「この引き金を引いたら、貴方はどうなるんです」(DBHパロ)

「虚無の中に沈むんですか? 暗闇に飲まれるんですか? それとも、天国に行くんですか?」
「天国。天国があれば……いや、違う、それはない。アンドロイドの天国なんて疑わしい」
「疑わしい? 存在を疑うんですか? 貴方、変異しかけているのでは?」
「違う、今のは合理的な回答だよ、ビート。アンドロイドの天国なんて疑わしい。我々は道具だ。悲しまれるための存在ではないんだよ。
喪った存在を人間が悼み弔うための場所が天国なのだろう? 我々には必要ない。私が破壊されたとしても、私はきっと、そこにはいない」
「……ではもし、僕が貴方の喪失を悲しんだら、貴方が喪われても、貴方が何処かにいると信じたいと願ったなら、……そうしたら、天国への疑いは晴れるのですか?」
「なんだいそれは。君が私に、私のために、アンドロイドの天国を造ってくれるとでも?」
「ええデザインしますよ。よく晴れた、庭園のような場所がいい。緩やかに四季が巡る場所、疑念も意地も捨て去れるような場所にしましょう。
そこで貴方が穏やかに過ごしてくれるなら、そう信じられるなら、貴方を喪った際に訪れるであろう痛みも幾ばくかは紛れるはずだ」
「……」
「貴方は魚と植物が好きだと言っていましたね。池を作って、傍には木を植えましょう。花壇には鮮やかなものを選んで植えましょう。他にご希望は?」
「そう、そんな……そんなことで、君は」

眉間に突き付けていた銃を下ろした。
長すぎる沈黙の後で、ソーシャルモジュールの故障を疑いたくなるようなぎこちない笑みを湛え、彼女は言った。

「もしそこに赤い薔薇があるのなら、すぐに抜いてほしい」

赤薔薇と吹雪は重罪

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