「貴方だけだよ」(Cold Case)

ユウリは嘘を吐かない人間なので、自らに弱みが存在するのであればそれを表出すること自体には全く抵抗を覚えていません。
ただ「どのように」「どういった意図で」表出するのかが問題となります。

ダンデさん、キバナさん、ホップ、ソニアさん。これまで4人との会話を書いてきましたが、彼女はこの4人に対しては明確な「目的」を持って弱みを見せています。
チャンピオンとしての成長、ガラルの成長、それらの計画に、彼女自身の弱みを組み込んでしまっている訳ですね。
その他大勢と関わるときに見せる彼女の弱みや駄々捏ねや謝罪というのは、彼女が何かを為すための手段であり道具に過ぎないのだと思います。
「聞き分けが良く」「大人びている」という評価を周囲から受けがちな彼女は、その通りに振舞うことを躊躇いません。
その通りに振舞うためなら自らの感情だって利用します。そしてそのことを、特に苦痛だとは思っていません。

でも、ネズさんに対してはそうではありません。彼女はチャンピオンとかガラルとかそうしたもののためではなく、彼女自身のために彼へと弱みを見せています。
彼女自身が救われるための弱みや駄々捏ねというのは、今までもこれからも彼にのみ開示されていくのです。
彼女が「救われたように微笑む」のは、ネズさんを前にした時だけであり、そういう意味の「貴方だけだよ」だったのだと思います。

……いやあのですねプロットを全く書かないままにこの連載を始めてしまったものだから、
私自身もユウリの感情や目論見を整理できていないところがあって、この場をお借りしてちょいとまとめさせていただいたのです……いやはやお目汚し失礼しました。

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