フラダリさんという絶対的な味方がいるにもかかわらず「シアがいない」と泣き叫ぶシェリーに嫉妬めいた遣る瀬無さを抱いてしまったから「君のせいだ」と責めるような口調になったのかというと、一切そんなことはない、いうのがポイントですかね。
彼が「君のせいだ」と責めているのは事実ですが、それは彼女が400年後にこのようなことを口にしているからです。彼はシェリーの両親や、プラターヌ博士や、その教え子たちや手持ちのポケモンたち……とにかく沢山の人を看取ってきました。彼は正しく生きようとして、成功した側の人間です。次々に襲い来る別離は彼を苦しめたかもしれませんが、少なくとも「後悔」の念に苛まれることはなかったでしょう。
シェリーが海で叫んでいる、シアへの懇願、恨み辛み、というのは、彼女がその「正しく生きる」努力をしなかったから生まれたものであるとフラダリさんは分かっています。地下に隠れて眠り続け、眠っているだけで知り合いの多くが寿命を迎えて死んでいく現状を楽しみさえして「私は、貴方たちの行けないところへ行くのよ」と豪語した。それは彼女の防衛反応でしたが、同時にこれ以上ない不実でもありました。別れの苦しみを先送りにし続けた彼女が、もう清算できない後悔に苦しみ続けることになったとして、二度と会えない親友を想って泣き続けることになったとして、そんなものはシェリーの自業自得。当然の帰結です。
でもシェリーが「私が失うことを恐れずに済む、唯一の人」としているように、もう会えないという事実に此処まで取り乱す相手はシアだけです。そのことにフラダリさんは安心してもいます。だって彼、約束しちゃいましたからね。「貴方はわたしと彼女の中で生き続ける。彼女は我々の中で永遠になる」と、死の床にあるシアの前で宣言しちゃいましたからね。
彼は守らなければならなかった。だからキツい言葉で刻み込んだんです。「君のせいだ」は「シアを忘れてくれるな」と同義であり、フラダリさんはこんな時でさえ痛々しい程に誠実です。間違ってもタイトルのように「わたしがいる」などと言う訳にはいかなかった。傷を癒してはいけなかったからです。忘れてしまってはいけなかったからです。
木犀では「私を忘れないで」という呪いを発動させたのは死にゆくシェリー本人ですが、Methinksでは「彼女の存在は永遠になる。我々の中で永遠になる」と、看取る側のフラダリさんがシアの祈りを呪いへと展開させることで初めて「忘れてくれるな」が成り立っています。本来この呪いは命の散り際とか、それくらいの後がないところでの覚悟がなければ出て来ないものだと思うのですが、その「散り際」をこの世界線のフラダリさんは幾度となく見ているので……呪いを使いこなす側にもなれてしまうんじゃないかな、と思っています。
はー! 久しぶりのMethinks楽しかった!