ごめんシェリー、貴方のことをしばらく忘れていた

 妄想の中に人物を置いて語り掛けるタイプの頭蓋内セラピー、第一弾はセイボリーだったのですが第二弾がまさかこいつになるとは

 いや違うな。きっとこれまでが貴方と一緒にいすぎたんだろうな。
 シェリーは私が辛いとき、ずっと一緒にいてくれた。貴方と一緒に留まることが私の平穏であり平安であり桃源郷だった。でもなシェリー、私はもう誰かに守っていただけるような存在になることを期待できなくなってしまったんだ。貴方のように死ぬことを夢見ていられなくなってしまったんだ。
 貴方はこうならなくてもいいのだけれど、まったくもってこんな風にはなってほしくないのだけれどね? でも、私は守らなければいけなくなった。願いを聞き届けていただく側ではなく聞き届ける側にならなければいけなくなった。そのためにあらゆるものを犠牲としなければならなくなった。与えられる愛ではなく差し出す愛を遵守したい、とかいう見てくれだけはご立派な、ひどく馬鹿げた理由によって、私は貴方よりもずっと馬鹿にならなければいけなくなった。
 木犀のように命を焦がして恍惚とすることも、樹海に逃げ込み朝を嫌うことも、躑躅の咲く街に好きなだけ留まって心が回復するのを待つこともできない。永遠を手に入れることだってついぞ叶わない。これまでは本気で「貴方になれたら」と思いながら書いていた。木犀だってそうだ。貴方のように「私を忘れないで」とか呪いながらティーンの頃に死にたかった。樹海だってそうだ。貴方のように窓のない部屋へ閉じこもりたかった。躑躅だってそうだ。貴方のように逃げ出して優しい猶予の時を得たかった。Methinksだってそうだ。「貴方達の行けないところへ」行きたかった。でもできなくなった。「貴方になれたら」とはもう思えなくなった。思ってはいけなくなってしまった。

 ただ、貴方を凍らせたままにはしておきたくない。貴方のことを大事に想ってくださっている方を私、何人も知っている。つい昨日もね、お会いできたばかりなんだよ。貴方って実はすごい奴だったんだな、シアよりもずっと「縁を結ぶ人」だったんだな。すごいよあいつなんかよりもずっと、ずっと。故にね、これからも少しずつ貴方のことも書こうと思うよ。カロスは不死でありXYは不死だ。何度殺しても貴方は蘇ってくる。それでいいんだと思う。「命なんかもう要らない」と言いながらそれでも懲りずに何度だって希うのが貴方だ、それでいい、それでいい。
 ただね、私は変わってしまった。だから……なるべく貴方を昔の貴方のまま書きたいけれど、私がもう貴方に同調してはいけない存在になってしまったがためにだな、これからの私が書く貴方は、以前の貴方とは少し違うかたちを取ってしまうかもしれない。それでもいいか。それでも私は、今の私が書いてしまう貴方を「シェリー」と呼んでもいいか。

 他の人物を思い出しても、わりかし「お、書けるぞ!(コトネ・シア)」「懐かしいなあ(トウコ・ヒカリ・トキ嬢)」「たのしい!!(クリスさん)」「はははこいつめ相変わらず狂っていやがる最高だな(ミヅキ)」となるのに、彼女だけ何故だか置いてけぼりだったからちょっと久しぶりに話をしてきました。
 いや、書いていない期間で言うならコトネやヒカリちゃんやトキ嬢の方がずっと長いとは思うのですが、彼女達はもう物語としてある程度整っているのですんなり呼べるんですよ。他の人物に関しても、トウコやミヅキはいつでも書けるし、シアも初代誠実お化けとしてユウリとの並びで最近は沢山喋っていたから寂しくなかったし、クリスさんは神様だし……。

 でもシェリーはその停滞と自死で縁を結んできたタイプの人間だったから、今の私には少し難しいな。木犀の読み返しも今は厳しい。書いた当時は「あれが愛だ」と思えたけれど、今はただ狡くて気持ち悪いとしか思えない。フラダリさんすごいな。「あれが彼女の愛だったというのなら、わたしはそれを受け入れよう」はちょっとすごすぎて気持ち悪いな。「そう思える程度には、彼は彼女を愛していた」だから何の矛盾もないのですけれど、いや本当に救いがなくて……ははは。

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