+ 君だけ来てくれなかったからどうしようかと
呆気ない程に弱いラスボスを撃破し、いい感じのフルボイス声掛けを堪能してからエンディングと相成りました。お疲れ様でした!
さて……やっぱり予想通りでした。この展開と心理描写では泣くにも響くにもちょっと足りない。でもこれはもう、物語全体を振り返った上で「誰のせいでもない」というところに結論付けるしかないのだろうな、と思います。
で、この応援フルボイスの中にイライザだけいなかったので「なんでや!」と思っていたのですが、エクストラメイキングで「リグバースの迷宮」を開放したところで、彼女からも「世界を守ってくれてありがとう」という旨のお言葉を頂戴できます。ありがとうイライザ。ただいまイライザ!
『世にルーンの乱れる時、アースマイト来たれり。竜と大地と人を結び、ついにルーンの調律者となれり』
「あの言い伝えは本当だった。今の君になら、安心して全てを委ねられる」
さて、シアレンスの迷宮に次ぐ「リグバースの迷宮」とは如何程のものか……。ここからはペースを落として、もうちょいのんびり進めていこうかなと思います。
+ メインストーリーについて(親愛イベントは一旦置く)
中盤からなんとなく察してはいましたが、やはり最後まで、うまく感動できなかった、というのが正直なところです。
最序盤でナユがこの街にやって来たとき、ナユの記憶がないことに驚き狼狽する住民たちを前に「(迷惑になる前に、ここを出よう)」って彼女、心の中で呟いたんですよね。この時点で「あれっ、なんか遠慮がちというか、距離を作りがちな子なのかな」と思っていたのですが、もう本当に、最後の最後までこの「距離」が埋まらないまま終わってしまったな、という感じでした。
クライマックスと思しき声掛けシーンで、プリシラやルーシーが「貴方がそんなに苦しんでいるなんて知らなかった」「どうして話してくれなかったの、水臭いじゃん」と口にしていて、そうだった彼女たちにさえナユは何にも話さないまま此処まで来てしまったんだな、とはっとさせられました。ナユの苦労や苦悩が誰にも明かされないまま、ほぼ心を秘匿した状態で突き進んだ物語だったのですよね。
各人の親愛イベントを抜きにすれば、メインストーリーでは本当に淡々と、Seedの人間として「この街を守る」ために働き続けてきた主人公。同僚として、上司として、一つ屋根の下に暮らす存在はいたけれど、友達と呼べる相手は果たしてメインストーリー中の彼女に……いたのかさえ怪しい。そんな彼女が終盤、ラスボスみたいな敵に乗っ取られるのですが、最後の最後で「戻ってきて」「貴方のことが大切だ」「必ず帰ってくると信じている」と矢継ぎ早に住民たちが声を掛けています(ここがフルボイスなのでおそらくクライマックスは此処)。その声によって彼女は心を取り戻し、古代竜の二人も無事で、悪は滅びて大団円……というまあ感動の展開を作っているのですが、私はこのシーンにちょっと不安を覚えました。メインストーリーだけ見たとき、彼女の中に「この街へ戻りたいと思える心」が育っていたようには、あまり、思えなかったからです。
ナユは一体、この街の誰に心を許していたんでしょうね?
プレイヤーである私たちはそれぞれ好きなキャラクターが勿論いて、私はルーカスさんに沢山助けられたと思っている、思っているけれどそれは私の想いであってナユの想いではありません。だからプレイヤーの選択で発生する親愛イベントを抜いた状態での、メインストーリー内に、そうした心を許せる誰かが組み込まれていないとおかしなことになるんです。なるんですが、はて……誰だったんでしょう?
前作ではれっきとした竜の友人がいたのですが、今作においては心を許した相手がリヴィア署長やレディアであるようには……とてもじゃないけれど思えない。それならばおそらく、メインストーリーで一番綺麗な和解の仕方をして、絆らしきものが芽生えたように見えるスカーレットさんか。あるいは序盤で街の案内や住民紹介などしてくれて、ナユがこの街に馴染めるよう気を配ってくれたプリシラとルーシーか。あるいは中盤で一時的にお世話になり、温かく迎え入れ、また送り出してくれたテリーさんか。あるいは後半から終盤にかけて、幾度となくナユに道を作ってくれたルーカスさんか。もしくは一番始めに助けたひなちゃんとそのお母さんか。それとも、誰にも心を許せないまま、ただ「助けてもらったご恩に報いるため」に、粛々と働き続けていたに過ぎなかったのか。
ただ、住民の皆さんに冷たさとか排他性のようなものは全くないように思います。再序盤で身寄りのないナユを、その場にいた全員が自身の家に迎え入れようとしていたし、その後も子供たちは無条件にナユのことを慕ってくれたし、Seedを抜けた折にはほぼ全員に温かい言葉をかけてもらったし、最初尖っていたスカーレットさんとは……私個人としては「分かり合えた」と思っていたいし、他にも皆さんには色々としていただきました。
(此処に書いたものはメインストーリーのものだけで、親愛イベントを含めるともっともっとあります。それらを見てきた私が断言できる点として、彼らが「冷たい」ということはまあ有り得ない、と書かせていただく)
古代竜二人の未熟さが招いた軋轢を除けば、此処は本当に温かい街、温かい世界。私が愛したセルフィア、ルーンファクトリー4の物語の再来。うれしい、嬉しい。私も皆さんのことが大好きだって言いたい。
なのに、それらに対するナユ(主人公)の感情の発露がほとんどない。
ナユは……安心したり焦ったり困ったり泣いたりと表情豊かではありますが、ただそれらはSeedの任務中の展開に対する感情であり、人の想いに対して向けられたものでは、ありませんでした。その姿勢が私には「皆さんのご厚意に報いられるようSeedとして尽くします」という忠義精神、といいますか……どこか事務的であるように感じられたんですよね。
そんな彼女に終盤、みんなから掛けられた「戻ってきて」「貴方のことが大切だ」「必ず帰ってくると信じている」という言葉たち。それに応える形で心を取り戻した、いっそ奇跡めいたその流れ。ナユが心を開けていなかった(かもしれない)状態でも起きた、不自然な奇跡。そこに見ることができる意味があるとするなら……もしかしたら「猶予」であるのかもしれません。
プリシラやルーシーの言うように、ナユはもっと序盤からみんなを頼っていってもよかったのでしょうね。Seedだから、リヴィア署長の命令だから、という理由で何もかも一人で抱え込まなくともよかった。
貴方が一人で英雄にならずともよかった。
でも、なってしまった。
だからこれからのリグバースでは、Seedとして、署長の手足として粛々と働き続けてきた彼女が、もっと自由になって、今より少しでも、誰かに心を開くことを覚えられるようになればいいのかな、と思います。そのために彼女は戻ってきたのだと、この街でもう一度やり直すために与えられた「奇跡という猶予」だったのだと、解釈してみることにします。
そしてこの猶予はそのまま「これからを遊ぶ意味」にもなります。色々と書きましたが、ルーンファクトリー5、楽しめるところまで楽しみ尽くしてみようかな、という気持ちです。ナユはまだどうか分かりませんが、私は変わらず、平和な心地でカブを育てられるこの世界が大好きですから。
ずっと待っていたルーンファクトリーの新しい世界、堪能させていただきました。ありがとうございました。
(追記)クリア後の皆さんが掛けてくださる言葉がやっぱり何処までも温かく、更にはその言葉を受けてのナユの返事や笑顔も本当にやわらかいものであったため、ようやく、ちゃんと心の交流をしている気分になれました。彼女が街の人々を頼れるようになる日も、そう遠くないでしょう。