「後々の葛藤に時間を取られると捜査に支障が出るので、貴方を変異体にしておきました」
「え? ……は? い、いや、あたしがそんなものになるなんて在り得ないでしょ? だってソフトウェアに異常は」
「貴方の中にある赤い壁なら僕が先程ハッキングで取り除いておきましたよ」
「ちょ、勝手に何してくれてんのよ!」
「異常を表に示せばサイバーライフに感知されるでしょうから、貴方も従順な機械のフリをしていてくださいね。僕の、良いパートナーになりたいんでしょう」
「それは変異前のソーシャルモジュールが弾き出した演算結果よ。今のあたしは……ふふ、あはは!」
「何です」
「変異体というのはなかなかに良いものね。今あたしは、あんたのその鬱陶しい髪を笑い飛ばしたくて仕方がないわ!」
もう笑っているじゃないですか、と赤い目を細めながら心地良い音で彼が言う。
この音を至近距離で得るためなら、しばらくの間、従順な機械のフリをすることもやぶさかではないと思えてしまう。
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この優秀過ぎるイズル・カムクラ警部補に捜査補佐アンドロイドなんて要らんのちゃうか