P、9番道路~スパイクタウン

キルクススタジアムを出ると、ソニアさんが出迎えてくださいました。
お祝いとしてステーキハウスでご飯を食べようと誘ってくださったので、そのまま向かいます。
ちなみにこのステーキハウス、ソードでは「ボブの缶詰」の「ボブ」がマスコットキャラクターとして大々的に出てきているのですが、
シールドにはそもそも「ボブの缶詰」がなく、代わりに「ベックの缶詰」になっているということですので、
もしかしたらこのステーキハウスもソードかシールドかによってデザインが違ったりするのかもしれませんね。

さて、そのステーキハウスでホップとも再会しつつ、奥で面白いものを見つけました。
ナックルシティの宝物庫で見かけた4枚の壁画(タペストリー)の続きを示す、5枚目のタペストリーです。
悲しむ二人の英雄が描かれているその壁画を見て、剣と盾のポケモンは何処かで眠りに付いているのではないかとソニアさんは考察します。
その話を聞いて、ホップが「オレ達がまどろみの森で出会ったポケモンこそがそいつなんじゃないか(要約)」と発言し、ソニアさんのテンションが益々上がっていきます。

「おばあさまに言われて始めた旅だったのに、楽しすぎるよ! 食べながらでいいから、詳しく聞かせてよ」

此処で暗転し、ステーキを焼く音という聴覚的飯テロを受け、次に英雄の湯へと向かう訳ですけれども……。
ソニアさんはホップやビートよりも年上であることから、やはり「誰かのため」から「自身のため」に切り替わるタイミングが少しだけ早いのが印象的でしたね。
そういう「楽しい!」という純粋な感情に満たされているときって、
認めてもらいたいとか揺るぎない価値を得たいとか、そういうことを全て忘れてただ一人の「私」として在れるから、最高に幸せな気持ちになれるのですよね。
ソニアさんにとってはその「楽しい」をくれるのが「研究」であった。その発見ができたというだけでも彼女の旅には大きな意味があったのではないかと思います。

さて、英雄の湯の前でホップもやる気が出てきたらしく、ナユにポケモン勝負を申し込んできます。断る理由はありません。受けて立ちましょう。
と、此処で嬉しい出来事が。

▼ポケモントレーナーのホップはバイウールーを繰り出した!

ウールーが戻ってきている! 「頼むぞ、相棒!」とホップが笑顔で声を掛けている!
こんな、こんな嬉しいことってあります? 正直ジムバッジを得た時よりも嬉しかった。むちゃくちゃ嬉しかったのです。
だがそれと勝負とは話が別だ! 我が軍におけるごり押しのプロ、インテレオンが次々に倒していきます。
新規ポケモンとして「バチンウニ」という、ユキハミやナマコブシを彷彿とさせる可愛らしいウニのポケモンが登場しました。
電気タイプだと思われます。ウニの先がピカピカと光ります。かわいいね。……かわいいね!

あと、メンバー入れ替えの時に登場したカビゴンと、序盤で連れていたすみびやき……ではなく、ココガラが最終進化を遂げた姿、アーマーガアを連れていました。
バイウールー、カビゴン、アーマーガア、バチンウニ、そして御三家のエースバーン。あられの降りしきる中ではありましたが勝利を収めました。やったぜ。
けれどもホップの顔は晴れやかです。もう一度キルクスタウンのジムに挑戦する、と意気込みを聞かせてくれました。

さて、ホップやソニアと別れ、次は9番道路を下ってスパイクタウンへと向かいます。
ジムチャレンジの開会式において、一人だけ来ていなかったジムリーダーがいましたが、その方がおそらくこのキルクスタウンにいらっしゃるんですよね。

……ただね、私、かなり序盤の段階から、このジムリーダーが「エール団と関係がある、悪タイプ専門の方」であることは察しが付いていました。
というのも、今作から導入されたYY通信において、プレイヤーの「アイコン」を決めることができるのですよね。
ちなみに私の初期アイコンは「おまわりさん」でした。笑顔が眩しすぎて速攻で変更したのですが……。

でね、このアイコン一覧の下の方に、ジムリーダーと思しきアイコンが10個あるのですよ。
10個もあるという段階で、既にソードシールドで分岐するスタジアムが2か所あるということも容易に察しが付くようになっているんですよね。
それだけでもかなり致命的ではあるのですが、もっと度肝を抜かれたのがエール団のYマークをコテンと横に転がしたような形をしたジムリーダーのマーク。
これ、これエール団のボスがジムリーダーを兼任されているってことじゃないですか。しかも悪タイプのジムリーダーであることが確定してしまったではありませんか。
これはまあ、ええ、なんということをしてくれたのでしょう。
……いや、序盤から7つ目のジムに対する期待を膨らませることができたのでこれはこれで素敵な仕様だと思います。うん、いいと思います!

