元気を出すための最終兵器「夢水清志郎」を取り出してしまった

 どうして私は赤い夢の住人じゃないんだろうと、思うことが最近とてもよくあって困ってしまうな。
 漫画版のからくり館、犯人が「貴方が帰ろうとしている現実とやらは貴方が『現実だと信じていたい世界』に過ぎないのだ」という風なことを言うシーンが……やっぱり忘れられない。

 現実、と唱えたときに真っ先に現れ出てくる誰か、教授にとっての「誰か」が小説だとぼかされているのに漫画版だとそれはそれは綺麗な笑顔をページいっぱいに散らせて、示してくるものだからさ。「夢水清志郎の現実とはこの子の形をしているのだ」というのをこれでもかってくらいに、お描きになられているからさ。
 駄目だ、何度読み返しても胸が潰れていく。赤い夢の住人になりたい。いや待て、そんなものになってどうする。赤い夢にいないからこそ教授はあの子に「戻るべき現実」を見たというのに。

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