5章ヴィル様の「おかしさ」はブロットの蓄積によるものだとするならまだ納得がいく

 ブロットって魔法の使い過ぎやストレスや疲労により蓄積するものだけれど、ブロットが「ある」ということ自体が魔法士にとっては多大な負荷・ストレスになっているっていう情報もあって……もうブロット作ってしまえば最後、見事なまでの悪循環にハマってしまうしかない、みたいな構造にしかなっていないんですよねあの世界の魔法って。駄目じゃん。

 ストレスや魔法の使い過ぎによりブロットが蓄積し、その蓄積を無視してストレスをため込み続ける、あるいは魔法を使い続けることによって更にブロットが溜まっていく。2章くらいであったこの説明が正しいなら序盤からブロットポタポタ落としていたジャミルやヴィル様は登場段階からかなり「おかしかった」ということになるんですよね。正気じゃなかったんだ。なら致し方ないよね。ブロットを薬物とかお酒とか注射とかに置き換えればよく分かるよ。そりゃあそんなことされたら正気じゃいられない。彼等の「捻れ」は至極真っ当なものだったと言えるでしょう。
 深謀遠慮がモットーであるはずのスカラビアで、よりにもよって一番熟慮しなきゃならんはずのジャミルがあんな短慮行動を起こしたのも、奮励の精神に基づく寮であるはずのヴィル様が何故か「美」を周りに強要しすぎているのも、まあブロットに毒されていたのなら仕方ないか、と思えてしまう。ウツロイドに寄生されたミーネさんみたいなものですものね。
 ヴィル様ってとてもいいことを、立派なことを沢山言っているんですよ。男らしさとか女らしさとかへの意識を語るところとかは本当にめっちゃかっこよかったと思います。そのかっこよさはパソストと同じだった。ご健在で何よりという感じでした。でもエペルを始めとする1年生への当たりが強すぎるせいで、その立派なこと、よいことが「パワハラの隠れ蓑」として使われているような印象を受けて、……正直、見ていてあまり気分のいいものではなかったんですよね。
 そして怖いなあと感じるのが、すぐ傍にいるルークの姿勢がどうであるのかが未だにはっきりと見えてこないこと。同じようなパワハラを見せた1章のリドルに対するトレイやケイトの姿勢が「リドルの態度がいけないことだとは分かっているが止められない」という、お手本みたいに分かりやすい構図だったのに対して、このルークはとても、とても分かりにくい……読めない! 基本的にヴィル様の美と、その美を保つための奮励を肯定し続けている彼だけれど、エーデュースをオーディションに合格させるなどの口添えを自らの判断で行うなど、完全なる従順性をもって副寮長をやっているという訳ではなさそうなんですよね。彼には彼の矜持があり、その矜持はヴィル様にさえ操作し得ない確固たるものである。エペルはねじ伏せられてしまったけれどルークはそうはならないはず。そんな彼がどう動いてくださるのか期待で目が離せま……いや嘘です正直めっちゃ怖いです。どうなってしまうんだ5章。

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