小ネタ・裏話:マーキュリーロード

10、小ネタや裏話あれこれ

<第一章>
1話:魔法使いはグリーン、勇者はレッド、騎士はシア(BW2主人公)、お姫様はトキ(ORAS主人公)を想定しています。
2話:「私は、私にしかできないことが欲しいのだから!」 → この信念はずっと彼女を支え続けていましたが、71話にてそれがようやく砕けることになります。
3話:ここで渡される指輪こそ、ミヅキが「リーリエの代わり」であるという証。
4話:ここで渡される洋服こそ、ミヅキが「カミツルギの代わり」であるという証。
6話:「悉く対極に在り、その実、とても近い位置に私達の歪みはあった」……だからこそ、「エネココアが美味しかった」と繋がる。個性の足並みがそろった、奇妙な奇跡の瞬間。
11話:「私達は排斥される側なのだ。貴方はそんなことも解らないの?」 → こうした酷いことを言えてしまえる点において、ミヅキと母の関係はかなり良好であったのですよ。
13話:「ばっかじゃねえの?お前みたいなぶっ壊れた奴の代わりなんざ誰もできねえよ!」 → これもまた、第三章における彼が明言した祈りでした。

14話:「貴方は壊れてなんかいないよ。出会った頃からずっと、子供みたいで、怖がりで寂しがり屋で悲しそうで、そんな貴方のことが大好きだったよ」
ちょっと面白いのが、ミヅキはこの時点で既にグズマさんと自分が決定的なところで「お揃い」ではないと気付いているという点ですね。
ミヅキはあの氷の部屋を見つけた瞬間、「しめた」と思ったのです。私の輝ける、私だけが輝ける舞台をようやく見つけた、と、歓喜さえしていたのです。
けれどグズマさんはただ恐れていたようです。だからこそあの部屋の存在を知りながら、眠ることなく今もその体温を手放さないまま、温かいままでいたのです。
彼は呼吸を忘れていない。少女は呼吸を手放そうとしている。だから二人は相容れない。少女は彼を置いていくしかない。
その「悲しいこと」を、けれど彼女は喜んでいます。グズマさんのことを「大好き」になろうと思わずとも、大好きだったからです。彼には、眠ってほしくなかったからです。

15話:「おや、おかしなことを言うのですねえ。君はわたしが君のことをどう思おうと、わたしのことを好きでいるのではなかったのですか?」
→ ザオボーさんがやらかした失敗がここに一つだけあります。彼は何故、少女がそのような「おかしなこと」を口にしたのか、そのことに気が付かなかったのです。
「気に入ってくれるといいなあ」というミヅキの呟きは、彼女の一方的な博愛の精神にあまり相応しいものではありませんでした。
彼女なら「気に入っても気に入らなくてもいいんですよ」と言って然るべきであったのです。それが彼女の、投げつけるだけの「大好き」にはよく似合っていたのです。
けれど彼女はそうせず、相手に気に入られること、相手からの愛を少しですが求めています。
その違和感をザオボーさんは見逃しませんでした。だから「おかしなこと」と口にしました。
けれど彼はミヅキと「距離」を取ることを選び続けていましたから、その「おかしさ」の意味するところに気が付きませんでした。
彼女がいつもの時刻に船着き場に戻ってこなかったとき、きっと彼はひどく自身を責めたことでしょう。後悔、したことでしょう。
彼が第三章でグズマさんに託したのは、祈りや願いだけでは決してなかったのですよ。

16話:「恐ろしい不条理から免れようとしてわたくしがすることは、いつもわたくしの愛した命を悲しませる」 → 少女のままで時を止めたようなルザミーネさんの、本音です。
「もう誰も失いたくない」という彼女の本音のところから沸き上がった衝動を、ウツロイドの神経毒がどこまでも増幅させたが故の「凍らせる」という行動でした。
「私はもう、疲れたから」 → この眠りはルザミーネさんにのみ捧げられたものではなく、ミヅキ自身のための眠りでもあったことを強調しました。


