思うところあってシンデレラⅢをチラ見してきたけれど

 あそこまで暴走してしまうとトレメイン夫人ちょっとなぁ……小者になっちゃうんだよな。いや己が益のためなら何だってするという女の執念みたいなのが感じられるのはまあ、それはそれで最高に面白いんですけれども、ただ私は彼女の魅力をそこに見ていた訳ではないから……。
 一番初めのシンデレラでね、舞踏会の夜にね、お姉さん二人がシンデレラのドレス(ネズミや小鳥たちが一生懸命作ってくれた唯一無二のドレスですよ)を手酷く破いていくのをただ静かに見ていて、もう修繕できないレベルにまでボロボロになってから「二人ともおやめなさい」って楽しそうにたしなめる姿とかさ。自分は一切手を出さずに徹底的に痛めつける有様ね、ほら悪魔ほらぁ。あと舞踏会の翌日に王子様が一緒に踊った女性を探しているってお触れが出たとか聞いた時にシンデレラめちゃめちゃ浮かれちゃうんだけど(そりゃそうだ、信じていれば夢が叶うと歌い続けて、その夢がすぐそこまで来ているんだ、そりゃあ嬉しくなるって、浮かれるって)、そのルンルンな後ろ姿をじーっと見て「なんかおかしいぞ」みたいに目をすっと細めるあの不気味な姿とかさ。しかもこの時のトレメイン夫人の顔、逆光なの! 暗いんだよ! 目だけ光ってるんだわそんなん怖いに決まってますやん幼稚園時代のトラウマ! 怖い! そんで極めつけに、ルンルン気分で髪を梳いているシンデレラの屋根裏部屋の扉に鍵をかけて、彼女が出られないように「外側から閉じ込める」とかいうこの! この悪行よ! これ、これなんだよこういうやつ、こういう、あまり激情が出ていない部分でのトレメイン夫人の悪魔めいたところが大好きなんだなあ。
 だからシンデレラⅢで強調された「女の執念」の方をトレメイン夫人の形容詞にしてしまいたくはないんだ。私は彼女のことを悪魔だと思っているから。鬼、はトレメイン夫人ではなく……むしろ白雪姫の女王だと思っているから。そうなんだよ「急遽、鬼になる」ヴィランズは夫人ではなくあの女王の方なのであってだな……(あくまで個人の思想です)

 ただこのシンデレラⅢ、かっこよくシンデレラを助けに行く超アクロバティックな王子(プリンス・チャーミング)の姿を見ることができるのでやっぱり好きなんだよなあ。馬から船へ飛び乗るシーン大好きなんだなあ。あんな形で助けに来ていただいたらそりゃ惚れるだろうがよぉ!
 あともうちょい語るとだな、記憶がなくなっても「その人が本当にかつて自分が愛した人であるかどうかというのは、その人の目を見て、手に触れれば分かる」という不思議な愛のルールね、あれ大好きなんだよね。姿までそっくりに化けたアナスタシアの手を取った瞬間のさ、プリンス・チャーミングの愕然とした表情がさ、最高に好きなんだよ。魂が「君じゃない」って言ってるんだよ。もうさ、震えるよね。

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