Yと狛枝で空虚と絶望

「貴方を呪ってしまえたらいいのにって思うよ。貴方が悲しむことを何でもしたい。貴方が嫌がることを何でも知りたい。貴方を傷付ける言葉を何でも覚えたい。
そうして貴方は私のことをどんどん嫌いになっていく。私は貴方に嫌われて、否定されて、軽蔑されて、そうしてようやく安心できるの」
「最初から筋書きが決まっているなんて、そんなものが人生なら虚しいだけでしょう? 不確実性は書き表せるようなものじゃないの。だからこそ楽しいんだよ。
だからきっと意味なんてない方がいいの。ただそこにあるだけで見出せる価値なんて、恐ろしくて、人間じゃないみたいで、気持ち悪くて、怖い」
「貴方と出会うことは筋書き通りなのかな。貴方が私の本を拾ってくれたのは、私がそう望んでしまったからなのかな。
私はもっと違う形で貴方に出会いたかった。本を読むように貴方との出会いを飾りたくなんてなかった。これが、絶望的な出会いってことなのかな」

「キミにとっての絶望って、運命に屈してしまうことなの?」
「運命性は、嫌いじゃないよ。でもその運命はもっと大きな、神様みたいな存在が操るべきで、私のような空虚な人間が覗いちゃいけないんだと思う」
「キミは空虚なの? 夢を見ることは空虚なの? キミやキミの行為がそこまで無益なことだとはボクには思えないけれど」
「そうだね、私は空虚だよ。でも私の夢は空虚じゃなかった。夢が私の手を離れてもっとおぞましいものに化けてしまうのなら……やっぱりこうなるしかなかったんだよ」

希望をもって愛を語ることも、絶望をもって心を穿つことも容易いのに、それをひどく難解で複雑で重々しいもののように取り扱ってしまうところに彼等の業の深さがある。

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