地下プラントの廊下で待っていてくれたホップと合流し、ナックルタワーの屋上へと向かうと、
そこにはダンデさんとリザードン、そして竜の骸骨を思わせるなんかよく分からないけれど大きくて強そうな紫のポケモンがいらっしゃいました。
かなりびっくりしたのですが、成る程貴方様がムゲンダイナという訳ですね。
全体は濃い紫と眩しい赤で構成されています。肋骨部分というか、腹部には紫の骨で守るようにして、コアらしき白い光が強大なエネルギーを思わせる明るさで爛々と光っています。
目は……よく分からないのですが、口はあるようなのでおそらくカレーを食べることはできるでしょう。このエネルギーの塊とキャンプできる日が待ち遠しいなあ。
しかし今は、永い眠りから目覚めさせられてさぞかしハイになっちゃっているのでしょう。まあ落ち着いて、静まりたまえよ(?)
ダンデさんはホップと主人公に、駆け付けてきてくれたことへの感謝を述べつつ、
既にポケモンバトルでムゲンダイナを弱らせることはできているから、あとはボールに収めるだけだという説明をしてくれます。
「見てろよ、チャンピオンタイム!」とかっこよく言い放ち、ムゲンダイナにボールを投げるダンデさんですが、ボールは1回揺れただけで爆発してしまいました。
咄嗟に翼を大きく広げて、爆風から主人公とホップを守るように動いてくれたリザードンの紳士加減が凄まじすぎて惚れそうになったのですがそれはさておき!
真っ二つに割れたモンスターボールが主人公の目の前に降ってきます。
驚いて顔を上げると、膝をついて苦しそうにしているダンデさんの向こう側、ムゲンダイナが威嚇するようにおぞましい咆哮と共に主人公の方へと突進してきました。
問答無用でバトル開始です。
……なのですが、このムゲンダイナ、ドラゴン・毒タイプであり、インテレオンやネギの姉貴では弱点どころか等倍を突くこともできず、かなり苦労しました。トホホ……。
緊迫したBGMが流れる中、何とか倒すことには成功したのですが、このままでは終わるはずもなく、空高くに舞い上がりキョダイマックスのような新しい形態を取ります。
後で図鑑を確認すると「ムゲンダイマックスの姿」という風に表示されるので、正確にはキョダイマックスとは異なるのですが……。
ターフタウンの地上絵、そしてナックルシティの宝物庫にあったタペストリーを想起させる、天に大きな渦を巻く形でムゲンダイナが君臨しています。
成る程、あれらの絵はこのムゲンダイナを描き表したものだったのですね。
ホップのバイウールー、およびナユのインテレオンの2匹で挑戦する、特殊なマックスレイドバトルのような形を取り、
ムゲンダイナに再び立ち向かうことになるのですが、……いつぞやのまどろみ森を思わせるテキスト「謎の力で技を出すことができない!」が表示され、為す術がありません。
どうすればいいのかと途方に暮れているところに、ホップがまどろみの森から持ち出した「朽ちた剣」と「朽ちた盾」の存在を思い出します。
ホップの合図に合わせて、ナユが「朽ちた剣」、彼が「朽ちた盾」をそれぞれ空へかざすと……やってきたではありませんか、ヒーローが!
王道のポケットモンスターを思わせる、ただただかっこいいムービーでした。
これまで、まどろみの森で姿を見せていたザシアンとザマゼンタは、剣や盾を持っておらず、耳も片方が途中で欠けているような寂しいデザインでしたが、
朽ちた剣と朽ちた盾を構えることによって、パッケージタイトルにいる本来の姿を取り戻します。かっこいいね。……いやこれはかっこいいでしょう! かっこいいよ!
そして、フォルムチェンジしたザシアンとザマゼンタが参戦することによって、いつものダイマックスバトルのように、4対1の構図が出来上がりました。これは頼もしい!
ザシアンとザマゼンタのおかげで、どういう理屈かはさっぱり分かりませんが技も繰り出せるようになっています。
ザシアンは「きょじゅうざん」、ザマゼンタは「きょじゅうだん」という技でムゲンダイナにかなりのダメージを与えてくれます。
正直、ムゲンダイナが毒タイプを持っていることにまったくもって気付いていなかったため、このバトルにおいてもかなり苦労しました。
ザシアン、ザマゼンタ、そしてホップのウールーとアーマーガアにもかなり助けられました。
彼等の力を借りつつ、なんとか撃破です。な、長かった。
「今だ! ナユ、ムゲンダイナを捕まえろお!」
ええっ、私が、ナユが捕まえていいんですか! かなりボロボロな戦いしかできなかったのですけれども、ホップの方がこのムゲンダイナの主には相応しくないかね! どうかね!
