Nはトウコに嘘をつかない。トウコはNを疑わない。Nはトウコを慕っている。トウコはNを愛している。
互いよりも優先すべきものなどあるはずもないし、ともすれば自分自身よりも互いを優先することの方が、彼等の場合は多かったに違いない。
物理的、生命的には絶対にひとつになることの叶わない二人でありながら、彼等はしょっちゅう、二人でひとつの形を取ろうとした。
例えばそれは勇気という種類の感情が為す共鳴であったり、発した言葉の一言一句違わぬ同調であったり、息の合いすぎたダブルバトルでの見事な勝利であったり、
……またもう少し大人になってからは、物理的にかつ心理的に体を重ねてみることさえして彼等はひとつを望んだはずだ。
きっとこの二人はずっとずっと、二人でひとつの形を取ろうとしてきたのだろうから、あまりにも無垢で懸命で一途にそう願い続けてきたのだろうから、
ならば最後のさいごにささやかな罪を犯したとして、その命の行く先さえひとつに揃えようと画策したとして、その絶好の機会を逃さず「連れ立った」のだとして、
……一体誰が、そのひとつを責められようか。