「もういい、好きにしてください。私は元の世界やこっちのクラスメイトのことを懐かしみながら大人しく死ぬことにします。さようなら」
「私の元いた世界には神様は沢山いるんです。八百万の神って言い方をするくらい、神格は何にでも宿るんですよ」
「僕がその八百万のうちの一柱だとでも言うおつもりですか?」
「だって殺すんでしょう、この物騒な魔法で、今日の日付が変わる頃に、私を。そういう遊び方をする神様の話なら幾度となく読んだことがあるから何となく分かるんです。人間なんて神様にとってはおもちゃみたいなもので、楽しく遊んで飽きたらポイ。そういう神様は『邪神』っていう特別な呼び方をするみたいですけれど、邪でもそうじゃなくても神の意思に人が逆らえるなんてことが起こるはずないから、まあ同じことですよね。人間如きが神の手から逃れられるはずないんです。だからもういい、無様に命乞いなんてしません。どうせもう私に明日は来ないだろうし」
「それは、あまりにも身勝手な認識ではありませんか? 僕の言い分も聞かずに」
「でも合っているでしょう? おもちゃでしょう? 間違っていますか? 片割れさんと一緒に気紛れに私へと構って掻き乱して、何かを取り上げたり押し付けたりして遊びこそすれ、私と対等に話をしようとしてくださったことが一度でもありましたか? そこらに転がっているおもちゃ以上の態度を、貴方は私に示しましたか? それ以下に扱われた覚えなら……あはは、沢山ありすぎて数えきれないくらいですけど」
「……」
「貴方のこと、信頼するつもりでしたよ。信頼したかった。右も左も分からない世界で、貴方を頼らせていただこうと思って、鏡の向こうに見えた貴方の手を取りました。でも私、最後まで、貴方のことを上手く信じることができないままでした。貴方を恐れてばかりでした。仕方ありませんよね。貴方にとって私は人間以下だったんだもの。ただの遊び道具でしかなかった。貴方の好奇心を満たして日常をちょっとだけ楽しくしてくれる、ツール。そんなものに心を砕く必要なんてありませんものね。貴方はただ遊んでいるだけ。それで構いません。もう随分前から、貴方はそういうご存在で私はこういう生き物でしかなくて、もう一生相容れなかったんだって、仕方ないんだって、そういう風に思うことにしていますから」
「早く日付、変わらないかなあ。知っていますか、神様。私の元居た世界には転生っていう考え方があるんですよ。こっちで死んだら次は何処で生まれてしまうんでしょうね。次はもう少し……長く生きたい」
(監督生が何処かから貰って来た呪いの類を見て「それ僕がかけたんですよ」と嘘を吐いたジェイド・リーチは多分めちゃめちゃ焦って解呪に奔走する)
やり取りが物騒なだけで、これただの「好きな子にちょっかい出して反応を楽しみたい男の子」と「そのちょっかいに本気でうんざりしている女の子」っていう、小学二年生くらいで見られるような幼すぎる構図になっているのちょっと笑ってしまうな。