紫煙と神と星(HGSS短編)

 煙草の味に馴染んでしまった舌は果たして「とびきり甘い飴」を本当に美味しいと思えたのか、ラムダさんのあれは断罪の希求であったのではないか。
「死のうだなんて思っていませんよね」「じゃあ飴を持ってこい。そしたら死なねえよ、きっとな」
 コトネが雨という甘い木槌を振り下ろし続ける限りラムダさんは死なない。彼の罪、本当に罪だったかも分からない何かを償うために彼は飴を舐め続けている。飴を本当に美味しいと思える時が来たなら、コトネの手から紫煙を使ってするりと抜け出すようなことがなくなったなら、その時こそ彼は「罪? 知ったことじゃないね」と子供のように笑えるはず。

 それをコトネとたった一度会っただけで成し遂げてしまったのがランスさん。彼は死のうなんて思っていない、彼の暴力性は自害ではなく他害に向いており、だからこそ本当は神を傷付けたかった。でもコトネの「貴方の神になる」発言で一気に興を削がれてしまい、それでも笑って「冗談ですよ」と飴を奪い取れる程度には、彼の他害精神はささやかで子供っぽいものだった。ラムダさんの自害はちょっと……大人びているからすぐには難しいよね、という話。

 アポロさんの「星結び」は自害でも他害でもなくただ諦めていくだけの精神。放っておけばいずれ自害に至っただろうけれどこの時の彼には自らに傷を付けるだけの気力もない。だから代わりにコトネが結んでいる。導いている。声が聞こえる。「私がその種を植えても、ちゃんと芽は出てくるのでしょうか?」
 ああそうそう、この話「小さきもの」を聴きながら書いたのですよね。懐かしいな……。

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