という訳で、いよいよエール団のボスにお目通り叶うということで、私のマップ探索も疎かになります。
新しいポケモンなんてじっくり探している場合じゃない! 早くスパイクタウンに行かなければ!

などと思っていたら早速エール団に出くわし、いつものように駆逐を済ませると、居合わせていた自転車屋さんらしきツナギの紳士にロトム自転車をパワーアップしてもらえます。
パワーアップすると何が起こるかというと、水上を走れるようになるんですね。
え? という感じなのですが、本当に何もせずとも水辺に自転車で突っ込んでいくだけで、スイーっと水上を走ることができました。
楽しい、これは楽しすぎます。こんな楽しいものを与えられてしまったら探索せずにはいられないじゃないですか。

などと喚きながら9番道路、およびキルクスの入り江と呼ばれる場所を散策します。
新しいポケモン、見慣れた懐かしいポケモンなどと出会いつつ、ビキニのおねえさんのビキニが寒そうだなあとこちらまで体を震わせつつ、
ぴょんぴょんと飛び跳ねるテッポウオにぶつかりまくって地味にストレスを溜めつつ……ようやく海辺を超えて、スパイクタウンのはずれに辿り着きました。
しかし此処でもひと悶着あります。町に入るための唯一の門、そこのシャッターが閉まっているとのことで、ジムチャレンジャー達が足止めを喰らっているのですよね。
……しかしこの「シャッターによる足止め」といい、スパイクタウンの周囲に漂う寂しく廃れた感じといい、あとエール団のこれまでの小粋な小物感といい、
どうしても前作のSM/USUMで登場した「スカル団」およびそのアジトである「ポータウン」を思い出さずにはいられなかったのですが、皆さんはどうでしたか?

困り果てる御一行から少し離れたところから、マリィが主人公の名前を呼び、「こっち」と手招きしてくれます。
素直にそちら側へと駆けていくと、マリィは此処の町の出身であるため裏口を知っており、
「案内してあげられるけれどもその前にバトルしようぜ(要約)」ということで、勝負を仕掛けてきます。
主人公が肯定的な返事をした途端、薄暗い町の中から現れるエール団の下っ端達。この町は本当にエール団の選挙下にあるようですね。

「あんたも勝ち残っているジムチャレンジャー! 前に言ったように、ライバルとして尊敬してる。でもね、あたしも色々と背負っとるけん、負ける訳にはいかんとよ!」

あ、そういえばマリィとは、アラベスクスタジアムでも一度会っていたのでした。
「数少ないジムチャレンジャーの生き残り」と称して、主人公のことを応援してくれていましたね。いけない、アラベスクスタジアムのところで書き忘れていました。

そんなマリィの手持ちはズルズキン、レパルダス、ドクロッグ、そしてモルペコです。
ドクロッグに性懲りもなくごり押しのプロであるインテレオンを繰り出し、「ねらいうち」を決めようとして「効果がないみたいだ……」という表示を受け、
「ああまたやっちまった!」と爆笑するという流れ、マリィと戦う度にやらかしている気がします。
ドクロッグは特性「かんそうはだ」なので、水タイプの技は効かないのですよね。毎回痛い目に遭っているはずなのについ忘れてしまいます。いけないわとてもいけない。

勝利後、キルクスタウンへ案内してくれるのですが、ポケモンセンターが機能しているところのみポータウンとは違いますが、
ポケモンセンターのスタッフ以外の町人全員がエール団の格好をしているあたり、やはりこの町も相応に廃れているのだと思わざるを得ません。
一度手持ちを回復してから、町の東部に進もうとしたのですが、いきなり門番らしき人に呼び止められ、ジムミッションスタートと相成りました。

マリィにとっても、ジムチャレンジャーの入場を妨げるように町のシャッターが下りているのは予想外のことであったらしく、
疑問に思いつつ、町の奥へと進んでいく姿を見られますので、彼女を追う形でナユも進んでいきます。

途中、エール団の下っ端と何度か戦いつつ、寂れたネオン街を進んでいくと、一人だけすっぴんの顔で挑んできた人がいたのですが、

▼エール団の下っ端と、ジムトレーナーのヨウヘイが勝負をしかけてきた!

