さっきからミヅキが私の頭の中で暴れているんだ

「橋を渡れることがそんなに偉いのか! 橋なんて! 橋なんて! ミヅキは3歳の頃から一人で渡れた! ミヅキは一人で渡らなきゃいけなかったんだ!」
「お前は笑うと可愛いよ。とても可愛い。だからそれでいいじゃないか。何もできないままのお前でいればいい。そうやっていつまでもニコニコ笑っていればいいんだ」
「ほら、泣けばいい。そうすれば皆がお前をもっと好きになるんだから。ククイ博士もハウもグラジオも、皆、お前が! お前のことが大好きなんだから!」
「ミヅキが望んでお前の傍にいたことなんかただの一度もなかったんだ。お前はそんなことも分からなかったんだろう?」
「お前の物語にミヅキは要らないよ。お前なんかにみすみすミヅキを譲り渡すつもりはない。ミヅキを、盗ってくれるな」

「ねえ、こんなに言ってもまだ付いてくるの? ミヅキが貴方を好きになることは絶対にないのに。私が貴方を許しても、ミヅキは貴方を絶対に許さないのに」

連日の徹夜故にUSUMのミヅキは道端やポケモンセンターでよくダウンするのですが、そんな彼女を介抱するのはいつもリーリエです。
でも「宝石に介抱されている時」にこそ、色濃くミヅキの夢を見てしまうから、その夢の余韻が冷めやらぬままにリーリエの顔を見てしまうから、
……だからきっとUSUMのミヅキはリーリエに「ありがとう」と、一度も、言えたことがないんじゃないかな。

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