼女に影響を与えた多くの人の存在であり、その「人との縁を喜べる」という点こそが、彼女の最大の武器なのではないか……
などと考えながら、私はこの度、お引越しに取り組んでおりました。

以上のことから、彼女が「まとも」で在れたのは周りの人の力あってこそであり、
まだそのまともな状態を確固たるものとしていない彼女が、周りの人から離れてカロスに赴き、一人の女の子を救おうとしてまたしても半破滅状態となる……という流れは、
「シアが自らの成長を驕りすぎた罰」と取ることもできそうで、振り返ると少しオモシロイ心地さえいたしました。

前回のお返事では書けなかったのですが、この1年半弱の休止期間を経て最も変わったのは「シアへの認識」です。
雨更紗、での私は、シアに「夢」を詰め込んでいました。周りの人を信頼し、愛されることを受け入れ、どこまでも羽ばたける彼女は私の夢であり、理想でした。
けれども雨袱紗での私は、シアに夢と同じくらいの質量の「現実」を押し付けようとしています。
そのため、今後の私が書くシアは、皐月さんが好いてくださったあのシアとは少し、異なっているおそれがあること、ご了承いただければと思っております。

ただ、管理人としてではなく、私個人としての願いを書かせていただくなら、
【シアちゃんは強い子ですね】と書いてくださった皐月さんに、強いだけではない、もっと破滅的で狡くて我が儘な彼女の本質を、
……もし皐月さんが受け入れてくださるなら、一緒に覗いて、追いかけて、見守っていただけるととても嬉しく思います。

そっそそそれからですね、私、びっくりしすぎて声を出して「あえっ!?」となってしまったのですが、に、に、似ているですって……。

アクロマさんとシェリーが似ているですって!?

?!?!?(混乱)

ちょ、ちょっと待ってくださいね。今読み返させていただいてもやっぱりすぅごい。皐月さんのご考察すぅごい……。

【人を信じることが出来ず臆病なままシアちゃんに出会い、そしていつか愛の結果、自分の存在を消そうとする】
【愛を貫くための「力」に、アクロマさんは自覚的でシェリーは三部作のシアちゃんのように無自覚だったから】
【自覚がない彼女は眠ってしまった】
【それはシアちゃんが辿った記憶喪失という眠りと似てる】

本当に、感動いたしました。確かにそうです、その通りです。
アクロマさんもシェリーも、自らの存在を「愛の証左」として消すことを選んだ人間でしたね。
アクロマさんは自らの嘘によって、シェリーはもっと本質的な命というものを使って。
ただアクロマさんは確かにそれを「愛」だと確信して嘘を吐いたけれど、シェリーは自らのそうした心地に自覚のないままに、
それでも「この想いには私の命を賭す意義が確かにある」と確信して命の半分を投げ渡し、毒の花に素手で触れた。
……ふふ、こう並べると、なんだかあの臆病なシェリーの方が、ずっと勇敢で破滅的な「愛」の示し方ができているような気がしてしまいますね。
にもかかわらず彼女はそれが愛だと最後までよく分かっていなかったかもしれない、というところがまたオモシロイところではあります。

木犀番外編、ないしやさしくありませんようにの66話にて、アクロマさんがシェリーを夢の中で何度も殺しかける、という話がありました。
彼のシェリーに対する憎悪、それを私は「シアへ付けた傷」の深さからくるものだとばかり考えていたのですが、
この観点から見るとまた別の、嫉妬とか羨望とかそうした感情さえ浮かび上がってきて、私自身はっとさせられました。

自身よりもずっと頭が悪くて臆病で卑屈で、シアによい影響をただの一つも与えられなかった(と、少なくともアクロマさんは考えている)相手が、
その実、自身よりもずっと大胆で巧妙で勇敢な手段を取り、自身よりもずっと大きなものを賭して「愛」を示したという事実。
……彼の夢の中にその悪魔が形を取って現れるのは、至極当然のことだったのでしょうね。

素敵なご考察、本当にありがとうございます。
片翼やサイコロについてお話をすること自体が久し振りであったこともあり、とても楽しく読ませていただきましたし、書かせていただきました。
……粗削りなところが沢山あるけれど、私の夢物語を詰め込んだ産物に過ぎないのかもしれないけれど、それでも私はやっぱり、この三部作を大事にし続けたいなあ。

SWSHを遊ぶためには「switch」という大きすぎる壁がありますので、すぐに購入できないのは致し方ないところだと思います。
【キャラ設定だけどんどん先走って】分かります、分かりますとも。
私も2月にSWSHが発表された段階から「では今作の主人公のコンセプトは『探偵かぶれの哲学少女』で決まりだな」などとほくそ笑んでいたのですよ。懐かしいなあ。

ガラル地方、魅力的な人物が多数いらっしゃいましたが、実はもう連載の重要な部分は決まっておりまして……。
具体的には「お相手」「主人公の歪みと課題」「ゲストとして登場させる過去作主人公」が既に固まっています。
これまでの主人公とは打って変わって、お笑い系というか、ぶっ飛んだ発想ばかりする破天荒な女の子になりそうですが、もしよければユウリに、会いに来てやってください。
きっと、喜びます。それはもう、まくし立てるように歓迎の言葉を紡いで喜びをめいっぱい表現するかと思います。そういう子を、書きたいと思っています。

皐月さんも風邪など引かれませんよう注意してお過ごしくださいね。
今年はインフルエンザの流行が少し早いかもしれない、とも言われておりますので、予防接種も忘れずに。

では、ありがとうございました。またお会いしましょうね。

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