「ホップに譲る」という選択肢が出ないところに若干のもどかしさを覚えつつ、けれども此処で躊躇っていたら新チャンピオンの名が廃るぜ、とも思いつつ、ボールを選びます。
ゴージャスボールを投げると一発で捕まったのですが、この捕獲はどうやら確定ゲットのようですね。
捕獲が成功したことをまるで自分の事のように喜んでくれるホップ、その笑顔が胸に染み入ります。ありがとう、ありがとうホップ……。
役目を終えたザシアンとザマゼンタは、空の向こうへと大きくジャンプし消えていきました。
ED後にまた再会することになるとは思うのですが、ストーリーの中でパッケージポケモンを仲間にするイベントがないというのは珍しいですね。
その代わりにこれまでのシリーズでは「マイナーチェンジ版」のパッケージを飾っていた位置のムゲンダイナをストーリーの中で捕獲してしまうという、面白い展開でした。
ムゲンダイナを捕まえたことで、ガラル全土におけるエネルギーの暴走も止まり、大きな事故も起きることなくガラルは平和を取り戻したようです。
主人公とホップが、ガラルのためにできることは全てやりました。あと残っているイベントはもう、一つしかありません。
*
「3日後」というテキストが表示され、主人公はシュートシティのホテルでホップと再会します。チャンピオンマッチを行うため、すぐにスタジアムへ向かうことに。
手持ちの6匹目に収まっていたムゲンダイナを見て「お前毒かよ! 毒が入っていたのかよ!」と予想外のタイプに驚愕していたのですが、
このホテルロビーにいた二人の男女が気になることを話していましたので、取り上げます。
「ローズ委員長、自首したんだって? たまげたね」
「ムゲンダイナを目覚めさせ、世間を混乱させたんだ。まあ、当然だよな」
……この反応は正直どうなのかな、あんまりじゃないかな、と思わなくもありませんでしたね。
彼は別に、何処かの誰かさんのように「ワタクシだけがポケモンを使えればいいんです!」とかいう野望の下にポケモンの解放を強制しようとした訳でも、
はたまた何処かの誰かさんのように「争わず奪い合わず美しく生きるためには命の数を減らすしかない」とかいう信念の下にテロを仕掛けようとした訳でも、
更には何処かの誰かさんのように「ポケモンを使って金儲けしてやるぜ!」とかいうマフィアめいたことをやらかしておられた訳でも、ありませんでしたよね。
ただ、エネルギー問題を解決しようとしただけ。そのための手段がぶっ飛んでおり、その問題が1000年先という、一般大衆には理解され難い未来の話で在り過ぎただけ。
けれどもそうした事情をガラルの住民は知りません。ただ「ムゲンダイナを目覚めさせてガラルを混乱させた迷惑な人」という認識でしかないのです。
それはローズさんが、そのエネルギー問題をごく内輪の人間だけで解決しようとしていたからであり、民衆に何の説明もしていなかったからまあそれは仕方がありません。
……ただ、それを抜きにしても、これまで何十年もガラルの発展のために尽くしてきた彼がそのようなぶっ飛んだ行動に出た理由というものを、
もう少し、推し量ろうとする心がガラルの皆さんにはあってもよかったんじゃないかなと、思ってしまいました。
「あんなにいい人だったのに」「どうしてこんなことをしたんだろう?」「何を隠していたの?」「何がしたかったの?」「どうして何も説明してくれなかったの?」
こうした疑問が、ガラルの住民ならば浮かんで然るべきだと思うのですが、この二人はただ「迷惑なおじさんがちゃんとした罰を受けてくれて安心」といった風であるばかりです。
ええ、釈然としませんでしたね。カロスのフラダリさんの扱いに対する悲しみとまではいきませんが、どうにも、おかしいなあという気持ちにさせられましたね。
……。
ええいもういい! 構わない! そういうもやもやした感情には長い時間をかけて落としどころを見つけていくしかないのだ! 今はチャンピオンタイムだ!
さあ、行くぞ。
*
コートへの暗い通路を進んでいると、ナユへの声援とチャンピオンへの声援が、同じ数だけ飛び込んできます。
そして前回はコートの中央で主人公の歩みを待っていたダンデさんですが、今回は反対側の通路から主人公と同じように歩いてきてくださいました。
この試合前のポジションの差も、前回と今回での立場の差を示しているようでぐっときますね。
そして、二人の関係がどのように変わったのかということを、ダンデさんが実際に言葉にして説明してくれました。
「オレの試合はいつも満員になる。だがスタジアムの皆がこれほど熱狂しているのは初めてだ。
皆が三日前のナユの大活躍……ムゲンダイナを捕らえ、ガラル地方の未来を守ったことを知っているからな。
伝説のポケモン、ザシアンとザマゼンタと共に戦った英雄……オレの無敗記録を伸ばすのにもってこいのチャレンジャーだぜ!」
ムゲンダイナ、歴史上では「ブラックナイト」として恐れられていた存在を手懐けたのは、チャンピオンのダンデさんではなく、そのダンデさんに挑戦するはずだった主人公でした。
あの騒動の時点で既に、未来を担う逸材がダンデさんから主人公に切り替わることが示唆されており、ダンデさんもそれを察していたのではないかなと考えています。
だからこそ、彼はコートの中央で挑戦者を待つのではなく、反対側から同じように歩み寄ることで、主人公への敬意を示そうとしていたのではないでしょうか。
「ガラル地方の歴史に残る……いや、ガラルの未来を変える、極上の決勝戦にするぜ。チャンピオンタイムを楽しめ!」
更に此処で「未来を変える」というワードが彼の口から出てきているというのも興味深いところです。
つまり彼はこのバトルで「未来を変えよう」としているのですよね。
これは、自らの守ってきた未来が「変えられてしまう」と覚悟している、とも取ることができるような気がします。
実際、ダンデさんが捕らえることのできなかったムゲンダイナを、主人公は、ホップやザシアン、ザマゼンタの力を借りつつ捕まえることができました。
その「力」も、主人公がこれまでガラル各地を旅して、ソニアさんやホップとガラルの歴史について考察し、剣と盾のポケモンの謎に辿り着いたからこその結果であると言えます。
主人公のこれまでの歩み、トーナメントを此処まで勝ち抜いてきた強さ、そして先日のムゲンダイナ捕獲、そして今日という日のスタジアムに満ちる熱狂……。
ダンデさんはその全てを認め、主人公を圧倒的な力で捻じ伏せると宣言した上で、「ガラルの未来を変える、極上の決勝戦」にしようとしている。
主人公が本当に、これからの未来を作っていけるに相応しい力を持っているのか、最後にダンデさん自身の実力をもって確かめようとしている。
この決勝戦にはそんな意味合いがあったのではないか。私は、そう考えます。
2019.12.13
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