なんで出先でこんなことを考えたのか(セイボリーとユウリ)

(ストーリー終盤のしんどさに耐えかねてこうなるやもしれんなぁと思った、それだけ)

「君と、話したところで……」

 消え入るような声、地獄から1000年かけて届いた貝の死骸のよう。耳を当てても血を沸かす釜の音しか聞こえやしない。一体何があったんだ。何が、何が、誰が。

「誰です」
「……」
「誰があなたをこんな風にしたんだと聞いているんですよ、ユウリ」

「君に、話したところで……」

 ああ力不足だって? そんなことはよく知っている。あなたに言われずともワタクシが一番よく分かっている。あなたに勝てない相手だ、ワタクシにどうにかできるはずもない。それでも手を伸ばしたいと願うこちらの愚行、それを責めるだけの元気がまだこの細い体にあったことに気付かされ、彼はようやく息を吐く。喉から突き上がるようにして出てきた空気の塊は震えていた。構うものか、構うものか。

「ねえセイボリー、楽しかったね、此処での時間」 

 もう戻れないけれど、などとは言わせない。取り戻してやろう、あなたのためなら。地獄の蓋を開けてやろう、あなたのためなら。人の救い方は知っている。あなたがかつてワタクシにしたことだ。これは単なるミラーコートに過ぎない。エスパー技は十八番だ、上手くやれる。ワタクシならできる。

「ね、話してごらんなさいな」
「……」
「いつまで意地を張っているんです? ワタクシに引き止められて本当は嬉しいくせに」

 ほら、こんな傲慢を笑って許してくださるのがあなたでしょう。許容と肯定はあなたの十八番。さあほら許せ、許してみせろ。ワタクシのことを、あなたのことを。あなたが生きるために必要な、すべての、惨たらしく醜悪で卑劣なことを。

 これからどうなるって訳でもないただの小ネタです。SSにも置かないレベルの短さだったので此処に置いていきます。あしからず。
 ガラルのストーリーはカロスほど惨たらしくないし、普通にユウリなら耐えられるはずなのですがきっとチャンピオン就任時とかになんかあったんやろう。何かがな!(なんも考えてないなんてそんなまさか)

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