……おおっとぉ。これで明らかになりました。エール団というのは「スパイクタウンのジムトレーナー」だったのですね。
奥でエール団の悪行を叱っているマリィの様子からも分かるのですが、
彼等はスパイクシティの復興のために、マリィにどうしてもチャンピオンになってもらいたかったらしく、そのために他のジムチャレンジャーの妨害をしていたようなのです。
ただ、そのマリィとの遣り取りを見ていても、彼等が他の悪の組織に見られるような、外道な心を持ち合わせているとは露程も感じられず、
むしろ町への思いとマリィへの応援(エール)が暴走した結果の悪事、と捉えた方がすんなりと収まる雰囲気さえありましたね。

今作は「悪」という存在さえぼかして表現してしまう程に、本当に、本当に綺麗な世界で、みんなみんな、いい人ばかりでした。
……いや、いいことだということは分かっていますよ! 分かっています。分かっていますが、なんだかなあ。

さて、マリィに「ジムリーダーに挑みなよ」と背中を押されたので、スタジアムの最奥へ向かいます。
そこではなにやらライブのようなものが行われているようで、おそらくジムリーダーでしょう、その人の演奏にエール団の皆さんが沸き立っていました。
進む前に……そうです、リーグカードを確認しておきましょう。ジムミッションが始まるタイミングで、マリィから頂いたものです。
サインの下に書かれたドクロちゃん、かわいいね。……かわいいね!
そんでもって腰が細くていらっしゃいますね! え、男性……ですよね? ザオボーさんを彷彿とさせる腰の細さですけれども、うん、男性だ、男性のはずです。

「スパイクタウンにはダイマックスをするためのパワースポットがなかったため、ファンもあまり訪れず、町が廃れていくことに責任を感じている。
試合になるとたかぶって色々ネタバレをするが、それでも勝つ強さを持つ。
シンガーソングライターとしての評価も高く、本人は音楽を極めたいこともあり、妹がジムリーダーになればいいのにと考えている」

ダイマックスがない!? ……た、確かにこのスパイクタウンにはスタジアムが見当たりません。
それは、ダイマックスして戦うという派手なバトルを好むガラルの人々にとっては致命的とも言えるマイナス要素ですね。
ただ、此処まで寂れてしまわなければならなかったのか? という印象はありました。
けれどもこの廃れ具合というのも、ガラルの人々においてダイマックスバトルがいかに重要な位置を占めているかというのをあまりにも克明に表しています。
ダイマックスを加えてのポケモンバトルというのが全ガラル民におけるエンターテイメントであるからして、
ダイマックス要素のないスパイクタウンが淘汰されていくのは仕方のないことであるのかもしれません。
ただ、それでも7人目のジムリーダーを務めるに至っている辺り、実力は申し分ないのでしょう。戦うのが楽しみです。

それにしても、ガラルのジムリーダーやチャンピオンというのは、強く在るだけではいけないのですね。
ポケモンバトルがエンターテイメントになっている以上、バトルで人々を盛り上げていかなければいけない。
そうなってくると、チャンピオンになる、という言葉の重みが、これまでのポケモンのそれとはまるで異なってきます。
最強のトレーナーである、という事実に加えて、もっと沢山のものを、具体的には名声とか重圧とか象徴とかアイドルとかそういった要素までも、背負わなければいけなくなる。

チャンピオンに勝利しても簡単にその座を「辞退」することができたXYまでのポケモン。
チャンピオンの座に実際に就き、防衛戦でその座を守る側になっても、個人と個人の戦いとして二人きりで思い切り楽しむことができていたSM/USUM時代のポケモン。
あれらの気軽さとは無縁の、畏れ多すぎる肩書き。それを手に入れるための権利を、この主人公は、ネズさんとキバナさんに勝利することで得てしまう。
……底抜けに明るく眩しいガラル地方ではありますが、その重圧の偏り具合には少々、重たく暗い心地を感じてしまいます。

2019.12.8

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