なるほど(アズールの歴史、咀嚼完了)

 どこまでもどこまでも、有り体な枠に収まる男じゃなかったという話なんだろうなきっと。
 あんなに優しく優秀であったかい家族やらスタッフやらに囲まれた彼がなんで「引っ込み思案でものも言えない」なんてことになるんだ、とか、有り余る愛情で育った男がなんで「今度は僕が跪かせてやる」とか思えるようになるんだ、とか、そういう凡百の思考で普通のことを考えちゃ駄目なんだよな、きっと。

 素晴らしい人達に囲まれた幼少期だった、彼が口を開けばリストランテにいる誰もが耳を傾けたはず、言葉を躊躇う理由なんてなさそうに思える、にもかかわらず「引っ込み思案ではっきりものも言えない」性格だった! 優秀な商材を持つ母と法に長けた父にたっぷり愛された、再婚にもかかわらず仲がいいのならその愛は本物で間違いない絶対そう間違いない、そんな父からの教育の機会だって沢山あったろう、にもかかわらず「勉強もスポーツもてんで駄目」だった! 素敵な環境の中で楽しくポジティブに成長することだってできた、にもかかわらず彼は屈辱をバネに復讐するため力を付けて「今度は僕があいつらを跪かせてやる」ことを選んだ! 何故か? もうそんなことは分からん。私には分からん。分からなくていいんだ、それがアズール・アーシェングロットという世にも奇妙で最高にかっこいい男だから! よし万事解決!

 ただ、幼い頃からアズールには「狙ったサイコロの目を出せるだけの下地があった」ことを示す、幸せいっぱい愛情いっぱい知識も技量もめいっぱいな家族周りの情報がこれでもかという程に飛び込んできたのは私にとってはかなり衝撃的でした、ということだけは正直に書き残しておきますね。
 うん……本当に引っかかったのはきっとこの点だろうな。サイコロを握ったことさえなさそうなジャミルとの溝を埋めることはちょっともう不可能なんじゃないかとさえ思える。いいお友達になれそうとかさ……傲慢……流石アズール傲慢……5章でビシビシに感じてしまったあの「驕り」が立証されてしまったのがちょっぴり悲しいけれど、ジャミルはそんな驕り軽く跳ね除けて笑えるくらいには厚顔であらせられるので誰も傷付かないのでした! よし万事解決!

 ディフェンスSSRをお迎えするのはトレイ先輩の寮服以来です。何なんだ私の大好きな二人は悉く守備に回っていくんだな……? よし最高!

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