私は黒いカーディガンを買いに行ったはずなのです。1500円くらいの、1回着られるものがあればそれで十分だったのです。
色付きのカーディガンは既に薄いオレンジ・薄いグリーン・紺色(美女と野獣コラボ)と3着持っているから、普段使いにするつもりはなかったのです。
そして近くのスーパーにあったのです。割引に割引をされた1000円の黒いカーディガンがあったのです。それだけ買えばよかったはずなのです。
ああ、なのに、なのに、私は買ってしまいました。半額に割り引かれた定価6000円のカーディガンを手に取ってしまいました。
でも、でも、あれが悪い。あのカーディガンが悪いのです。あれが、あんな色をしているから。あのような、私に都合の良すぎる色をしているから。
私の大好きな空と海を絶妙なバランスで配合した、それはそれは美しい青をしていらっしゃったものだから。
あれが私を誘惑したのです。私はあれの罠にまんまと嵌められてしまったのです。あれが私の財布から余分に3000円を奪っていったのです。
ええ、あの服はあんまりです。あんまりだ、我慢ならない。生かしておけない。
……以上、太宰先生の「駆込み訴え」を意識した告白でした。
いや正直やっちまった感はあるけれど私はたいへん満足しています。でもこのたいへん満足する買い物を「こんなとき」にやってしまったことに私の罪深さがある。
この罪を私は誰にも懺悔できないでしょう。あまりにも卑しい、恥ずかしい行為です。こんなときに、……こんなときに。
ですから此処を使わせていただきました。お許しください。