<第二章>
17話:「わたしは何もできませんでした」 → 第二章の間、リーリエに延々と繰り返していただくことになった言葉です。これこそが彼女の魅力であり、彼女の武器でした。
21話:「ごめんなさい、ミヅキ」 → ルザミーネさんが心から彼女を愛していたことをここでもう一度強調しています。
22話:「宝石のような煌めきを宿した天使は、まさにこの中で宝石にされてしまったのです」 → ミヅキの願いは確かに叶っていた。その証人に名乗りを上げたのが、彼。

24、25話
「わたしを嫌いなさい、君に必要なのはそういうものです」
→ 5話のミヅキが尋ねた「人を嫌う方がずっと幸せになれるんですか?」の答えが此処に在ります。
幸せにはなれないかもしれないけれど、生きるためにはきっと「嫌い」は必要な感情だった。それを彼だけが解っていた。
「……ああ、もしかして、君も寂しかったのですか?」
→ ザオボーさんが彼女をどのように見ていたのかがこの台詞でようやく明らかになる。
ザオボーさん「も」彼女を嫌えることが嬉しかった。彼女の歪な博愛主義に彼は救われていた。彼だって同じような歪を呈していた。だからこそ情が移ってしまった。
「喜びなさい、君は宝石だ」
→ 最初は「……わたしと違って」という言葉をこの後に付け足すつもりだったのですが、やめました。
そんな言葉を付け足さずとも彼女は「宝石」というキーワードだけで彼の言いたいことをちゃんと理解できますし、
彼女以外の人物に二人の関係を知らしめる必要などまるでなく、寧ろ知らしめない方がよかったのですから、ザオボーさんは必要最小限の言葉を紡ぐだけでよかったのです。

26話:「その姿が昔の母様に重なって、わたしは思わず笑ってしまいました」 → ミヅキはリーリエの「かあさま」を演じていた。彼女はまた、代わりになろうとしていた。
27話:『皆が大好き、私は幸せ。笑って笑って、笑顔で大好きって、言え。』 → リズミカルな洗脳の文句を組み立てるのは存外、難しかったです。
28話:「リーリエ、大好きだよ」 → 悪役の芽はきっと此処で既に顔を出していた。
30話:「貴方にはもう、代わりなんか要らないんですよ」 → 世界にとっての最善と彼女にとっての最愛が異なっていたという、ただそれだけの話です。
31話:「貴方に出会わなければよかった」 → 原作と真逆のことを言わせてしまいました。マーキュリーロードにおいては、何もかもが「逆転」していたような気がします。


<閑話・Mercury Road>
「私が泣いている」 → 【悲劇のヒロイン】になれる場所での、彼女の懺悔。


<第三章>
37話:「今度こそ、その手を掴んでやる。そして、二度と離してやるものか」 → グズマさんのただ一つの祈りであり、誓い。
42話:「こんにちは!」 → この琥珀色の瞳の少女はコトネ(HGSS主人公)であり、その「親友」はトウコ(BW主人公)という想定でした。

45~47話
「貴方は宝石を食べられる人間でよかったですね」 → ミヅキはこの時、もう既にグズマさんとの「お揃い」を手放していました。
けれどグズマさんもまた「お前はオレのようになってくれるな」と、彼女とのお揃いを否定しています。
要するにこういうところまで、やはり悉く似ていたのでしょう。互いが「貴方は私とは違う」「お前はオレとは違う」と思っていたのです。どう足掻いてもお揃いだったのです。

52話:「走り続けられている貴方は幸運です。それはきっと、貴方がこれからも沢山の人と出会えるということですから」 → お気に入りの台詞です。
あと、ローズマリーは続編への伏線です。(そもそも伏線は息を殺してそっと忍ばせるものであってこんな大胆に「これ伏線です」などと言うものではないのだけれど!)
57話:「わたしのように恐れたくないのなら、行きなさい」 → 最善であったザオボーさんと、最愛を貫くことの叶ったグズマさんの違いを示唆。
58、59話:親子というのは良くも悪くもこういうものです。こういうものなのです。

