ヴィル様の精神力はもう強靭とかいうレベルを通り越して狂人の域なんよすごすぎて

 私最後の最後でいっちばん信頼している友にあんなことされたらとてもじゃないけど正気ではいられぬ、お前を殺して俺も死ぬくらいのことする。

 ああだからか、そうじゃないのか。私程度の凡百であればこの裏切りは発狂モノだと思うがしかしヴィル様はそうはならないんだ。彼を信用していた気持ちに嘘はなかっただろうけれど、でも「最も信用する人」にヴィル様の心のウエイトはぜんっぜん割かれていなかったんだ。
 要するに「貴方が傍で支えてくれていたから生きていかれる」みたいな気持ちに、ヴィル様はこれっぽっちもなっていなかった、ということか。感謝はしていただろうし信用もしていただろうけれど、でも信頼とか絆とかそういうものは全然、求めてはいなかったみたいだ。信頼も絆も大事じゃない。大事なのは美とそこに至る鍛錬だけ。だから人に裏切られたところで絶望するほどじゃない、ショックではあったけれど、くらいのものなのかもしれん。ヴィル様を本当の意味で支え得るのはやはり美のみなのか……己が磨き上げてきた美しかヴィル様を救うことは叶わぬのか……強すぎる、すげえな……。
 ヴィル様の強さをここまで読んだ上で彼が裏切りを起こしたのなら、成る程その裏切りを受け止めても彼を信用し続ける姿勢を見せたヴィル様は彼の「信頼に応えた」と言えなくもないし、これならば二人に確固たる絆らしきものを見ることもできるのだろうけれど……。ただ裏切りのタイミングが最悪すぎるということもあって、このシナリオでは彼がヴィルの強さを何処まで信頼していたかが不明瞭だから、やはり現段階では「二人の絆はその程度だった」という風にどうしても思ってしまうな……。いやでも違うか!? だってヴィル様の強さが信頼に足るものであるならそもそもネージュに負けるはずがないんだものな!? あんな投票必要なかったってことになるんだものな!? あかん分からん!

 (追記)
 このゲーム内で最も好印象だったはずのルークの暴挙であったためにたいへん混乱していますが、そんな私はあくまで鑑賞人であり、外の人間なのでね……(監督生のあの選択肢を受け付けられないと思った時点で「私」はあの世界の住民ではない)。という訳で、そんな暴挙をモロに食らっても気高く生き続け、彼のことを友人として変わらず信用していけるのだろうと思わせてくださる、いつもの美しくてかっこいいヴィル様であらせられたので、そこになんとか希望を見ることができた私としては、もうそれで全てです。と、もう少し時間を掛けて思えるようにいたします。

 正直ね、本番でいきなりセンターに入ってきてダンスのソウルを疼かせてきやがったジャミルへの「お前もうほんと何なんだよ」の気持ちの方が100倍強いよ。でもそれもなあ、もういい。奴はそういう男だ。彼のあれは生きるための武器であり厚顔だ。だからそれでいい。

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