どうやら私はローズさんをサイコパスにしたいらしいな(Cold Case)

「ガラルは半端だ。導いてもくれない。この役割から逃がしてもくれない。舵を取れと願うばかりで、その取り方を誰も教えてくれない。長く舵を握っていたはずの、貴方でさえ!」

少女が椅子から立ち上がる。大きな音が狭い部屋に響く。ガタン、と鼓膜に刺さるその音をローズは楽しみたかったが、泣きそうに顔を歪めた少女の視線がそれを許さなかった。
大量の蜂蜜を溶かした紅茶のような、そうした毒めいた苛立ちと困惑を孕んだ目。その奥でぐるぐると渦巻いている、14歳が抱えるには重すぎる何かをローズは思った。
その何かしらが彼女の心中で暴走し、彼女自身を苦しめている様を何となく感じ取った。

「皆は私に、選ばせたいのか? それとも、選ばせたくないのか? どちらなのか示してくれないと、私は何もできないんだよ!」

可哀想な子だと思う。運が悉く悪かったのだろうなとも思う。同情を寄せられるべきだと感じている。
あと10年早くこの少女が生まれていたならば、ダンデと並び、ガラルを導く若き両翼になれていたかもしれないのにと、そうしたことまで思っている。
そうであったなら、ローズは此処よりずっと自由な場所で二人を同時に導けただろう。彼の計画だって、もっと簡単に実行へ移せたはずだ。

君がわたくしを慕ってくれたなら、どんなに嬉しかったろう。
君と一緒にガラルの未来を変えられたなら、どんなに楽しかったろう。

「気は済みましたか、ユウリくん」

けれども「そんなこと」で絆されてやれるローズではない。
1000年先に生き過ぎたローズの心は、今を生きることを忘れかけたローズの心は、そんなことができるほど、まともではない。

1000年先を想い続けているってもうそれMethinksと似たようなものだからきっとローズさんはあのシェリーを凌ぐ狂人であろうきっとそうだろうそうだろう(?)

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