60話
「どの最善でもなかった存在が、それでも心を折ることなく彼女の前に辿り着いた時、その彼の歩みを、彼の振るい続けた力を、祈りを、人は「最愛」と呼ぶのかもしれなかった」
リーリエでも、ザオボーさんでも、ルザミーネさんでもなく、彼だった。ミヅキが待つのは、リーリエでもザオボーさんでもなくグズマさんでなければいけなかった。
その理由を簡潔に示すことはできそうにありません。しいて言うなら、第三章の全てが理由である、ということになるのでしょう。
その「彼の歩み」が、「彼の振るい続けた力」が、彼でなければならなかった理由となってくれるでしょう。「最愛」という、理由です。


<閑話:Stone to Stone>
「最愛」をグズマさんに譲り渡しておきながらしっかり「最善」としてできることを全てやってのけたザオボーさんはやはり大人を極めている。
グズマさんに「君でなければいけない!」と告げるのも、やはりザオボーさんでなければいけなかったような気がしています。誰も、替えなど利く筈がなかったのです。


71話
・「でも私は悪い子だから、もう頑張るの、疲れちゃった!頑張らなくても生きていけるようにしたくなっちゃった!」
これは63話の「私、もう「疲れた」なんて言いません」というミヅキの誓いの裏切りを示しているのでは決してありません。
寧ろ、「疲れないために」疲れちゃった、と笑顔で口にする必要があったのです。笑顔でそう言えているうちに、彼女は異なる生き方を選び取らなければならなかったのです。
・「頑張らなくてもいいって言ってくれる人がいたから、こんな小石の傍にいてくれる人がいたから、悪い私でも大好きなままでいてくれる人がいたから、もう戻れない」
彼女に「頑張らなくてもいい」と言ったのはザオボーさん、彼女の傍にいたのはグズマさん、悪い彼女への愛を貫いたのは、彼女のママ。
三人でよかったのです。彼女は宝石になって誰彼からも愛される必要などまるでなかった。たった三人いれば、生きていかれます。彼女は、輝いています。
大丈夫です。

72話:「あーあ、バレちゃった」 → 少女の道を切り拓いたのはアシレーヌでしたが、彼女の背中を守っていたのはこの小さなUBでした。少女は騎士を2体も携えていたのです。


<閑話:Comedy>
ミヅキちゃんより、グリーンのお見送りの方が大事だもん!」 → これが現実、でも大丈夫、ミヅキはもう、このままならぬ世界が「悲しい」ことを知っていますから。


(おまけ:目次ページの英文意訳です。ミヅキの大好きだった「ミュージカル」を想定しています。)
女の子がいた。
少女は魔女に、勇者に、騎士に、お姫様になりたかった。
その全てが叶わなかった。
故に彼女は笑顔と愛を武器にした。
それでも彼女の願いは叶わなかった。
彼女は眠った、水銀の主のために。

悲しい少女を一粒の宝石が愛した。
宝石にとって、少女は天使だった。
宝石は彼女のことが大好きだった。
それでも彼女は満たされなかった。
彼女は笑った、水星の主のために。

卑怯な少女を一人の男が訪れた。
(お前がオレを置いていったから。)
彼は水銀の道を歩き、少女のところへ辿り着いた。
(水銀の世界でお前がオレを待っていたから。)
男は祈りと願いと後悔を武器にした。
彼はようやく彼女の手を掴んだ。
宝石でなくとも、彼は彼女をきっと愛していた。

それでも彼女は救われなかった。
それでも彼女は、悲しいままに生きると誓った。
彼等の物語はまだ続く。


2017.2.14
( → スペシャルサンクス)

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